一人で中国出張。
いま思い出してもゾッとします。
時は2019年の初め頃、製品のプリプロ(量産試作)立ち上げ作業に開発メンバーとして立ち会うため、提携している中国の工場に出張したときのお話です。
前回出張したときは海外出張に慣れている同僚が一緒だったので何の心配もなく行くことができましたが、今回は一人で行く事になってしまいました。私にとって初めての一人海外出張です。
先に現地入りしている同僚からは、『ハイヤーの運転手が名前を書いた紙を持って出迎えてくれますから心配はありませんよ。』と言われていました。故に私は軽い気持ちで、日本人を迎えるのだから名前は繁体字で書くだろうな、くらいに思っていました。
ところが、迎えに来てくれたハイヤーの運転手さんはご自分が普段使っている簡体字で書いた紙を持って来ていたようでした。
相手の立場になって考えていますか?思い込みですれ違い寸前。
日本語の「大澤」は中国語の繁体字だと「大澤」となります。これが簡体字だと「大泽」に変わります。双方勝手に自分の都合の良い字体で思い込みをしていました。
上海虹橋国際空港の到着ロビーを出たところでは大勢の出迎えの人たちが集まっていました。
さて、「大澤」って書いてある紙はあるかな?あれっ?その中に「大澤」と書かれてた紙を持っている人がいないみたい…
何度みても「大澤」の文字はない!この時点でもうパニック状態です!!
このままでは異国の地で路頭に迷う羽目になる。落ち着け!落ち着くんだ、自分!
もう一度出迎えの人たちを端からゆっくりと眺めていきました、その中に「大泽」と書かれたA4の赤い紙を持っている人が目の中に入ってきました。
でもどうみても普段着姿の中年のおじさんです。日本のハイヤー運転手とはかなり違うスタイル。「大」の字は同じだ、たとえ違っていたとしても聞くしかありません。
中国語はおろかカタコト英語も話せないのになんて尋ねる?泊まるホテルは昆山ホテル、でもそのまま日本語読みで言っても通じるのか?
動揺しながらも出発前に同僚から辛うじて教わった読み方で聞くしかありません。
恐る恐る「大泽」と書かれた紙を持っていた人に近づき、昆山宾馆(コンサンピンカン)?と聞いてみました。
すると、うなずくではありませんか。あー良かったと思う反面、騙されて違う場所に連れて行かれたらどうする?なんていう思いも頭の中を過ります。だけれども… 自分はこの人に賭けることにしました。
その人は自分が持っていた荷物をサッと手にすると足早に駐車場の方向に歩き出しました。慌てて後を追う自分。頭の中ではこのまま撒かれて盗まれるのか?大丈夫か?と思考がぐるぐるしている自分。
駐車場に駐めてある黒いハイヤーにたどり着くと、すかざす荷物をトランクに入れていました。やはり、運転手さんのようです。ドアを開けて「乗れ」と言わんばかりに顎で指している。
本当に大丈夫かな!?っと思いつつも従うしかない自分。疑心暗鬼のなか、運転手さんとは一言も言葉を交わさないまま一時間ほどのドライブ、そしてめでたく昆山ホテルに到着。何事もなく車から降ろされて、ホテルのロビーへ向かいました。そこで先に現地入りしていた同僚と合流できました。一安心。でも本当に怖かったですわ~
こうやって海外出張のスキルが上がっていくのでしょうね。
さぁ、次はどこへ行かされるのやら、私の試練は続くのでした。