直流安定化電源の装備機能
実験や製造・検査などに使用される出力可変型直流安定化電源の一般的な装備機能を以下に説明します。 なお、電源を実際に使用する際には必ず付属の取扱説明書を熟読いただきますようお願いいたします。
- 過熱保護回路
- 温度ヒューズ
- 入力ヒューズ、出力ヒューズ
- 外部接点による入力遮断
- 電圧計・電流計
出力している電圧・電流の値を表示します。現在はLEDなどを使用したデジタル表示方式が主流です。 - 電圧設定つまみ・電流設定つまみ
出力電圧値・電流値の設定に使用します。つまみの回転回数として0〜FS(フルスケール:最大定格)の連続可変を1回転でおこなうものの他、より細かな設定が可能な10回転方式(ポテンショメータ)もあります。また、ロータリエンコーダなどを使用したデジタル式の設定方法もあります。 - 電圧/電流リミット設定スイッチ
負荷の保護等のために電圧/電流の出力制限値の設定に使用します。 - 電源ON/OFFスイッチ
電源のON/OFFをおこなうスイッチです。 - 出力ON/OFFスイッチ
出力のON/OFFをおこなうスイッチです。 - 出力端子
出力を取り出すための端子です。端子にはバインディングポストを使用し、プラス端子を赤、マイナス端子を白ないしは黒としている例が多いようです。プラスとマイナスの端子の中間にある端子はグランド(コモン)端子で、付属するジャンパでプラス端子またはマイナス端子と接続することで、極性を変えることができます。なお、ジャンパを接続せずフローティングでの使用もできます。また、出力容量の大きなもの(高電圧または大電流)はバインディングポストではなく本体背面に大型の端子台を設けている場合もあります。 - 外部アナログ・リモートコントロール(I/O)端子
出力電圧値・電流値の設定を外部電圧ないしは抵抗で、出力ON/OFFを外部接点信号でそれぞれ制御することができます。他の機器との連動や遠隔操作に利用します。またワンコントロール(マスタ・スレーブ)直列運転、並列運転の際に使用する端子や電圧値・電流値モニタ用出力端子等が装備されていることもあります。 - リモートセンシング端子
負荷までの配線が長い場合、線材の抵抗分のために負荷端での電圧値が、出力設定値よりも低くなってしまう場合があります。このような時に電源内部の検出比較回路にフィードバックする電圧検出位置を出力端でなく負荷端に移動することで、電圧降下分を補償することができます(片側の電圧補償範囲は製品によって異なります。詳細は別途カタログ等でご確認ください)。これをリモートセンシングといいます。 リモートセンシング端子はこの電圧フィードバック用信号の入力に使用します。 - ACインレット
交流電源の入力用インレットです。ここに電源ケーブルを差し込んで使用します。入力電流値が大きい製品の場合は、大型の端子台に圧着端子付ケーブルで接続する方法をとっている場合もあります。
直流安定化電源の用語
直流安定化電源のカタログなどに使われる用語の主なものの解説を以下にあげます。ご参考になれば幸いです。
定電圧モードと定電流モード
直流安定化電源には負荷が変化しても出力電圧が変化しない状態と、負荷が変化しても出力電流が変化しない状態があり、前者を定電圧モード、後者を定電流モードといいます。なお、英語表記の頭文字を取って、定電圧をCV(=Constant Voltage)、定電流をCC(= Constant Current)と呼ぶこともあります。
定電圧動作
安定化電源の出力は電圧〔単位:ボルト〕と電流〔単位:アンペア〕の2種類の量で表わされますが、このうちの電圧に着目して負荷の値に関係なく設定された電圧を一定に保つ動作を定電圧動作と呼びます。
例えば今、出力電圧Eoが10Vの時、負荷RLとして10Ωを接続した場合、出力電流Ioはオームの法則によりIo=Eo/RL=10V/10Ω=1A流れます。負荷が1Ωの時はIo=10A,0.1Ωの時はIo=100A流して出力電圧10Vを保持しようとします。この様に動作するものを定電圧源といい乾電池やバッテリなどがこれにほぼ相当します。
実際の定電圧電源では出力容量に限りがある為いくらでも電流を流すことはできず、ある電流値で制限されます(当社の製品はこの電流制限値を電流設定ツマミで任意に設定できます)。出力電流が制限されると出力電圧が低下しC.Vランプが消えCCランプが点灯します。さらに負荷抵抗を小さくしてついには短絡しても出力電流は設定された値を越えることはありません(定電流特性)。
