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インテリジェント・バイポーラ電源 PBZシリーズ【ピーク電流6倍対応モデル】

電子機器の電源容量性化傾向に合わせ、 瞬時電流を定常の6倍まで供給可能に。 自動車電装系 テストシステムのコストを低減。
投稿日-2021年7月

 

電子機器の電源容量性化傾向に合わせ、
瞬時電流を定常の6倍まで供給可能に。
自動車電装系テストシステムのコストを低減。

テスト用電源の要件

通常の6倍ものピーク電流に対応できる電源の開発ですね

<風見>PBZは高速応答が特長のバイポーラ、つまり4象限出力可能な電源シリーズです。方式的にはリニアアンプでして、電子機器の電源変動テストなどシミュレーション電源としての用途を意識した多機能信号源を内蔵しています。単体でのパワーは400Wですから当社の電源群の中では中くらい。むしろ小さい方に位置づけられますが、複数系統の同期運転や並列運転ができるので、クルマのように幾つもの電源系統があるシステムや実際にお使い頂いているパワー領域はずっと広くなっています。今回我々はそのピーク電流量を6倍まで許容するチャレンジをしました。

PBZシリーズ大容量モデル

<松本>本来、電源というものは自身が壊れてはなりませんし接続する負荷を壊してしまってもいけません。例えば、負荷が短絡した場合には瞬時に大きな電流が流れ出ようとするわけですが、電源がこれを許容すると負荷を破損してしまいます。
また、電源自体も大電流に耐えられずに壊れる危険があります。したがって実際の電源では強力な保護回路によって急な大電流を厳格に制限しています。その意味では、今回の開発は電源の理念を覆すチャレンジだったと言えるかもしれません。

4象限(バイポーラ)動作概念図

自動車電装系の負荷特性

ピーク対応が必要になった理由は

<風見>一言で言えば大きな電流ピーク対応がこれまでにないソリューションとなり得ると確信したからです。発端はクルマの電源環境テストをなさっているお客様からのご相談です。当社はKESシリーズをはじめクルマの電源テストに関して多くのソリューションをご提供している関係からメーカさんとの縁は深いのですが、PBZシリーズも電装品試験用電源などとして多くの実績があります。

あるとき、そんなお客様からシステム増設の相談を頂きました。「テスト用の電源システムを組みたいのだけれども、今よりもコスト効率の良いものはできないだろうか」というものです。
もう少し具体的に伺うと、電源は負荷のパワーに合わせた容量のものを選ぶわけですが、例えば車の電源を投入する際の挙動テストなどでは一時的に大きな電流が流れるんですね。そして、「この時の電流に合わせた電源を選ぶと、ものすごくハイパワーな電源が要る。そうすると、他の比較的定常な状態においてはパワーに余裕がありすぎるオーバスペックとなってコスト的にも非常にもったいない、何とかならないだろうか」というものでした。

<松本>実は、最初にお話を伺った時点では、そうですか、やはり容量に余裕のある電源をお求め頂くのかな…とちょっと甘く考えていました。ですが、客先に何度も足を運ぶうちに別の事情が見えてきたんです。
それは車の電源ラインのトレンドというか電装系の負荷特性が時代と共に大きく変わってきているという事実です。

近年、クルマは電子化が進み電気系への負担が増していることは誰でも承知していますが、もう少し踏み込んで回路的な見地からすると、電源ラインから見た負荷はどんどん容量性になっているんですね。電装品の電源入力には並列にコンデンサがつながりますが、この容量がどんどん増えていると共に数も急増しています。モータやアクチュエータなど誘導性の電装品も電子制御になって電源の入力は電子回路に置き換わった。そうすると電源からはものすごく大きなコンデンサが負荷としてぶら下がって見えるわけです。その結果、電源投入時などはコンデンサへ充電するために従来よりも大きな過渡電流が流れることになって、テストではこの状況に見合った電源が必要になるわけです。
こうした傾向はクルマの電子化が進行する限り変わらないでしょう。だとすれば我々もニーズの変化に合わせて電源を変えていかなければならないんじゃないか、と言うわけです。

