KIKUSUI mag コラム

アイデア勝負

世の中には優れたアイデアを出して大きな成果を上げる人がいます。自分もそうありたいと憧れつつも、そうそう思う様な自分にはなれないものです。自分が間近で見聞きして素晴らしいと感じたアイデアの事例と、そうありたいと思っている自分が担当したある業務の事例を紹介します。
投稿日-2023年3月

 

世の中には優れたアイデアを出して大きな成果を上げる人がいます。自分もそうありたいと憧れつつも、そうそう思う様な自分にはなれないものです。
自分が間近で見聞きして素晴らしいと感じたアイデアの事例と、そうありたいと思っている自分が担当したある業務の事例を紹介します。

ある知り合い夫人のアイデア

今から20年ほど前、私の妻は子供服を扱う仕事をしていました。シーズン毎に新しいデザインの子供服が店に並ぶのですが、シーズンが過ぎ売れ残った服は廃棄されるのが慣例となっていました。

妻はこの廃棄される服の事を、妻が子供の頃から付き合いのあるタイ人の夫人(ご主人が日本人)に話したところ、「捨てるのであればタイの自分のところに送ってくれないか。」という話になり、それからは毎回廃棄する服を送るようになりました。

夫人は妻から送られた服をどうしたかというと、なんと知り合いのセレブなマダム友達に高い値段で売っている、という事でした。なんでも日本で売られている服は丈夫で品質が良い為、セレブなマダムたちは高い値段でも喜んで買ってくれるのだそうです。

しかしこれだと何だかチャッカリしたオバさんの話でしかありませんが、この夫人の動きには続きがありました。そうして得たお金で現地の低価格な子供服を大量に買い込み、身寄りのない子供達の施設に寄付している、というのです。

素晴らしいアイデアだと思いました。この夫人と廃棄されていた筈の子供服に関わった全ての人が皆、誰も損する事なくハッピーに話が納まっています。(夫人の無償の働きあっての、ですが)
このようなアイデアを思いつき、実行してしまう人がいるのだと感心してしまいました。

ラスベガスで観たショーの前座アイデア

これも同じく20年近く前、夫婦でラスベガスに旅行し、あるアーティストのショーを観に行った時の事。

ショーの会場はステージと客席が向い合せで、客席はステージから離れるにしたがって階段状に上がっていくためどの席からもステージは見やすい構造で、約4000席という事でした。
ステージの背後にはステージ幅程の映画館よりも大きなスクリーンが設置されていました。開場され着席した時には、そのスクリーンにはステージ側からの固定カメラで丁度鏡写しの様に客席をリアルタイムで映しており、時間とともにまばらだった客席が徐々に埋まっていく様子がわかりました。

客席が9割方埋まった辺りでずっと固定されていた客席に向けたカメラ映像が突如サーチライトの様に客席を上下左右に動き出し、そして客席のあるカップルをスクリーンにアップで映し出しました。
カップルは映されている事に気付き手を振り返します。日本だとここまでですがそこはアメリカ、続けてキスまでしてしまいます。その様子を見た観客からは拍手と歓声。するとカメラはそのカップルのアップから離れて新たに客席をサーチし始め、別のカップルをアップ。その二人もキス→拍手と歓声、その次も、またその次も。
こうして「お約束」の流れが出来たところで次にアップにされたのは男性二人組。

「オイ冗談だろ、勘弁してくれよ。」的なジェスチャーで拒否をアピールするも、4000人の観客の終わらない「お約束」要求の歓声に観念し渋々・・・。
その瞬間、会場は完全に一体になりこの日一番の大歓声。そしてカメラが不貞腐れた態度の二人を置き去りにして狙った次のアップのターゲットは、これまでの洒落たカップルとは違った、それぞれがかなり特徴的なビジュアルを持った2人。
スクリーンにアップになると会場は「見たくない!」とばかりに容赦のない大ブーイング。一般客に対してかなり辛辣なアクションですが本人達は気にせず「お約束」を実行に移そうとします。

顔が近づくにつれブーイングの音量は増していき、二人の顔が触れ合う直前にスッとカメラがアップを二人から逸らし、「その瞬間」をスクリーン映像から逃がしたのです。
このカメラワークに対して会場は先程を超える大、大歓声が上がりました。会場の上がりすぎたVOLTAGEを下げる為か、また洒落たカップル2,3組を周ったところで会場はゆっくりと暗転、ステージにスポットライトが当たり主役が登場、ショーの始まりとなりました。

さて長々と描写しましたが、一流のパフォーマーが何かをする訳でも、お金をかけた派手な演出がある訳でもなく、客席を映していた、たった1台のカメラのカメラワークだけで4000人の観客の目をステージに注目させ、楽しませて会場の一体感を作った上で主役を迎え入れるというその前座のアイデアがとても鮮やかだと感じました。

私の場合

先の例のような非凡な人々から生み出される優れたアイデアに簡単に感化される凡人の私も、自分発のアイデアであらゆる場面の課題やテーマを解決できたら、と常々思っています。

開発時代、あるインバーターの設計担当になった事があり、実現する為にはクリアしなければならない課題がいくつかありました。
そのうちの一つが高電力密度(≒高効率)である事。なかなか厳しい要求でしたが、パワー半導体に高効率動作が期待できるSiC MOSFETを採用する事が許される状況ではありました。

しかしSiC MOSFETは当時まだまだ高価で、たとえ高効率性能が達成できても、それは設計者の力によるものとはいえず面白くないところであり、逆にアイデアでひっくり返すチャンスであるともいえます。

それから過去の社内のインバータ回路や、近年の電源回路を眺めている中でSiC MOSFETを使わずに高効率を実現する回路的な工夫の余地がある事に気が付きました。
この「回路的な工夫」はSiCに比べて低コストで実験結果も良好。従来の製品に使われたインバータ回路に比べて効率は3%程高く、高電力密度の要求を満足する事ができました。

このまま万事順調にと願う所ですが、やはり問題は起こります。検証を進めて行くと、ある動作モードの時に温度的にNGとなる部品が出てきました。
色々対策を考え試しましたが解決に至らず、そしてSiCを使わない現状の回路はMOS以外の追加部品が多いためメイン電流通路の基板パターンが理想的ではなくEMC的に不利で、信頼性も劣ると言った短所も併せ持っていました。逆にSiCの価格は今後安価になっていく事は確実で、もはやSiCを選択しない理由がなくなり、結局SiC MOSFET実装にてインバーターは完成。

凡人の猿知恵は最先端の高性能部品を超える事は出来ませんでした。残念ですがそれでは最初からSiCを選べば良かったか、となるとはやはりそうは考えたくありません。誰もが入手できる部品で得られた性能は、その部品で他者も同様の性能を得る事ができるからです。
(そこは割り切って、他のところで知恵を絞るというのであっても勿論良いと思っています。)

やはりアイデア勝負あってこそ、この気持ちが枯れないうちはまともに働いていられるかな、と思っています。

M.M

執筆者: M.M

SE課

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