交流電源 (交流安定化電源)には定電流モードがない
交流電源(交流安定化電源)はCVCFとも言われます。CVCFは「Constant Voltage Constant Frequency」の略称です。日本語にすれば「定電圧定周波数装置」となります。そういった機器は通常、(電圧/周波数)出力値が固定なのに対し、当社のような実験用交流安定化電源は出力を任意の値に変化させることができます。
さて、ときどき「CC(定電流)で制御できる交流電源はありませんか?」というお問い合わせをいただきます。前述のように(当社のカタログ製品である)交流電源の制御パラメータは「電圧」と「周波数」です。「電流」はありません。なので、「申し訳ありません、ございません。」が答えになります。(なお、特注や改造で定電流的な制御を付加した事例もあります。ご興味あれば、営業までお問合せ下さい。)しかしそれで終わってしまっては「SE課」の名が廃ります。そこで今回は、当社カタログ製品の交流安定化電源を使った試験で「電流」を管理したいというご要求に対して、提案した事例のご紹介です。
カレントトランス(CT)の試験評価のポイント
カレントトランス(以下「CT」)は、近年の環境・新エネルギー関連機器需要の高まりに合わせて増える「電力監視」というニーズ、つまり「交流電流 の検出」に必須となるデバイスです。そのCTに流れる電流はサイン波だけとは限らず、過大に流れるピーク電流の検出も同時に行う場合があります。そこでは通常のサイン波の電流値だけでなく、ピーク電流値の制御もできませんと適切な回路評価にならないかと思います。
システムの概要
CTを組み込んだ機器の回路評価を行うためのシステムとして、菊水電子 の交流安定化電源(PCR-LEシリーズ)と交流電子負荷装置(PCZシリーズ)の組み合わせをご提案します。
(1)評価するDUTの仕様
この評価システムで想定する被試験物は以下の通りです。
1) 50Hz/60Hzを標準仕様とするAC用CT
2) プリント基板に実装するタイプで、通常流れる実効電流(rms)を許容するパターンの幅になっていること
3) 通常電流を計測する機能と、異常時規定のピーク電流でアラームを発生する機能を持っていること
(2)システム構成
図1の様に交流電源(交流安定化電源)を50Hzまたは60Hzに設定し、交流電子負荷装置によりDUTに交流電流を流します。
図1 システム構成図
PCZ1000Aにはクレストファクタの設定機能があり、クレストファクタを最大の「4」にした場合、実効電流を10Aに設定すると、40Aのピーク電流を流すことができます。
このピーク電流により、DUTのピーク電流の検出、機能動作の確認を行うことができます。また、こうすることで実効電流値を変えずにピーク電流の発生ができますので、プリントパターンへのストレスといった心配もありません。
また、シーケンス作成・制御ソフトウェア(Wavy PCZ1000A)を使って、load ON/OFFや定電流(CC)の設定値をシーケンス制御すれば、最小500msでありますが、断続したピーク電流発生も可能です。
図2は、クレストファクタ「4」、そして電流を0A〜5Aで変化させたときの波形です。
立上り
立下り
図2 交流電子負荷による電流の立上り・立下り制御例
このように、お目当の試験装置(電源など)が単独で望む機能を有していない場合、他の機器を補助的に組み合わせることで実現できる場合が多々あります。試験システムの考案に際しては、そういった着想もお持ちいただくとよろしいかと思います。
なお、当社の「お客様サポートダイアル」では、そういったご相談も承っておりますので、ご利用ください。