独自のシステム構成により
テストニーズの進化と変様に柔軟対応
バッテリの進化に迫られた対応
充電と放電を繰り返す二次電池のテストですね
<大塚>当社が二次電池の充放電テストを手掛けた当初、対象は携帯電話用の小型バッテリでした。その後、ノートパソコンやビデオカメラなど、それまでより電池容量の大きなアプリケーションも出てきましたが、それぞれのテスト要求にはPFX20XXシリーズでお応えできました。このシリーズはプラグインユニット方式で一筐体にまとまっており、機能や対応パワーの柔軟性が特長ですが、想定した最大パワーは200W程度です。
<宮野>ところが近年になって、それを越えるパワーを持つ電池アプリケーションが急拡大します。例えば電動アシスト自転車、さらにクルマなどのハイパワーの電池アプリケーションです。数百A超の電池テストができないか、というお話しを複数頂くようになってきて我々も対応を迫られました。
システム構成の妙
充放電パワーの自由度が大きいですね
<大塚>同じスタイルで、もっとハイパワーに対応するシステムを考えなければならなかったわけなんですが、当時私は「それはちょっとどうかな?」みたいに思ったんです。
例えば新たに500Aクラスのシリーズを開発したとしますよね。でも、それまでの電池の発展状況から考えると、たぶん新シリーズができた途端にもっと大きな電流の要求が出てくるんじゃないか、それではニーズとのイタチごっこになってしまうぞって。
で、充放電のパワーに対して将来的にももっと柔軟性のあるシステムの様式というか構成を考えようということになりまして、論議の末に出てきたのが標準品の直流電源と電子負荷、それに充放電制御と電圧・電流の測定機能を持ったコントローラとを組合わせたシステム構成でした。
<宮野>具体的には直流電源のPWRまたはPAT-Tシリーズと電子負荷PLZ-4Wシリーズのブースタを使います。各シリーズ共にパワーレンジ面でのラインアップは充実していますし、並列運転等による増力も可能なので充放電テストシステムとしても幅広く柔軟に対応できるからです。そしてこの方式を実現するために充放電システムコントローラPFX25XXシリーズが開発されました。当初コントローラは300Wクラス対応でしたがその後1.2kWで複数台使用も可能なものを作りました。おかげでパワーの守備範囲もぐっと拡がりまして、レドックスフローの電力貯蔵テストで1000Aシステムを納入などのほか、1000A超級のシステムにも対応できる様になりました。
<大塚>もうひとつ、近年のアプリケーションでの電池の使われ方を観ますと、充電と放電の比率がけっこう違う、ゆっくり充電して一気に放電というものが多いんですね。ラップトップパソコンや電動アシスト自転車、それにアイドリングストップのクルマや太陽光蓄電などもそうです。その場合、テスト装置も例えば充電は数百ワットで良いけども放電はキロ単位のものが要ります。本システムのように充電用電源と放電用電子負荷を自由に組み合わせできれば最適化が図れますし、初めは小さめのシステムを導入してその後に電源や電子負荷を適宜増設していくこともできるので投資に無駄がありません。
そう言う意味ではコントローラ方式としたのは正解だったと思っています。
シームレス充放電と高ピーク耐量
この方式を実現できた技術ポイントは
<宮野>第一のポイントはシームレスな充放電です。充電と放電がパパッと切り替わって使われる電池では、切り替わりの応答性を含めて試験します。そのため、装置側には充放電の切り換えをシームレスにかつ素早いレスポンスが求められるわけなのですが、本システムのように電源と電子負荷の組み合わせにした場合は、両者をスムースに切り換えるための何らかの工夫が必要になります。我々はコントローラに切り替わり時のアイドリングを制御する独自の機能を盛り込むことでこれを解決しました。
<大塚>もうひとつのポイントは電子負荷に高ピーク耐量と瞬発力を持たせたことです。
例えばアイドリングストップ車用の鉛蓄電池では頻繁な充放電に対する評価試験規格があります(SBA0101等)。規格では、充電は最大で100Aであるのに対して放電は約1秒と時間は短いものの充電の3倍となる300Aが要求されます。これに対して私共の現行単体標準品のマックスは200Aなものですから、普通に考えれば2ユニットの並列運転ということになります。
<宮野>ですが、実際には連続定格を越えるワッテージを瞬時的に許容し得る瞬発力は潜在的に持っています。なんかもったいないですよね。そこで電子負荷の保護特性などもコントローラから制御することにしてデューティの大きな充放電に対応しました。さじ加減が難しい部分もありましたが、この規格用のシステムでは200Aの電子負荷1ユニットで300A放電の試験ができます。
<大塚>規格ではこれを3600回繰り返した後に、温度を変えてまた測ったりします。取得データ量も膨大になるのでやり直しは許されません。装置にも高い信頼性が求められるわけで、システム化に当たり我々が気を遣った部分でもあります。
対応にも俊敏さ
更なる展開への意気込みを聞かせてください
<大塚>テストニーズのトレンドという意味では、セットメーカさんなど電池を使う側の方からお声がけをいただく機会が増えました。具体的には、電池の劣化診断や良否判定法を模索されているお客様が多くなっています。理由として考えられるのはセットの寿命保証や電池のリサイクルとかリユースニーズです。今後はリユースのためのバッテリ選別、廃棄時の電気抜き(完全放電)といったニーズも出てくるでしょう。
更なる高電圧大電流化対応システムの開発はひとつの方向ですが、電子負荷にインピーダンス測定機能が加わったりしていますので、充放電テストとインピーダンス測定を同時に行うシステムですとかいろいろ考えています。
<宮野>世の中の動きには俊敏に対応したい。次世代電池の研究開発も盛んです。先端的な研究などでは電池容量はごく小さいものの、新たな知見も多く我々としては将来的な計測ニーズや対応技術の源でもあり、重点を置いているお客様でもあります。
ちなみに、電池メーカさんなどの場合、お客様の多くは電気化学のプロの方々です。我々とは違う切り口で電池を見ておられ、私共には電気屋としての知見や意見を求められたりします。対してセットメーカさんなどの場合は回路や品質管理のお客様に電池の上手い使い方や新技術の情報を聞かれたりします。それぞれの橋渡し役と言いますかコンサル的なお話しをさせていただくことが多くなりましたが、私自身が勉強になる部分も非常に大きいですし、アイデアの源にもなっています。