《図-8》
安定化電源はこの様に定電圧動作から定電流動作へ自動的に移行して負荷に過電流が流れるのを防ぐことができます(CV/CCオートマチック・クロスオーバ方式)。 (図-8)に動作領域に負荷線を書きこんで、動作点を示します。
出力電圧Eo=10V、電流制限2Aに設定した場合無負荷ではA点に動作点があります。RL=10ΩではB点5ΩではC点と定電圧領域を移動します。さらに負荷抵抗を小さく5Ω→3.3Ωにすると動作点はC点からD点へと移動して定電流領域に入ります(C点をクロスオーバ・ポイントと呼びます)。負荷抵抗RL=3.3Ωの時、出力電圧Eo=Io×RL=2A×3.3Ω=6.6Vとなります。さらに抵抗を小さくして短絡すると動作点はE点に達します。
定電流動作
安定化電源の出力は電圧〔単位:ボルト〕と電流〔単位:アンペア〕の2種類の量で表わされますが、このうちの電流に着目して、負荷の値に関係なく設定された電流を一定に保つ動作を定電流動作と呼びます。
例えば今、出力電流を2Aに設定した定電流電源に負荷RLとして3.3Ωを接続した場合、出力電圧Eoはオームの法則によりEo=Io×RL=2A×3.3Ω=6.6Vになります。負荷が5Ωの時10V、10Ωの時20Vと負荷が大きくなれば出力電圧を増大させて、設定電流値2Aを供給し続けようと動作します。実際の定電流電源では出力電圧はいくらでも上昇させることはできず、ある値で制限されます(当社の製品はこの値を電圧設定ツマミで任意に設定できます)。 この特性を(図-8)に示します。
出力定電流値を2A、制限される電圧を10Vに設定して負荷RL=3.3Ωを接続すると動作点はD点になります。抵抗値を大きくしてRL=5ΩにするとD点からC点へ移動します。さらに抵抗値を大きくしてRL=10Ωにすると動作点はC点からB点へと移動して定電圧領域に入り出力電流が減少します(定電流動作でなくなる)。
さらにRLを大きくしてついには開放にすると動作点はB→A点へ移動して負荷に対して電圧設定値10V以上の電圧印加を防ぎます(この様に定電流動作から定電圧動作へと自動的に移行して負荷を保護することができます)。(図-8)の動作点Cをクロスオーバ・ポイントと呼びます。
出力電圧安定度(定電圧動作時)
- 電源変動:
交流入力電圧の±10%(AC90〜110V)の変動に対する、出力電圧の変動値。 - 負荷変動:
負荷状態が0〜100%(無負荷から全負荷)に変わった時の出力電圧の変動値。(ただし、過渡的は含まない)
出力電流安定度(定電流動作時)
- 電源変動:
交流入力電圧の±10%(AC90〜110V)の変動に対する、出力電流の変動値。 - 負荷変動:
出力短絡状態(電圧0V)から最大定格出力電圧までの負荷の変動に対する出力電流の変動値。
リップル・ノイズ
- リップル:
出力に重畳している脈流分をリップルといい、周波数成分としては交流入力周波数、及びその整数倍になります。 - ノイズ:
出力に乗っているランダムな雑音成分をいいます。当社では5Hz〜1MHzまでのリップル及びノイズを合わせてリップル・ノイズといっています。表示方法としてrms(実効値)とp−p(ピークトゥピーク)があります。
《図-9》リップル・ノイズ
過渡応答回復時間(定電圧動作時)
負荷状態の急変時、出力電圧が初期設定値に復帰するまでの応答時間を言います。単に「過渡応答」と言うこともあります。
《図-10》過渡応答回復時間
立上り時間/立下り時間
出力のON/OFF時に、出力電圧もしくは出力電流が、変化量(0Vから設定値)の10%から90%に至るまでの応答時間を「立上り時間」、そして逆に90%から10%に至るまでを「立下り時間」と言います。単に「立上り」、「立下り」と言うこともあります。
《図-11》立上り時間/立下り時間
対接地電圧
ケースと出力端子間は絶縁されています。その耐圧が対接地電圧です。電源を数台直列運転する時に、その最大出力電圧の和が対接地電圧を越える時は感電の恐れもあり危険です。(例えば、出力最大定格500Vで対接地電圧が±500Vの電源は2台の直列運転はできません。)
温度係数
周囲温度1℃の変化により起こる出力の変化量。 例えば、温度係数50ppm/℃の電源では、周囲温度が5℃変わった時、出力電圧×50×10-6×5となります。