ソリューションノートにて「電源リップル重畳試験システム」を紹介させて頂きました土畑です。この記事の掲載は、もう2年以上も前のことになります。この2年間で色々な経験をさせていただき、多少なりとも私自身もスキルアップしているものと自負しております。
そこでこのコラムでは、私も含めた「キクスイ特注部隊」の現場対応能力についてのエピソードを、ご紹介したいと思います。それは、かなり高額で複雑なシステムの納品直前に掛かってきた一本の電話から始まります。
入力電源が急遽変更に
電話の相手は弊社の担当営業マンです。
「来週納品のシステムの件で相談があります。動作させるために必要な入力電源は、単相100Vと三相200Vの2種類となっていましたが、お客様の方で単相100Vのみでお願いしたいとのことです。納期最優先です。無理は承知の上です、できる限りのお手伝いをしますので対処願います。」
さぁ、大変です。まずは上司に相談です。「本当に対応できるのかどうか、何をどうすればいいのか必要事項を抽出しなさい」と指示が出ました。
さっそく、現在着手中の仕事を一旦止めて検討開始です。現状三相200Vで動作しているものは2台の電源装置になります。そしてその電源装置は両方とも外部信号によって制御されています。
代替用の単相100Vで動作する電源ですが、入力電圧が小さいため出力容量が小さくなってしまいます。従って小さい出力容量の電源装置を複数台使って並列運転する構成にし、容量アップすることが必要です。さらに外部信号で制御できる機能を持っていなければなりません。またラックに収納するので、外形寸法も重要なファクターになります。
代替用電源の入手は納期の前日
検討の結果、代替可能な電源装置を決定しました。
電源装置を、PATシリーズ2台からPWX1500L×4台(並列)とPWX1500L×2台(並列)への変更です(写真)。
PATシリーズ(上)とPWXシリーズ(下)
次に、代替用電源装置が必要な台数入手することが出来るかどうかになります。
上司の許可のもと、お客様対応を開始しました。まず先程の担当営業マンに代替用電源装置に関する情報を連絡しました。在庫状態、出荷予定等を調査、関連部署の調整の結果何とか用意できるとの返信が届きました。ただし、どんなに頑張っても電源装置の入手は、システム納品の前日という事でした。
これらの情報をもとに担当営業マンがお客様と相談した結果、電源装置の入れ替え作業を納品現場で実施するという段取りになりました。システム納品までの間に、交換が必要になる電線、信号線、コネクタ等の準備をしました。この間わずか三日間の出来事でした。
納入即改造
システム納品の当日、お客様に検収をして頂き、それから電源装置の入れ替え作業に着手です。ラックから三相200V入力の大容量電源(PAT)を2台取り外し、単相100V入力の電源(PWX)6台を組み込み、並列運転用の配線を施しました。
続いて制御用信号線をコネクタの変更も含めて実施しました。以上を終え一部再調整のあと、動作確認をして作業終了です。
本件、大勢の協力があって成しえることができました。営業サイドの製品納期の融通、諸先輩たちの助言と作業的支援。キクスイ特注部隊のお客様要求事項に対する対応能力の強さを実感した一件でした。まさにチームキクスイ。我ながらよくやったと自画自賛です。
今回の電源装置入れ替え作業を終えて、お客様から頂いた言葉は「早急に対応頂きありがとうございました。」でした。しかし、上司からの言葉は「今後どんでん返しの無いように、再発防止策を検討しなさい」・・・厳しい!
確かにその通りで、お客様の使用条件をもっと精査していれば防げた事態であり、その点は今後の教訓として生かしたいと思っています。
特注品は毎回が「初戦」
特注品は一品ものがほとんどであり、類似事例はあっても、毎回が「初戦」のようなものです。なので必勝パターンの使い回しがしにくく、都度戦法を編み出さなければならない宿命にあります。そういった背景があって「無茶振り対応力」が鍛えられるのではと思います。とは言うものの、こちらも人ですので、確信犯的な無茶振りはご容赦ください・・・。
しかし、お客様のご要求には、誠心誠意を持って対応したいと思っております。
今後ともキクスイ特注部隊を、どうぞ御贔屓いただけますよう、よろしくお願いいたします。