当社の直流電源には「並列運転機能」が装備されている製品が多くあります。直流電源(同一モデル)を並列接続することにより、手軽に出力容量を増大できます。とりわけ「親機」にあたる製品のフロントパネルで、並列接続された電源全体の設定や出力値の表示ができる「ワンコントロール並列運転」は、単体運転と操作性が変わらず便利であると、好評をいただいています。なお、「ワンコントロール並列運転」という表記は当社の造語で、一般的に「マスタースレーブ並列運転」と呼ばれている概念と同じです。また「ワンコントロール」は和製英語で、ネイティブの方には通じませんのであしからず。
さて、とても便利な「並列運転機能」ですが、その並列運転配線(信号系の配線、負荷への配線)はユーザ様の作業としてお願いしており、その配線方法を取扱説明書に記述しています。しかしながら、意外と記述の通りに配線していない例が多いようで、特に負荷への配線が適切でないために異常発振を起こしてしまい、不具合としてお問い合わせをいただくようなケースがあります。並列運転の負荷線の配線方法は、製品シリーズによる差異がほとんどありませんので、ここではその基本的な配線方法と不安定な状態の場合の対処方法についてご説明します(注:高速電源PBZシリーズについては除きます)。
1. 基本的な配線
(1)電源から負荷への配線は同じ長さで、短く配線します。図1の様にL1、L2、L3の各配線は同じ長さで、できるだけ短く、配線してください。
(2)負荷へ配線が長い場合はできるだけ短い配線で中継し、その中継から負荷への配線を長くします。その際できるだけ撚って配線してください(L4)。
図1に配線例を示します。
L4の配線の太さは三台の電源の合計電流を安全に流せる線径の電線を使用してください。この基本的な配線でハンチングが起きるなど、出力が不安定になる場合があります。その時は次ページのような対策を行ってみます。様子を見ながら、それぞれまたは全部を行ってみます。
2. それでも出力が不安定になる時の対策法
(1)出力端子のマイナスまたはプラス端子を接地します(図2中 緑色線)。
DUTの入力が接地されていない場合はプラス、マイナスのどちらに接地しても問題ありませんが、DUTが接地されている場合は、接地されている側の出力端子を接地します。
(2)制御コモン側の出力端子に渡り線で配線します(図2中 黄色線)。
制御コモンがマイナス端子の場合はマイナス端子、制御コモンがプラス端子の場合はプラス端子を接続します。
(3)中継点に大容量のコンデンサを接続します(図2中 桃色)。
ご注意:PBZシリーズなど、高速電源には接続できません。
以上のような対策を行うことで、負荷配線に起因する不具合のほとんどは解消すると思います。