ハイブリッド車に搭載される高電圧(数百V)入力・低電圧(12V系)出力のDC-DCコンバータは、入出力共にダイナミックに変動する過酷な条件下での動作を強いられる。試験評価にも慎重さが必要だ。

自動車電装 KIKUSUI mag

複数の入出力を一括連動して制御

掲載日-2021年8月 ※記事は当時の掲載日をご確認ください。現在の製品情報や価格、技術についての最新情報ではない可能性があります。ご了承ください。

ハイブリッド車に搭載される高電圧(数百V)入力・低電圧(12V系)出力のDC-DCコンバータは、入出力共にダイナミックに変動する過酷な条件下での動作を強いられる。試験評価にも慎重さが必要だ。

HEVの12V系電力供給

ハイブリッド車にはモータ駆動用の高電圧と他の電装品のための低電圧(12V系)が混在していますね。

<新垣>ハイブリッド車両は駆動モータなどの強電系用に高電圧電池を搭載しており、他の電装品用には強電系からDC-DCコンバータでダウンコンバートして電力を供給します。EVでも弱電系用の発電システムが廃止される方向にあるためハイパワーのコンバータが必要になります。
(ストロング)ハイブリッド車の場合、高電圧バッテリの電圧は300V〜400V程度あり、これをDC-DCコンバータで12Vに落とし込みます。12V系は(低圧の)バッテリを含めて電装品の用途や重要度に合わせて複数のラインがありますのでコンバータは出力を複数持っているのが普通です。

ハイブリッド車両

入力も出力もめまぐるしく変動

車載用DC-DCコンバータ特有の事情があるのですか

<吉川>ハイブリッド車両のDC-DCコンバータはハイパワーで降圧比も大きい部類に入りますが、電気的な動作環境、具体的に言うと入出力条件が非常に厳しいという点で一般の電気機器用のコンバータとは性格が異なっています。

一般電気機器用コンバータの場合、入力と負荷は静的と言いますか概ね定まっていて、設計もそれらの上限下限を考慮すれば済みます。現実の評価においては入力を定格の範囲で振ったときの出力変動即ちラインレギュレーションと、負荷のオンオフに伴う変動いわゆるロードレギュレーションのチェックで済みます。

これに対してハイブリッド車では、コンバータの入力となる高圧ラインには駆動モータなどがつながっているためラインの電圧は動的であって、かなりダイナミックに変動します。その一方で負荷側も多数の電装品がつながっておりクルマの動作状態によって様々なパターンでめまぐるしく変動します。このようにハイブリッド車用のDC-DCコンバータは入力も出力も大きく変動する中で所望の動作が確保されることが絶対条件なんです。当然ながら評価・測定にもそれへの対応が求められます。

<新垣>もう少し具体的に言うと、他の一般的なコンバータや電源のテストでは、安定化電源で入力を固定しておき、出力に電子負荷をつないで様々なパターンで変化させて出力の電圧変動をチェックした後に、負荷を固定した状態で入力の電圧を変えて出力変動を測定したりするというのが一般的です。

電源と電子負荷のそれぞれをコンピュータから操作するのはさほど難しいことでは無く、当社も計測用電源や負荷装置のリーディングメーカとして電源と負荷を単体あるいは両者とそれぞれの制御ソフトをラックに組み込んだシステムを多数供給してきました。
ではあるのですが、それらは車載用DC-DCコンバータ特有の事情は考慮されていませんでした。

今回我々がHEV搭載DC-DCコンバータ評価ソリューションとして御提案しているシステムは、これまでのような単体の組み合わせ(ただけのシステム)ではありません。主要な構成要素として安定化電源と電子負荷が置かれていることに変わりはありませんが、複数の入出力を一括かつ連動して同時に制御できるように工夫し、専用の制御パネルとソフトウエアを組み込んだ点がポイントなんです。

実車に合わせた入出力の実現

電源と電子負荷が一括連動するメリットは何ですか。

<新垣>一言で言えば、HEV搭載DC-DCコンバータテストに求められる多様な試験条件に対応できることです。まず、本システムではHEV搭載DC-DCコンバータの実情に合わせて電源は(500V/32A)2系統、負荷は3系統まで、さらにコンバータ制御用の電源も組み合わせできるようにしてあります。電源は高電圧のPATシリーズを、負荷はPLZシリーズを使うので、パワーバリエーションは豊富です。

ポイントとなる電源と電子負荷の一括連動ですが、我々は入力2系統出力3系統を一括コントロールできるコントローラとソフトウェアを専用に開発しました。具体的には入力と出力の状態変化を一つのタイムテーブル上で設定し、制御のタイミングを同期させます。これによって入力と出力も特定のタイミングで変動した場合のシミュレーションをも可能にしました。

<吉川>お客様は基本的に実車におけるDC-DCコンバータの動作を検証確認したいわけで、例えば、「入力がストンと低下するのと同時に負荷が急に重くなったらどうか過渡的な応答を知る」ですとか「入力電圧の上昇中に特定の負荷が外れたらどんなことが起こるのか検証する」といったことができるわけです
本システムではアナログで電源と負荷に制御信号を送りますが、データは10ms毎に設定更新されます。さらに制御信号のズレは4ms以内を保証していますので同期性は十分に担保されます。

<新垣>少し話が逸れるかもしれませんが、本システムは500V近い高圧を扱う装置でもあるため、インターロックなどの安全機能も充実させています。

クルマの世界ではこれまで専ら12Vの低圧ラインが使われてきたため、お客様側に高圧の安全に対するノウハウの蓄積がありません。これに対して弊社は耐圧試験器を始め高圧回路の技術とノウハウの十分な蓄積があります。実際に、本システムでは出力端子回りの保護や配線などにもコストをかけています。こうした部分も含めたトータルなソリューションシステムだと自負しています。

システム

執筆者: 菊水電子工業株式会社

計測と電源のエキスパート・カンパニー 菊水電子工業のスタッフによる執筆です。

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