HEV,PHEV,EVの出現、LV148に向けた48V化などにより変貌を遂げるクルマの電源。それに合わせたヒューズの対応も急がれている。 評価試験では規格対応はもちろんのこと、電流設定から計測保存まで一貫して管理できる体制が望まれる。

電子部品 KIKUSUI mag

JASO D612対応 新世代自動車向けヒューズの開発・特性評価をサポート

掲載日-2021年8月 ※記事は当時の掲載日をご確認ください。現在の製品情報や価格、技術についての最新情報ではない可能性があります。ご了承ください。

HEV,PHEV,EVの出現、LV148に向けた48V化などにより変貌を遂げるクルマの電源。それに合わせたヒューズの対応も急がれている。評価試験では規格対応はもちろんのこと、電流設定から計測保存まで一貫して管理できる体制が望まれる。

自動車電源の大変革に対応するヒューズ要求

ヒューズは生産も測定技術も確立されていると思えるのですが、どんな問題を抱えているのですか

<吉川>確かにヒューズはシンプルかつレガシーな部品であり、一般の電気電子機器はもとより自動車においても長い間大量に使われてきた実績があります。
ちなみにヒューズは使用されるアプリケーションのパワーラインに使用されることに注目してください。もし、使用されるアプリケーションにおける電源のインフラに変更が起これば、それに合わせた新たなヒューズが必要になることが分かります。

代表的なアプリケーションとして自動車を考えてみますと、クルマ用なら12V系のヒューズですよね。標準化と規格化も進み測定法も確立されています。

ヒューズ

<坂田>一方でクルマでは、近年、電源系に大きな変革が起きました。HEV,PHEV,EVなどの出現により12Vを遙かに超える高電圧が持ち込まれたのはその典型です。同時に電装品が増えたことで電流値が大きくなっていますし、LV148*1でバッテリの電圧が上がるといったこともあります。

そして、それら新たな電気系統に合わせるためにヒューズにも新たなものが求められているんです。電気系統の高集積化に併せて従来よりも小型なヒューズ要求などもトレンドです。
それら各々について、用途に合わせた新型ヒューズの開発と評価法/規格化などの策定が進んではいます。新たなヒューズ開発や評価にマッチした効率的なシステムが求められていますが、従来の12V系ヒューズが確立された技術として長い間使用されてきたこともあって評価装置の進化が遅れていた面も否定できません。

高速大電流の生成と制御、データの一括管理

新たなヒューズ開発や生産に用いるテストシステムの要件は何ですか

<坂田>ヒューズの試験法自体はシンプルです。基本的にはヒューズに定められた電流を流して溶断するか否かを見るわけです。但し、ヒューズに流す電流は様々な大きさと様々なパターンがあり、これを素早く正確に作り出すのは簡単とは言えません。また溶断までの時間や電流パルスを加えた回数のカウントなど、測定系も併せ持ったうえでデータを合理的に管理する機能を有する必要があります。

<吉川>キクスイではこれらの状況を鑑みて現行の代表的規格であるJASO D612*2対応をベースにした自動試験システムをご提案しています。
JASO*3 D612はヒューズそのものの規格ですので形状等も含めて定められています。溶断の電気特性に関しては「電圧降下試験」「トランジェント電流遮断試験」「溶断時間試験」「ステップ通電試験」「遮断容量試験」が規定され、ヒューズの定格毎に許容値が定められています。このD612をベースにしたのは、新たなヒューズ開発においてもこの規格に準拠した測定が基になると考えられるからです。

本システムでは、申し上げた6つの試験について自動設定・測定とGo/NoGo判定ができます。もちろん、試験のパターンファイルを書き換えることで規格とは異なる新型ヒューズの試験・判定値を定めてテストすることも可能です。試験結果は条件も含めてファイル出力されるので、一元的な管理が可能です。

アプリケーション

<坂田>システムの根幹となる電流駆動系は、当社の大容量スイッチング電源[PATシリーズ]と電子負荷[PLZシリーズ]で構成され、電源→ヒューズ→電子負荷の3者で電流ループを形成することで高精度な高速大電流パルスの生成を実現しています。

測定系は溶断までの時間計測にユニバーサルカウンタ、電圧測定にデジタルマルチメータを組み込んでおり、電子負荷のモニタ電圧から切断情報を、スタートトリガは電子負荷の信号出力から得ます。お客様の中には溶断までの電流波形を残したいというご要求もありますので、その場合は電流のモニタ出力をデジタルオシロスコープに取り込んで残すこともできるようになっています。

システム構成図

<吉川>少し専門的な話になりますが、D612規格では電流の立上がり時定数が2msと定められています。実際の使用状態から考えればごく自然な規定なのですが、時定数が一定ということは到達する電流の大きさによって電流スルーレートが異なることを意味します。ところが、一般に電子回路による電流源のスルーレートは装置毎に一意に定まるものであるため、規格に沿った測定のためには駆動電流毎にスルーレートを変える何らかの工夫が必要になるんです。幸い、当社のPLZシリーズには電流スルーレートの可変機能があるので、本システムでは到達電流値を入れればスルーレートが自動設定されるようにしてあります。

  1. LV 148
    Electrical and electronic components in motor vehicles 48V electrical system 2011年にドイツの自動車メーカー5社がマイルドハイブリッド車を想定して策定した48Vの車載電源規格
  2. JASO D612
    公称電圧12V又は24V,定格電圧32V,遮断容量1000Aの自動車用低電圧ヒューズの定義並びに試験に関する一般条件,基礎的試験方法及び性能要件
  3. JASO
    Japanese Automotive Standards Organization 日本自動車技術会規格

参考:ヒューズの国際規格にはISO 8820-3が米国の国内規格ではSAE J2077などがある。また、42V系にはJASO D621がある。

執筆者: 菊水電子工業株式会社

計測と電源のエキスパート・カンパニー 菊水電子工業のスタッフによる執筆です。

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