コラム

電子回路に棲む見えない魔物

こんにちは。ソリューション開発課の千葉と申します。本コラムは、私が担当した製品での経験談です。 製品設計において回路図は重要(というかそれがないと始まらない・・・)ですが、完璧な回路図さえあれば、性能を満たした製品が作れ […]
投稿日-2017年11月

 

こんにちは。ソリューション開発課の千葉と申します。本コラムは、私が担当した製品での経験談です。
製品設計において回路図は重要(というかそれがないと始まらない・・・)ですが、完璧な回路図さえあれば、性能を満たした製品が作れるわけではない、というのが今回のお話の趣旨です。

規格改定にあわせて改造した製品が上手く動かない

私が担当した製品は電源変動試験をするための製品で、電源装置の出力に追加したスイッチをソフトウェアによってON/OFFさせることで、電圧を急瞬に変動させるという試験装置になります。
そもそもベースとなる電源装置にはソフトウェアで設定した通りに電圧を変動させる機能はあるものの、電源変動試験の一部規格に求められるような、急瞬に電圧を変動させるという動作には対応できませんでした。そこで、出力段に追加したスイッチをON/OFFさせることで、それを出来るようにしたわけです(図1)。

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図1

この製品は、私が担当する以前から実績のあるもので、今回、規格の一部が改定されたため、顧客より改定された規格に対応した製品の要求がありました。規格の改定内容もさほど大きな改定でないという見込みがありましたので、実績のある製品を元に一部の回路構成を変更したのみで部品配置もほぼ以前のまま製作へと進みました。

数週間後、実際に製品が組み上がってきました。いざ電源を投入!
ところが、改定された規格に則って動作させるとスイッチOFF時のアンダーシュートが以前の(改造前の)製品より大きい等、波形が乱れる現象が発生。
原因の切り分けのために、試しに改定前の規格の測定条件にて動作させたところ、実力は以前の製品と同等であることがわかりました。

では、なぜ今回の測定条件で、以前の製品よりも大きなアンダーシュートとなったのか。

原因は「寄生インダクタンス」

規格で規定されている電源電圧の変化量としては旧規格、改定規格共に同じ。違いは負荷の抵抗値です。 以前は数百KΩという高抵抗で今回は数Ωという低抵抗でした。言い換えると負荷電流が大きくなったということになります。

大きな負荷電流が流れている状態から急瞬にOFFして流れていない状態へ。以前の規格と電圧変化は同じものの、電流の変化量が異なっていました。つまり今回は、電流の変化量が大きいため、配線の「寄生インダクタンス成分(回路図上に出てこない誘導起電力)」が以前よりも、より大きく回路に影響する状態となっていたのです。

また、内部の部品配置・配線をよく見ると電源ラインとGNDラインの部品が離れており、プラス側の配線が長く、またマイナス側の配線も離れており、大きなループを描くような配線構成をとっていました。この構成も悪く、余分な寄生インダクタンスを持つことになっていました。

見えない敵を封じ込める

原因がわかれば、あとは対策です。

まずはスイッチング速度が求められる規格に対し、必要以上にマージンを持たせ早く設定していたため、スイッチング速度を調整しました。
次は配線のループです。理想的には部品配置を近くに変更して、配線を極力太く短く(=ループを小さく)すれば、寄生インダクタンス成分を減じることができるはずですが、部品配置の変更は時間の大幅なロスとなってしまうので、この変更は見送りました。

そこで配線の変更をおこないました。幸い、この製品の配線は基板上での配線でなくケーブル配線によるループだったため、その場で可能な対策として配線長を見直して、電源・GND配線をツイストして(撚り合わせて)、ループが小さくなるようにしてみたところ、寄生インダクタンスの影響をかなり抑えることができ、最終的に改造以前と同等の性能が出るようになりました(図2)。

図2

図2

電子回路には見えない魔物が棲んでいる

みなさんご存知の通り、電子回路には、寄生成分や浮遊成分と呼ぶ「設計者が意図しない抵抗、容量、誘導等の成分」があります。しかしそれらがどのようなかたちで現象として現れるのかは、実際にやってみないと分からないことの方が多いように感じます。それらをモデリング出来る回路シミュレータもあるようですが、もう一歩かなと。

本件は、限られた時間の中での対策だっため、これが最良策というわけではなく、まだ改善の余地はあります。しかしこの件で、回路図上は「ただの線」で表現される配線が、製品においては特性を追い込む重要なファクタになるということの実際を知ることができたので、私的には良い経験になりました。

規格は変更となる記載内容が実際の動作にどのような影響を与えるかをよく考えること。また回路図上での動作のみでなく、部品配置や配線などによる寄生成分を事前に想定しておくことが、改めて重要だと身をもって感じた仕事でした。

以上、電子回路には見えない魔物がいると思って臨みましょう、というお話でした。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。

執筆者: 千葉

[主な製品開発実績]特注試験システム、電源変動試験器

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