私は「エレクトロニクスの設計は特殊だなー」と、最近つくづく感じています。 見えない世界を操る エレクトロニクスの設計が特殊と感じる一番の理由は、目に見えない事象をツールをたよりに設計していく、ということにあります。目で見 […]

コラム

その測定値は正しいですか?

掲載日-2018年8月 ※記事は当時の掲載日をご確認ください。現在の製品情報や価格、技術についての最新情報ではない可能性があります。ご了承ください。

私は「エレクトロニクスの設計は特殊だなー」と、最近つくづく感じています。

見えない世界を操る

エレクトロニクスの設計が特殊と感じる一番の理由は、目に見えない事象をツールをたよりに設計していく、ということにあります。目で見えない事象を表現するために、エレクトロニクスの設計者は目標とする機能や性能を、回路図やプログラムなどに書き起こしていきますが、その機能や性能が実現できているかどうかは、目視することは不可能で、測定器などのツールを使わないと確認することが出来ません。

会社に入社したての頃を思い出してみると、先輩技術者が使っている実験ベンチに様々な測定器が配置されているところをみて、単純にカッコイー!と思った記憶があります。
カッコイーと思ったのは、複数の測定器を自由に操りながら仕事をしている先輩の姿が、さながらコックピットの中でいろんな計器をチェックしたり、スイッチ類を操作しながら飛行機を操縦するパイロットと同じようにイメージできたからだと思います。

設計の実務経験が少ないころは、測定器に対しては全幅の信頼を置いていて、測定したいポイントに繋げば必ず正しい値を表示してくれるものだと、盲目的に信じていました。
エレクトロニクス設計者の多くは、オシロスコープを自分の手足のごとく駆使しながら、波形観測を行っていると思います。ある程度実務経験のある技術者であれば、オシロスコープを使う前には必ずプローブの補正が出来ていることを確認した上で使い始めると思いますが、経験の少ない技術者は、プローブの補正が出来ているかどうかを確認せずに、いきなり測定に入ってしまうことが良くあると思います。
私も経験が少なかった時分では、補正が出来ていないプローブで波形観測を行い、何度も苦い思いをしています。

使う前にプローブの補正を

オシロスコープのプローブを補正しなければならない理由や、プローブの回路構成等については様々な資料が提供されていますので、ここでは簡単に載せるだけに留めますが、補正していない状態のプローブを使って波形観測すると、正しい結果は得られないということは容易に理解できると思います(図1)。

図1:プローブの補正

エレクトロニクス設計者が良く使う、デジタルマルチメーターについても同様のことが言えると思います。
マルチメーターの場合は、プローブ補正のような作業はありませんが、準備したマルチメーターは、測定しようとする信号を正しく計測できる性能を有しているか?を、測定に入る前に必ず確認する必要があります。この事前確認を怠ると、正しい計測が出来ないどころか、計測器を壊してしまったり、最悪の場合、感電事故を招くことも有り得ます。

タイトルに示した「その測定値は正しいですか?」を、もう少し肉付けた言い回しにすると、「その環境(被測定物+測定器)で、確認したい信号が正しく観測できますか? 測定器の示した値は正しい値であると言えますか?」ということになると思います。
エレクトロニクス設計者にとって、測定器はなくてはならないものです。測定器が有する機能、性能を充分に活用するために、測定器の仕様や使い方をいま一度眺め直してみて欲しいと思います。

執筆者: 菊水電子工業株式会社

計測と電源のエキスパート・カンパニー 菊水電子工業のスタッフによる執筆です。

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