コーヒーブレイク コラム

長寿社会の設計図 〜地盤があってもまだ上物がない〜

年末年始の長い休みは、いろいろな意味で 仕切り直し、棚卸しの好機である。 日々の忙しさにかまけて、 そのうちやろうと半ば放置していたことを片付けたり、 逆に気になっていたことに手を伸ばすのがいい。 私の恒例は「積読(つん […]
投稿日-2018年1月

 

年末年始の長い休みは、いろいろな意味で
仕切り直し、棚卸しの好機である。
日々の忙しさにかまけて、
そのうちやろうと半ば放置していたことを片付けたり、
逆に気になっていたことに手を伸ばすのがいい。

私の恒例は「積読(つんどく)」の解消。
積読には、読まずに買って置いてあるだけでも
それなりの効用があるというが(「プライミング効果」というそうだ)
奥の方に埋もれてしまい「死蔵」状態になると
もはやそれは単なるゴミだ。

今回は、その積読解消の中から
面白いと思った本を紹介したい。

さて、ここ数年の私的関心事は「老い」。
個人的のみならず社会問題としての「超高齢化」に
誰もが関心を持たざるをえない状況にあろう。
とくにカウントダウンタイマーの目盛りが
またひとつ「カチッ」と減る正月は、老いの影が目に入る。
一休和尚曰く「門松は冥土の旅の一里塚」。これは慧眼だ。

昨年「人生の出口戦略」というトピックを上げた。
様々な形で老後対策が語られるが、
それらの多くは「災害対策マニュアル」ではないかと。
「老いは災禍である」を暗黙の前提にしている。
老いは望ましくないこと、避けたいこと。
否が応でも万人が経験せざるをえないこと。
しかし人も生き物。つまり自然物の一部とするなら
(自然)災害の一種と見ることも、
あながち間違いではない気もする。
老いはもはや「リスク」扱いだ。

だが理屈は理解できても
「対策マニュアル」はどう読んでも楽しくない。
年金がどうだとか、保険がどうだとか、相続がどうだとか・・・
実用知識として有益なことではあっても
読むほどに出るは「ため息」ばかり。
かといって「起きないことにして無視」もできない。
誠に困ったことではある。

「対策マニュアル」は「備え=安心」にはなるが
いくら読んでも「生きる指針」ましてや「希望」にはならない。
何かのときに損をしない、上手くやり過ごすためにどうするか
という最低限の話である。
(くどいようだが、だから無意味だという意図はない)
私の理想は、人生の終盤戦が「無難な消化試合」ではなく、
最終回まで勝敗がもつれ込むような「希望」で
満たされる日々になることである。

一方、全ての希望を叶えて思い残すことなく
最後の日を迎えることが理想のように思われることもある。
しかし自死でもしない限り、自分の死期にあわせて
希望残高ゼロ(希望成就率100%)にすることはできまい。
逆に最も避けたい状態は、希望残高ゼロのままで死を長く待つこと。
希望を持つこと自体は容易いが(思えばいいだけだから)
「その気になっている希望」が「いつもある」
というのが重要なのではないか。

お金、健康、人間関係等のHOWTOは、
希望を持つ気になるための基礎地盤(必要条件)。
「対策マニュアル」は地盤改良みたいなものかもしれない。
しかし上物(希望)の設計図はそこにない・・・。
日本の長寿社会の設計図には、地盤があってもまだ上物がないのだ。
私が見たい(欲しい)のは上物(希望)の画だ。

ということで、そのためにはどうしたらいい?
その設計図を描く参考になるかもしれないと思った3冊が以下である。

LIFE SHIFT
100年時代の人生戦略
リンダ グラットン (著)、 アンドリュー スコット (著)、 池村 千秋 (翻訳)
東洋経済新報社刊

この本は2016年発行であるが、いまだに売れ続けているようだ。
これからは人生100年時代になる。
となると今までの「22年間の教育→40年間の仕事→15年間の引退」という
3ステージの人生設計の延長では、「引退期」が長すぎる。
現状の「超高齢問題」はここに集約できる。
そしてその解決はマルチステージ、
つまり「生涯学習、生涯現役」をいかに構築するかだと。