車の電子化イメージ

高速ピーク電流対応技術

6倍ものピークに耐えるのは簡単では無いはずです

<風見>実は私共試験用電源メーカにとって一時的な大電流への対応というのは、際だって目新しいことではなく昔からあった課題なんです。直流電源もそうですが交流電源などでも、負荷となる電子機器のインラッシュ(電源投入時の突発的大電流)はけっこう大きいからです。なので、ある程度の技術の蓄積というか、何をやれば良いかという知見は持ち合わせていました。ですが、先にお話ししたように、既存の電源は強力な保護回路によって過大な電流を抑えています。大きなピーク電流を許容するということはそれらの保護とは相反する動作ですので、どんなピークをどのくらい許容するのか保護回路との兼ね合いと言いますか、如何にして保護を安全に解除するかというのは当然ながらひとつのポイントでした。

<松本>今回はさらにもうひとつ大きな課題のクリアが必要でした。それはスピードへの対応です。PBZシリーズはバイポーラかつ高速応答というのが特長なわけで電源の過渡状態試験用には外せないメリットなんです。この優れた応答性を維持したまま安定した定電圧動作をさせるというのが実は難しい。端的には高速/広帯域性を維持した帰還とそのためのセンシングなんですけれども、こうした部分は技術とノウハウの塊なんです。実際に開発時間の内の多くはこの問題解決に費やされました。

立上がり波形
立上り波形

お客様に報いるソリューション

開発を果たした今、思うことは

<松本>今だから言えるのですが、今回の開発の話が来た当初、私としては「できっこない」と思っていました。お話しを頂いた当初は要求仕様が漠然としていたということもありますが、私としても勝手な思い込みがありました。それが、何度もやり取りしていく中でお客様が求めている真の要求みたいなものを見極めることができまして、「それならできるぞ」という気持ちに変わりました。単に6倍のピークといってもその電流形状などはいろいろ考えられるわけで、当初は私共の想定とお客様が考えておられた内容とに喰い違いがあった訳なんです。そうした綾がお話しを進めていく中でだんだんと解けていき、それからは技術課題のクリアについてもきちんとした方向性のある開発ができたと思っています。

<風見>私共計測器のユーザの多くは研究・開発・生産に係わっておられる方々です。当然ながら秘匿性の高い部分が多く、問題を抱えていたとしても詳細までお話し頂けたり、実際の現場で確認させて頂けたりするチャンスは意外と少ないものなんです。
そうした中にあって今回の開発ではお客様からの情報提供も多く、お互いに腹を割ったお話しができたことが成功の鍵だったと思います。

<松本>今回、お客様には開発完了まで時間をいただきました。待っていただけたのも良好なコミュニケーションのおかげだったわけですが、私としては何としてもお客様に報いたいという気持ちでいます。因みに、この開発で浮き彫りになった負荷の容量性負荷電流の定常値とピーク値の比率増大というのは、自動車に限ったことでは無く、他の電子機器にも共通するものと考えています。開発のベースを標準品であるPBZシリーズとしたのも他のアプリケーションへの応用を考えれば結果的に正解でした。

<風見>私も今回の開発は「言われたものを作りました」という感じは無くて、お客様と共に作ったという気持ちが強く残りました。このことはこれからも大事にしていきたいと思っています。あと、ちょっと違うかもしれませんが、PBZというのはアナログのリニアアンプでサイズや重量それに電源効率なんかは時代の要求と合わなくなってきているところがありまして、個人的にはこれをスイッチング方式のアンプに代える技術なんかもマスターしたいなと考えています。

菊水電子工業株式会社

執筆者: 菊水電子工業株式会社

計測と電源のエキスパート・カンパニー 菊水電子工業のスタッフによる執筆です。

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