規格が読めることがあなたの力になる 今は何を作るにしても、国際間または各国の工業規格・規制に対応することが要求されています。 様々な家電製品はもとより、産業用ロボットやエアコン、エレベータ、電気自動車など、身近な製造物の […]

コラム

規格を読みこなす技術(基本編 1)

掲載日-2016年12月 ※記事は当時の掲載日をご確認ください。現在の製品情報や価格、技術についての最新情報ではない可能性があります。ご了承ください。

規格が読めることがあなたの力になる

今は何を作るにしても、国際間または各国の工業規格・規制に対応することが要求されています。
様々な家電製品はもとより、産業用ロボットやエアコン、エレベータ、電気自動車など、身近な製造物のほぼすべてにおいて、安全やEMCに関する規格があるといってもいいでしょう。
しかし、それらをいざ実務レベルに落とし込もうとする(規格準拠の製品を開発する、規格適合検査をおこなう等)と、戸惑ってしまう事が多いのではないでしょうか。
例えば、あなたがお客様や営業担当者から「IEC61800-3規格に対応した製品が欲しい」という要求を受けたとしましょう。その時、どんな製品を提供すればよいのか、またはそれがどういった内容の規格なのか即答できるでしょうか?

前述のように、製品の種類の数だけ工業規格・規制があり、かつ制定されてから改訂や追加が幾度もおこなわれているのが「当たり前」です。まるで、本館・別館・新館と建て増しを繰り返した旅館みたいに複雑に入り組んだ、分かりにくい構造であることがざらです。さらには、本章で引用される参照文書の理解も必要で、よくよく調べたら実は要求規格の対応だけでなく、それに紐づいた規格にも対応しなければならないというケースもあります。エンジニアとしては物を作るのが本業なのに、その前段階の規格調査や難解な定義の解釈に四苦八苦して、「作る前からすでに心が折れそう・・・」という笑えない話もないとは言えません。

こういった事案に長けた「技術規格法務担当」のような存在がいてくれて、的確なアドバイスをもらえると助かるのになぁ、と思うのですが、現実は自分でなんとかしなければなりません。
ということで、ここでは要求規格文書の探し方から、その解釈のための実践的な「コツ」や「ノウハウ」の一端を数回に分けてご紹介して参ります。これから規格文書という魔界(!?)に挑む勇者の剣になればいいなと思います(笑)。

なお、本コラムは2016年12月執筆時のもので、紹介するサイト内容などは変更される場合があることを、あらかじめご了承お願いいたします。

規格番号で「対応していますか?」と聞かれたら

聞いたことのない規格番号がきても、今はGoogle先生がいます。
例として先程の「IEC61800-3」を例に、どんな規格なのかを調べるにはどうするか?をお話したいと思います。
まずは、「規格番号 JIS」 でググってみましょう(図1)。
「IEC規格を調べたいのになんでJISなの?」という素朴な疑問はあとで説明しますので、ここはとりあえず[Google検索]をクリックです。

けっこうヒットしてきますね。とりあえず、(1)のkikakurui.comを開くと、JIS規格の原文をテキスト化したものを見ることができます。ただし、ここは公式なものではないため、最新版でないことや間違いが含まれていることがあります。ざっと目を通したら次に公式サイトをチェックする必要があります。
さて、このサイトでチェックしておくポイントは序文です(図2)。

図2_kikakurui.comより引用

これを見ると「IEC61800-3をベースに一部変更した規格」であることがわかります。また、JIS規格番号も「JIS C4421:2008」であることがわかりましたので、引き続き公式サイト(2)www.jisc.go.jpで内容をチェックしましょう。再び、Google先生に「JISC」と入れてみます(図3)。

検索結果から「JISC 日本工業標準調査会」を開くとJISの閲覧、検索ができます(図4)。なお上の検索結果ではイギリスにもJiscというサイトがありますが、本件とは全く関係のない会社です。

JISCは経済産業省が設置している審議会で、工業標準化に関する調査・審議を行っている組織です。このサイトでは発行されているすべてのJIS規格を「無料(!)」で見ることができます。
ただし、規格についている「解説書」は見ることができませんので、具体的に仕事に取り掛かる前には規格本文を購入してから始めたほうが良いでしょう。「解説書」には規格制定の経緯や、本文でわかりにくい箇所を制定委員が補足してくれた貴重な情報が満載です。
なお規格本文の購入は(図1)での(3)www.webstore.jsa.or.jpからオンラインでできます。

知りたいIEC規格をJIS規格の日本語で見てみよう

図5

では早速JIS規格を閲覧してみましょう。上記(図5)の「JIS検索」をクリックします。
ここでひとつ注意があります。ここでのPDF閲覧はオンライン表示のみで、ダウンロードしての表示ができないようになっています。また閲覧環境としては事実上「Adobe Reader(無償)」がプラグインとしてインストールされた「Internet Explorer」のみのようです。Windows10の標準ブラウザ「Edge」や「Firefox」、「Chrome」、「Safari」等では表示ができません(2016年12月時点)。なのでMacや、Chrome、FireFoxといったブラウザを愛用している方はこのサイトだけは「我慢」です。今後、対応してくれるといいんですけどね・・・。

さて、試しに、先程検索したJIS C4421:2008を調べてみます。下記のように入力して(年号は不要です)一覧表示をクリックします(図6、図7)。

・・・ありました!。さらに「規格番号」をクリックするとJIS規格詳細画面になりますので、「規格の閲覧」にあるリンクをクリックすればJISの本文が無料で閲覧可能です(図8、図9)。

とりあえずこれでIEC61800-3をベースにしたJIS規格を閲覧するところまで来ました。日本の工業規格JISですので、日本語で書かれているので理解もしやすいです。
「おいおい、私が知りたいのは「IEC61800-3」であって、JISが見たいんじゃないんだよ。JISじゃダメじゃん」という声が聞こえてきそうですが・・・。
ではここからどうやってIEC規格へ飛ぶのか。次回(基本編 2)でご説明したいと思います。

執筆者: 矢島

[専門分野] 低周波EMC規格全般 / 高調波・フリッカ計測技術 / アナログ回路設計(高精度計測) / アプリケーションソフト開発(C#、VB.net、Excel VBA) / [主な製品開発実績] 高調波/フリッカアナライザ KHAシリーズ / プレシジョンDCソース KDS6-0.2TR、標準信号発生器 KSG4310 /

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