コラム

燃料電池”小”解體新書 【前編】

最近、新聞やテレビで燃料電池のニュースが良く流れる。効率が高いとか、環境に優しいとか、その内に燃料電池自動車が普及するとか。そこで燃料電池の最近の開発状況や動作原理、利用形態などを分かり易く解説してみたい。車のエンジンや発電所のタービンには幾つかの種類があるように、燃料電池にもいくつか種類があり、色々な利用が検討されている。前編では燃料電池を取り巻く状況とその動作原理や電池構成について概説したい。
投稿日-2002年4月

 

今なぜ燃料電池か?

私達は今石油文明の真っ只中に生きている。今石油がなかったら、電気は来ないし、車は走らないし、化学繊維もできないので着るものにも困る。石油が無かったらと考えられないほど、我々の生活は安い石油に頼っている。この文明生活のお陰で現在の地球には人口が増え、その沢山の人が沢山の石油を使うので、石油が後50年も経つと枯れてしまうとか、燃やした石油が炭酸ガスとなって大気中に貯まり、地球が暖かくなっていると良く言われる。最近は景気が悪いのと省エネルギー努力で、産業用の石油消費は減り気味であるが、個人生活の豊かさを反映して、車や家庭で使う石油やガスは増えている。

また、狭い道路に排気量の大きい車が沢山走り、道路沿いの環境が悪化しているので、車の排ガス規制も年々厳しくなっている。このような状況の元に、人間生活の豊かさをそのままに、環境汚染物質の排出を抑えつつ、使う石油やガスを減らそうとする努力が世界的に模索されている。つまり、現在の車のエンジンや発電所のタービンより効率が高く、環境性に優れた動力発生装置が移動用に、また家庭などの分散型電源用に望まれている。

そのような技術の一つとして、燃料電池が高効率で環境性に優れる電源として開発されているので、良くニュースになる。現在のガソリンエンジンが燃料の持つエネルギーの15%程度しか動力に変換できないのに比べ、燃料電池自動車はそれより高い25%程度の変換効率で、NOxやSOxも殆ど出さずに発電できると期待されている。一方で、既存のエンジンやタービンの性能を更に伸ばそうとする開発も、発想を変えて鋭意進められている。エンジンなどの既存技術の生産・開発体制は良く整備されているので、新参者の燃料電池が果敢に攻めても、既存技術の対応は早く、エンジンなどの効率と環境性を向上させる研究開発も着実に進んでいる。

水の電気分解を逆にして、燃料電池で発電する

皆さんも中学生の頃に、図1のような水の電気分解の実験(1)で、電気で水を水素と酸素に分解した経験をお持ちと思う。電極を挿入した試験管を逆にして、酸やアルカリの電解水溶液中に沈め、乾電池をつなぐと、簡単に電気で水から水素と酸素を作ることができる。世の中大体のことは逆も可能で、逆に水素と酸素を図1のように電極部へ供給すると、直流の電気と水と熱が作れる。これが燃料電池の発電原理である。

水の電気分解と燃料電池発電の原理

現在世の中で実際に使われている発電方式の多くは、燃料を燃してボイラーでお湯を沸かし、タービンで動力を発生し、次にその動力で発電機を廻して電気を作っている。この二段階方式より、燃料電池は一段で電気を作ってしまうので、直接発電とも呼ばれる。

燃料電池は決して最近できたものではなく、もう150年も昔にできたもので、アポロやスペースシャトルの宇宙開発時代に宇宙船の電源として活躍し、その勢いをかって引き続き地上用電源としても開発されるようになり、現在に至っている。

図2にもう少し詳しく燃料電池の作動原理をリン酸形の場合(1)を例に示す。

水溶液中のリン酸H3PO4はH+の正イオンやPO4-3の負イオンに分かれ、電解液となっている。燃料である水素H2は燃料極でH+と電子eに分かれ、H+は電解液中を空気極まで泳いで行って、電子eを貰いながら空気中の酸素O2と反応して水を作る。この間、水素極で放出された電子eは水素を透過させる多孔質な電極中を流れ、外部回路を通って、酸素を透過させる多孔質な空気極に戻り、水を作る反応に参加する。つまり、H+が電解液中を流れると、分かれた電子eが外部回路に流れ、そこで発電と言う仕事をする。

(1)広瀬研吉「燃料電池のおはなし」、12,36,40ページ 日本規格協会(1992)

執筆者: 恩田和夫

1964年 東京工業大学卒業 / 1966年 東京工業大学大学院修士課程修了、電気試験所入所(元 産業技術総合研究所) / 1976年 スタンフォード大学客員研究員 / 1984年 同所エネルギー変換研究室長 / 1955年 豊橋技術科学大学教授 / 研究分野:燃料電池、水電解、二次電池、放電化学など

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