こんにちは。キクスイの時間旅行案内人、秋山です。
仕事をする上で欲しい能力には様々なものがあります。いわゆる「〜力(りょく)」というやつです。企画力、決断力、交渉力、構想力、コミュニケーション力、地頭力、思考力、失敗力、質問力、想像力、創造力、提案力、判断力、論理力、等々・・・。キリがないほど沢山ありますが、今回のテーマは「集中力」です。
みなさんは、日々いろいろな仕事をこなしていることと思います。決まった手順があり、それなりの時間を費やせば終わる仕事。チームにおいて担当部分を提出すればリーダーが纏めてくれる仕事。脳みそをフル回転させないと処理できないような仕事。一日の中で、あるいは一週間の中で、作業内容には大小の波があります。だからこそ、メリハリのある面白い日々が送れます・・・と思うようにしています。
そして今回は、ここ一番の時、やるべき事柄に集中して結果を出す力。否が応でもそれを高めざるをえない状況があり、今思えば結果的に集中力を養うことになったのかな、と思った出来事をお話します。
では早速、時計を30年前に戻してみましょう。
不具合発生
時は、入社して2年が経過した頃。時計の針は11時半。そろそろお弁当の時間だなぁと、自分の腹の虫が鳴ったと同時に、課長のデスクの電話が鳴りました。電話の主は営業マン。2週間ほど前に納品したミニコン用特注電源装置、初回ロット6台のうち1台の動作が不良であるとのこと。サービスマンが午前中から対策に入ったが急用で帰宅、現在作業を中断している。引き続きの対策を開発部門に支援してもらえないか、と言う内容でした。課長は了解し、開発のメンバーを行かせる事としました。そして課長は私にロックオン。昼食も取らずに出発です。
アウェイ感が半端ない中で
2時過ぎに現場へ到着。サービスマンが残したメモを見て不具合内容を確認。「さーて、どうしたものか」と回路図などの準備をしていると、気がついたら関係者が私の周りを囲むように集まっていました。納入先の製造部の課長、製造ラインの責任者、開発部門の人たち、品質保証の課長など、私よりかなり年上の方ばかりです。私の一挙一動に目を見張り、そして聞こえてきましたひそひそ話。
随分と若い人が来たけど大丈夫か?
原因がわかっても対策までできるのか?
何時までに対策できれば今日の出荷に間に合うのか?
他の5台に波及するような原因だったらどうするんだ? などなど・・・
今風に言えば「アウェイ感が半端ない」でしょうか。とても緊張してきました。心臓がバクバクしてきました。頭の中が少し混乱してきました。しかしそんなことは言っていられません。何とかしなければいけません。
こういったとき、私の方法論はこうです。落ち着け、落ち着け、落ち着け、集中だ。一度目を瞑ってからそーと開く。見るものは電源装置と回路図。耳は機能を停止。周りの人は見えません、周りの話し声も聞こえません・・・。外界を遮断した空間を作ることで、目的に向かって作業を進めることができるような気がしました。
やるべきことは、電源装置の動作不良を対策することのみ。
そして見つけました、原因! 対策を施して動作確認。お客様に状況を説明、対策内容の了解を得ました。他の5台も予防処置を展開し、動作確認を実施。作業終了・・・。帰りの営業マンが運転する車の中、私はストレスから解放されて放心状態でした。営業マンとの会話が上の空だったことを記憶しています。
集中力は修羅場の中で育つ
その後も不具合の起きた現場へ送り込まれることがありました。その度に、この時のことを思い出し集中力を高めるおまじないをします。少し古いですが、ラグビーの五郎丸選手で話題になった「ルーティン」と言ってもいいでしょう。
落ち着け、落ち着け、落ち着け、集中だ。一度目を瞑ってそーと開く。
集中力を養うための方法は多々あると思いますが、私の場合は、現場に放り込まれて集中力を養わざるを得なかったという状況でした。言い方を変えれば「矢面に立たされた」ような格好です。
やおもてにたつ【矢面に立つ】
抗議・質問・非難などを受ける立場に立つ。大辞林 第三版より
できれば、こういった逆風の場面には出くわしたくないのが本音です。しかしどうにも逃げようがない時があります。自分の後ろには誰もいない。自分が受けて立つしかない。辛いのですが、振り返えればそういった経験が、集中力のみならず、色々な能力を高めてくれた機会になったように思います。
ひたすら逃げ回るという戦略もありますが、年齢を重ねてきたとき、かなりの高確率で後悔することになります。若い時の苦労は買ってでもせよ、と言いますがそれは本当だなと、今の年齢になってしみじみ思います。