私は「照明」が大好きだ。 子供の頃、模型少年(プラモ、鉄道模型)だったので いろいろな模型に豆球を仕込んで遊んでいた。 部屋を真っ暗にして、模型の小さな窓から 漏れる光とそれが作る陰影を眺めて悦に浸っていた。 最近ではL […]

コーヒーブレイク コラム

[番外編]スマートIoT照明格闘記 〜新本社エントランスに「Philips Hue」を採用してみた〜

掲載日-2017年6月 ※記事は当時の掲載日をご確認ください。現在の製品情報や価格、技術についての最新情報ではない可能性があります。ご了承ください。

私は「照明」が大好きだ。
子供の頃、模型少年(プラモ、鉄道模型)だったので
いろいろな模型に豆球を仕込んで遊んでいた。
部屋を真っ暗にして、模型の小さな窓から
漏れる光とそれが作る陰影を眺めて悦に浸っていた。

最近ではLEDの実用化が進んで、
従来方式では出来なかったような場所への取り付けや
様々な演出効果が可能になっている。
プロアーティストのライブステージなどで使われる
「ムービングライト」なども劇的な進化を遂げており
びっくりするような幻想的な演出がされている。
なので、生唄と演奏を聴くのと同じくらい
照明演出を見ることが最近のライブの楽しみだ。

私は展示会装飾も担当しており
ブースには必ず何らかの照明効果を加えるようにしている。
(というか、どうしても入れ込みたいのだ・・・)
特に好みとしては「間接照明」。
光源を露出させたインパクトも面白いのだが
物陰から漏れたり、壁面に反射して見える
「ふわっ」とした光の幻想感が大好物だ。

今回の当社の本社組織移転を聞きつけたとき
インテリアの演出ができたら面白いだろうと思った。
そこで実務担当者に詳細を尋ねてみると、
今回は準備期間が短いのと賃貸物件なので制約事項が多く
あまり凝ったことはできない。
しかしエントランススペース(玄関)については、
面積は小さいが、天井、壁、床の改装の自由度は高いとのこと。

ならば、ぜひエントランスだけでも
提案させて欲しいと申し出たところ
営業開始日までに施工完了できることを条件に
了解をいただくことができた。
しかしこの時に残された時間は約1.5ヶ月。
通常であれば、デザインコンペをして云々だろうが
そんな悠長なことはしていられない。

あらかじめ「ここはイケるんじゃないか!?」と思っていた
デザイン会社さんにコンタクトを取り、事情を説明。
かなり無茶な要求であったが、請けていただけることになった。
早速、私の希望・意図を伝え、デザイン案を作成してもらうことにした。
普通ならここで「会社としての希望・意図」をまとめるところだが
もう社内の根回しをしている余裕はない。
30年近く、この会社で広告宣伝業務を担ってきた
自分の経験と勘を信じての「一発勝負」しかなかろう。
ほどなく提出されたプランは「予想以上の出来栄え」だったので
そのまま社長に速攻プレゼン。一発OKをいただくことができた。
よかった・・・。

デザイン会社さんに伝えた要求は2点。
「スタイリッシュ」と「可変できる照明演出」。

歴史の長い企業=重厚感などとしてしまうと
ややもすると「古臭い」感じになってしまうので
時間の中で洗練されて研ぎ澄まされた刀のように
クリアで無駄がない上品さ(=スタイリッシュ)を
コンセプトにしようと思った。

それと「お守」の面倒さがないこと。
玄関は、観葉植物や絵画、
最近なら映像演出(デジタルサイネージ)などで飾る例が多いが、
それらの難点は「メンテナンス」。
最初はいいが、植物は枯葉が落ちるし、
絵画や映像は「飽き」が来るので定期的な更新が必要。
なので、自由に可変できる光を使うことで
「メンテナンス性」と「飽き」を解決できるだろうと。

ということで、完成したエントランスが下記である。

壁面を斜めに走っている光が
スマートIoT照明「Philips Hue」のライトリボンである。
合計6本が配置されている。
6本は独立しているので、各々別の色に設定することもできる。

制御はPhilips社の純正アプリ(iOS版)を使っているが
いまのところ、1時間毎に色を変える程度でセットしている。
色を個別にめまぐるしく変えると下品な感じになると思うので。

さらに、
ハロウィンなら「オレンジとパープル」
クリスマスなら「グリーンとレッド」
新年なら「ホワイトとレッド」
などといった季節のイメージを色の組み合わせで表現することもできそうだ。
たかが照明の色なのだが、これは楽しい。

「Philips Hue」は2013年に発売されたLED照明。
発売当時は「ネットにつながる照明器具」として話題になったが
「それで、どう使うの?」という感じであったと思う。
確かに「ネットにつながる」だけに着目すると、「だから何?」なのだが
この照明器具のユニークさは「色相」の自由な制御だ。
従来、一般家庭向けには、そういった照明器具はほとんどなく
用途に応じた演色性を持つ電球や蛍光灯を固定的に選ぶしかなかった。
色を変えたければ、光源を交換するしかない。

またHueは、ランプ部とその制御部(ブリッジ)から構成されるが
その間の通信は「ZigBee(ジグビー)」という無線規格を使っている。
Wikipediaで調べると、その特徴として

・転送可能距離が短く転送速度も非常に低速
・しかしその代わりに、安価で消費電力が少ない
・構成するネットワークはメッシュ型またはツリー型になる
・端末にRouter機能を内蔵することでデータの中継が可能
・なので、制御部の電波が直接届かない端末間でも端末自身を中継機にして通信が可能
・この機能を使えば一部の端末が停止した場合にも、迂回経路を使って通信を継続できる

とある。

Hueのランプ部はRouter機能を内蔵しているので、
制御部(ブリッジ)から離れた部屋にあるランプでも
その途中(別の部屋、廊下など)で適切にランプを置くことで
それが中継機になって繋がることができるわけだ。

ここまでは絶賛のHueだが、実は設定にあたってはかなり難渋した。
問題の原因は、ランプを設置したエントランスには
ブリッジ(制御部)のためのACコンセントと有線LANの口がないということ。
仕方ないので、ブリッジの置き場所を探して
エントランスに近い会議室や倉庫で試してみたが
無線(ZigBee)が切れてしまう。
ランプのデフォルト色(白熱電球色)は変更できないので、
電源を再投入したときはブリッジでの制御が必要。
また、ブリッジもオンライン(常時ネット接続)にしておかないと
時間制御(ルーチン制御)ができなくなってしまう。

散々試行錯誤した結果、落ち着いた場所は
エントランスの真裏にあるパントリースペース。
ここなら隔てるものが壁一枚なので
ZigBeeも通るし、ACコンセントもある。
ただ有線LANの口がパントリースペースにはないので(そりゃそうだ)、
ここは仕方なく、有線LAN用無線LAN子機というアダプターを
ブリッジに繋げて無線化し、既存のwifiルーターに接続することで切り抜けた。

できれば、ブリッジはwifi対応にして欲しい。
またスタンドアローンでも時間管理出来て欲しい。
Philipsさんに、その点は今後の改良を期待したい。

ということで、なんのオチもないのだが
前々から(照明フリークとして)気になっていた
Philips Hueを実際に使う機会を得たので
その使用レビューを「番外編」として当コラムに掲載することにした。

というのは、試行錯誤の中で、Hueに関してググった時に
意外と日本語による実体験情報が少なく、結局自力でもがくしかなかったからで
今回のわたしの経験が誰かの役に立つ時があれば、幸甚である。

執筆者: 藤川

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