ソリューションノートにて「自動車用ヒューズ溶断試験ソリューション」を紹介させて頂きました坂田です。今回は、自動車用ヒューズについて、規格改版の動きが最近ありましたので、その情報をご提供したいと思います。
ISO20934規格がPRFに
その規格とは、2018年5月時点で草案となっていた
ISO/DIS 20934
Road vehicles — Fuse-links with axial terminals for use in 48V networks —
Types SF36-48V, SF51-48V and SF56-48V
というものです。
ISO 8820をベースとして作成されており、適応範囲は次のように記載されています。
ISO 20934は、公称電圧がDC48V の路上走行車における定格電圧DC70V 、定格電流30A〜500A、および電気系統での使用を意図した2500Aの遮断容量を持つヒューズリンクに適用できます。
そして現在(2019年2月)、下記のような状況にあります。まだ草案ですが、ISO/DISからISO/PRFと一段階進んでいます。
ISO/PRF 20934
Road vehicles – Fuse-links with axial terminals for use in 48V networks –
Types SF36-70V, SF51-70V and SF56-70V
なお参考までに、ISO規格制定は下記のような手続きで進みます。
(PWI→)NP → AWI → WD(→CD)→ DIS → FDIS又はPRF → ISO規格(PAS、TR、TS、R)
PRFの次は、ISO規格として発効となります。
定電流モードでの電子負荷の使用が許可されない!
この規格では、ヒューズに関する多くのことが規定されていますが、私が注目したところは、
遮断容量(Breaking capacity)にあります。試験内容の記述の中に
The usage of an electronic load in constant-current mode is not permitted.
(定電流モードでの電子負荷の使用は許可されていません。)
という一文がありました。これは困りました・・・。ソリューションノートの「自動車用ヒューズ溶断試験ソリューション」では、電子負荷装置における定電流モードの正確な電流スルーレート設定を前面に出して紹介しているのです。
定抵抗モードを使う
しかし、ちょっと考えて・・・閃きました。電子負荷装置の定抵抗モードを使えばいいのでは。
そもそも遮断容量試験について、規格の中に記載されている試験回路は、電源と回路電流を決定する抵抗器、それと電流の立ち上がり時間(時定数)を決めるインダクタンスで構成されています。
電子負荷装置を定電流モードではなく、定抵抗モードに設定します。更に、シーケンス機能を使って規格にある時定数で電流が立ち上がるように動作させればよいのではないかと。
そこで実証のため実験をしてみました。
実験
遮断容量試験でヒューズに流す試験電流の波形は、下図のように決められています(図1)。
図1
電流2500Aの設備を用意するのが容易(笑)でなかったので、実験では IB=70Aで確認してみました(図2)。電子負荷装置は定抵抗モードでシーケンス機能を使っています。
図2
規格にある時定数(2ms)で立ち上がる試験電流が再現できました。
今後この規格が正式に制定されると海外向けのヒューズにはこの規格での試験を実施することが必要になります。しいては、ISO 8820を参考にして作成されました国内の自動車用ヒューズの規格JASO D612 にも影響が及ぶことが考えられます。
ヒューズ用試験装置を必要としているお客様、ぜひ当社にご相談ください。電子負荷装置の定電流モードと定抵抗モードを必要に応じて使い分けられる、便利なヒューズ試験システムをご提案できると思います。
よろしくお願いいたします。
※参考資料
参考として、遮断容量試験の回路図を示します。自動車規格JASO D612 からの抜粋です。ISOも同じ回路になります。
画像をクリックすると拡大します