こんにちは。ソリューション開発課の宮田と申します。本コラムでは、製品設計についての経験談などをお話できればと思っております。よろしくお願いいたします。
さて、回路を組んで通電したところ、「あれ?動かない、なぜ?」というのは、まあ普通にあることです。そこで回路構成や部品の確認、見直しをするわけですが、どうもそれらしい原因が見あたらない。そんなときに疑うべきポイントはどこだ?、というのが今回のお話です。
デジタルI/O、タイマー、カウンターが怪しい
その試験システムには、デジタルI/Oが組み込まれていました。私はそれをオープンコレクタ出力で使用したのですが、実はこれが動かない原因になっていました。
その時の私は、デジタルI/Oやタイマー、カウンターといった機器の出力回路として、シンク及びソースで使用できる機器(図1)と、オープンコレクタ出力(図2)または、電流シンクとして使用をしなければいけない機器、大まかに2通りの機器があることを認識していませんでした。
つまりオープンコレクタ出力というのは、(図1)の様にエミッタ、コレクタそれぞれが出力されていて、接続できる回路のことだと思っていたのです。
というのも、過去に使用したデバイスの仕様が、シンク及びソースでも使用できる出力(図1)になっており、それをオープンコレクタ出力として使用していたことがあったからです。
図1 シンク及びソースで使用できるトランジスタ出力
図2 NPNトランジスタ(オープンコレクタ出力方式)
(図1)の出力はシンク及びソースどちらでも使用可能な回路になっていて、負荷の接続の方法によって、負荷に対してシンクにもソースにもなることが可能です。そのため、この出力であれば、(誤用を正す)融通が利きやすいのです。
一方(図2)はオープンコレクタ出力方式で、電流の流れはNPNトランジスタと同様でシンクになります。オープンコレクタ出力の場合は、内部回路はエミッタ接地となっていて、コレクタ側にしか接続できず、シンク電流のみのため、NPNトランジスタではドライブすることができません。
オープンコレクタでソース動作するわけがない・・・
最初に組んだドライブ回路は(図3-1)でした。
図3-1 トランジスタ出力のドライブ回路例(NPN)
図3-2 トランジスタ出力のドライブ回路例(PNP)
しかし、実際に使用したデジタルI/Oはオープンコレクタ出力方式(電流シンクタイプ)だった為、デジタルI/Oのエミッタ側を接地して使う仕様になっていました。この場合は(図3-2)の回路にしないと、リレー動作させることはできません。そんな失敗をしてしまったため、基板は作り直しになってしまいました。そして修正した後の回路が(図4)です。
図4
しかし、この間違いのおかげで、シンクもソースも可能なトランジスタ出力とオープンコレクタ出力方式のドライブ回路は(図3-1)と(図3-2)パターンを覚えておけば、(回路によってはもっと手を入れる必要もがありますが)大体のことは足りてしまうことを知ることが出来ました。あとは、接続するトランジスタの流せる電流値と実際に流したい電流値でトランジスタを決めるだけになります。
トランジスタ出力(オープンコレクタ出力方式やシンク、ソースなど)について、ベテランの方から見れば初歩的なことで、そんなの当たり前に思う方が多いでしょう。しかし新入社員や若手エンジニアの方で、設計経験の少ない場合は間違えやすいのではないかと思います。実際私もこんな感じで間違えてしまいましたし・・・。
回路設計でもミスは、ままあることです。でその間違い探しの際、意外と見落とすのが、そもそもそのデバイスの入出力仕様はどうなってるのか、なんです。 あれおかしい?、と思ったら、回路構成とともにぜひその辺りも点検してみてください。