シーケンス作成・制御ソフト「Wavyシリーズ」の具体的な使い方をご紹介する当コラム。今回は2回目として、前回に引き続き、系統連系規格試験での活用(ステップ注入機能試験)を見ていきたいと思います。なおその前に、系統連系規格試験と聞いてピンと来ない方のために、それはいったい何で、どういった背景で出来たものなのかを簡単にご説明します。同規格試験をご理解されている方は、次項は読み飛ばしていただいて結構です。
系統連系する機器の増加による高調波障害
系統連系とは、発電設備と電力系統の接続・連動を指し、近年家庭用の太陽光発電や燃料電池発電などの普及とともに、それらに関係する設備機器(パワーコンディショナー等)が急速に普及しています。それらの機器のなかに、直流を交流に変換する「インバーター」を内蔵したものがあります。その目的は太陽光発電や燃料電池によって発電した「直流」を、多くの電気製品の入力電源である「交流」に変えることですが、「インバーター」の性能や制御方法によっては、多少「お品の悪い子」もいるわけで、そういった機器が系統に接続されることで、系統の電圧波形が歪んでしまうことがあります。
近年増えているのは、そういったことを原因とした「高調波障害」と呼ぶ事象です。「高調波障害」が起きると系統につながる機器が異常を起こすことになり、異音、誤動作や停止、最悪の場合は発熱・発火といったことも起こり得ます。そういった背景から、系統に接続する機器が従うべき技術要件として「系統連系規程」が制定され、その中で試験方法も定められています。
今回のこのコラムでご紹介するのは、系統連系規格試験の1項目にある、そういった「高調波障害」を再現して電気製品の障害耐性を確認すること、つまり交流電源を使って「異常シミュレーション」をおこなう方法ということになります。
使用する機器は(図1)のようになります。
図1 システム構成図
交流電源はキクスイのPCR-LEシリーズという製品です。この製品は「リニアアンプ」という回路方式により任意の交流波形が出せます。そして出力する波形を編集するために、同じくキクスイのシーケンス作成・制御ソフト「 Wavy for PCR-LE(SD011-PCR-LE)」を用います。
任意波形作成画面の起動
Wavy for PCR-LE(SD011-PCR-LE)を起動して、「シーケンス」 メニューから 「任意波形の作成・編集」 をクリック。任意波形作成画面を開きます(図2)。
図2
では、5次が2V印加された高調波電圧を作成してみましょう。単相3線での出力 202V(101V+101V)ですので、相ごとに1Vになるように設定します。1Vですので、1%を設定してみます(図3)。
図3
設定に101Vを入力し「換算」ボタンをクリックします(図4)。
図4
次数のプルアップダウンリストを ALLから、5 に変更します(図5)。
図5
5次の実効値は、0.998Vとなりました。設定電圧により実効値は変化しますので、差異が大きい場合、レベルも変更して調整してください。 (※注意:レベルを変更後、更新処理では基本波が一定となり設定値が変化します。)
この波形データを交流電源に転送し(U相とV相の両方)実行しますと、5次に2V印加した高調波電圧が出力されます。
次に、5次+7次が2V印加された高調波電圧を作成してみましょう。
1V = √( (5次)2 + (7次)2 ) ですので、0.71%を設定してみます(図6)。
図6
次数のプルアップダウンリストを ALLから、5 に変更し実効値を確認(図7)、次に7に変更し実効値を確認(図8)します。
図7
図8
(図7)、(図8)より、 √( 0.7152 + 0.7162 ) ≒ 1.01V となります。
この波形データを交流電源に転送し(U相とV相の両方)実行しますと、5次+7次の2V印加した高調波電圧を出力することができます。