車載電子機器での、(複数ライン)電源電圧変動試験の急な追加要求に対応する方法をご紹介するコラム。その後編です。よろしくお願いいたします。
前編では、バイポーラ電源PBZシリーズは入手しやすいが、課題はソフトウェアであると申し上げました。では、それをどうやって解決するか、その方法を以下にご紹介します。
設備
必要な機材等は(表1)の通りです。ここでの想定は複数ラインの電源を変動ですので、変動させるラインの数だけPBZシリーズが必要になります。(※1)
表1
(表1)に記載していますが、1ライン用のWavy for PBZとKI-VISAは、当社Webからダウンロードが可能です。ただしWavy for PBZは試用版ですので3週間しか使用できませんが、「今すぐ試験がしたい」という場合には十分な期間と思われます。
(今回の方法でしのぐ間に、Wavy for PBZ(今後の事を考えると5ch版の特注Wavy for PBZ)をご購入いただくことをお勧めします)
※1:+BまたはBATT等のラインに電源電圧変動が無い場合は、+BまたはBATTラインにPBZシリーズを用意する必要はありません。通常のスイッチング電源等を用意し、指定の電圧で出力しておき、他のラインを変動させることで対応できます。
PBZシリーズの設定
まずはPBZシリーズの設定を確認します。以下の手順で設定してください。
① 操作パネル:CONFIGキーで3/7頁を選択しSYNCHROUSを設定します。
BATT(または+B)ライン(BATTラインが無い場合はACCライン)をMASTERに設定します。その他のラインはSLAVEに設定してください。
② CONFIGの6/7頁のINTERFACEでTYPEがUSBになっている事を確認します。
以上を全ての機器で確認します。
機器の接続
PBZシリーズ間の同軸ケーブルの接続方法を(図1)に示します。(※2)
同軸ケーブルの接続が終わりましたら、PBZシリーズの出力と供試品の入力を接続します。
なおクロック同期が必要でない場合は、10MHz OUTと10MHz INの接続は不要です。
図1 同軸ケーブルの接続方法
※2:オプションのOT01-PBZを使ったシステム構築の場合は、この同軸配線とは異なりますので、接続を変える必要があります。
シーケンスデータの作成と試験実行
Wavy for PBZを起動した後、以下の手順でセットアップします。
① メインメニューの設定>インターフェースを選択します(図2)。
図2 インターフェース設定画面
② USBを選択し、機器[PBZ]の製造番号にスレーブ機のシリアルを入力します。
③ [接続テスト]を押します。問題がなければ、「KIKUSI,PBZ(形名),(シリアル),(バージョン)」が表示されますので、[OK]をクリックして下さい。
④ インターフェース画面の[OK]ボタンを押してインターフェース画面を閉じます。
⑤ シートにデータ(変動パラメータ)を入力します。
⑥ インメニューのシーケンス>転送を選択します。(図3)
⑦ 書き込みの[実行]を行います。確認のメッセージが表示されますので、[OK]をクリックして下さい。
図3 転送画面
⑧ 転送画面の[閉じる]ボタンを押して転送画面を閉じます。
⑨ 他のスレーブ機及びマスター機も上記①から⑧の手順で設定します。
⑩ 全てのPBZの[RUN/PAUSE]キーを押します。PBZの液晶画面が「SEQ. EXECUTION」になっていることを確認してください。
⑪ 試験前にDC電源を供給する場合は、マスタ機の[OUTPUT]キーを押します。マスタ機と連動してスレーブ機もOUTPUTがオンします。
⑫ マスタ機の[RUN/PAUSE]キーを再度押すとシーケンスが開始されます。シーケンスが完了するとPBZの液晶画面は通常の画面に戻ります。
⑬ シーケンス動作終了後、[STOP]キーが点灯していますので、[ENTER]キーで解除します。
⑭ 再度試験を行う場合は、上記⑩から⑬を繰り返します。
複数の試験を行う場合
Wavy for PBZでPBZにシーケンスデータを転送する時に、プログラム番号を変えて保存することで、複数のデータを保存することが可能です。保存できるプログラム数上限は16で、PBZのシーケンス開始前(液晶画面が「SEQ. EXECUTION」のとき)に選択が可能です。
このプログラム保存機能をうまく活用することで、面倒な作業がかなり軽減できるかと思います。
現場のパソコンがスタンドアロンまたはパソコンがない場合の対応方法
試験場所によっては、パソコンがあってもネット接続不可や、パソコン(データ等)持ち込み不可といったケースもあり、簡単にアプリ等をダウンロードできない場合もあるかと思います。
専用の波形ライブラリを持ったアプリ、シーケンス作成ソフトWavy for PBZはいずれもPBZシリーズ本体内蔵のシーケンス機能を使っています。よって、以下の手順をとることで、パソコンなしで試験を行う事が可能です。
① マスタ機、スレーブ機の設定を行う
② 前述を参照に同軸ケーブルや供試品との接続を行う
③ PBZシリーズ本体のパネル操作(手入力)でシーケンスデータをライン毎に設定する
④ マスタ機でシーケンスを開始する
しかし、この方法はシーケンス入力がかなり面倒であり、入力したデータに相違がないかの確認も(オシロ等も使って)一度動かさないと分りません。あくまで使用環境が整っていない場合の緊急対応方法であり、あまりおすすめは出来ませんが、参考としてご紹介させて頂きました。
結局どうすればいい?
前後編とご説明して参りましたが、「で、結局どうすればいいのか?」と。
比較的簡単なのはKES7400シリーズの導入ですが、(自分で言うのもなんですが)それは時間もお金もかかります。
私的なおすすめとしては、前編でご紹介したWavy for PBZの特注5ch版を「いざかまの備え」としてご準備いただくのがよろしいかと思います(図4)。
図4 Wavy for PBZ 5ch版の同期実行画面
5ch版特注Wavy for PBZを使えば、初期設定の手間やPBZシリーズのパネル操作は一切不要となります。また各ラインの変動パターンを1画面で確認できますので、設定ミスも少なくなり、信頼性の高い試験を行うことができます。PBZシリーズ本体はレンタル等でも調達可能ですので、スポットでの試験が多いのあれば、5ch版特注Wavy for PBZを手元に用意しておくと安心できるのではないでしょうか。
手前味噌ですが、これ本当に便利なんです・・・
自信を持ってオススメします。