翻訳モノの常で、回りくどい表現や
日本人にはピンと来ない事例や例え話など
読みにくい、退屈な部分が多々あるが
内容としては非常に示唆に富んでおり、
頑張ってでも読む価値はある。

本の帯にこうある。
こんな生き方をしてはいけない!
卒業後すぐに就職し、ずっと同じ会社で働こうとする。
永続する企業を目標に起業し、すべてを仕事に捧げる。
休日をレクリエーション(娯楽)にあてる。

これに「ドキッ、私のこと?」と思ったあなたは読むべきだ。

幸福の「資本」論
あなたの未来を決める「3つの資本」と「8つの人生パターン」
橘 玲 (著)
ダイヤモンド社刊

この著者との最初の出会いは
『世界にひとつしかない「黄金の人生設計」』という本。
経済的独立を得るための指南書(HOWTO)であったが、
この本で、根拠のない「常識」や「普通」に流される愚行に
気づかされて以来、注目してきた著者の近著が
『幸福の「資本」論』である。

読むとわかるが、ベースにある思考は「LIFE SHIFT」とよく似ている。
これからはこれまでの人生設計(モデル)が通用しないので
幸福の土台となる「3つの資本(金融、人的、社会)」のポートフォリオを
(「LIFE SHIFT」では有形資産・、無形資産と表現している)
自分が望む人生パターンによって「組み替える」必要があるという主張だ。

超充、リア充、旦那、金持ち、退職者、ソロ充、プア充、貧困。
これからしばらく、人生パターンはこの8つがあるだろうと。
80年代のバブル期に「金魂巻(きんこんかん)」という
当時の人気職業を「マルビ(貧乏)とマル金(成金)」という分類で
パロディ化し解説するエッセイ?のような本があったが
それを彷彿させるものがあり、なかなか興味深い。

こちらは日本人の著作なので
「LIFE SHIFT」よりも親近感を持って読めると思う。
先に読むなら、こちらの方がいいかもしれない。

傘寿まり子(1)〜(5)
おざわゆき (著)
講談社

3冊目は漫画である。実はこれは「積読」ではなく
昨年暮れに、Kindle版の1巻目が無料購読で
かつ表紙の妙に可愛らしいおばあちゃんのイラストが気になり、
(熟女趣味はありませんが)
「無料なら」と読んみたら・・・これが意外と面白かった。

内容紹介文はこうなっている。
ベテラン作家の幸田まり子は自分の家で息子夫婦、孫夫婦との間で住居問題が勃発。
老人の自分には居場所がないことを感じ一人家出を決意。
街中のネットカフェで暮らし始めるが・・・・・・?

この主人公、幸田まり子はなんと80歳(傘寿)だ。
80歳がヒロインの漫画?
それが家出?ネットカフェで暮らし?
なんとも無茶な設定で面食らうが、
読み進めると「これはアリかも・・・」と思えてくる。
マンガチックであるが、妙なリアリティを感じる。

非現実的、こんな老人いるはずがない、ファンタジーだ、
というドライな感想もあるようだが、私はそうは思わない。
思考実験的であるが、これからは、こういったご老人が増えても不思議ではない。
そして彼らのために社会(価値観)はどうあって欲しいのかを
この漫画は示しているようにも思える。
私は好きだな、この漫画。

この作品は連載中なので、
しばらくの間、展開を楽しみにできそうである。

先の2冊は、どちらかというと「地盤改良」の延長で
地盤から家が描けるかもしれないという本。
漫画の方は、地盤はともかく「家のイメージ」を
膨らませてくれるような本(かなり破天荒だが)。

「お楽しみはこれからだ」。
1927年公開の世界初のトーキー(音声の出る映画)で
映画史上初めてのセリフとして有名になった一句である。
原文は、「Wait a minute! Wait a minute! You ain’t heard nothin’ yet!」
主人公のジャズシンガーが聴衆に向かって言う。
直訳すると「待ってくれ!待ってくれ!まだ何も聴いてないぜ!」。
その日本語字幕が「お楽しみ・・・」であった。これは名訳だ。

いくつになっても、「お楽しみはこれからだぜ」と
明日が、来週が、来月来年が楽しみになるような「希望(企て)」を持つ。
仮にそれを果たす前に死んでしまったとしても、それはそれでいい。
「ああ、明日が楽しみだ」と言いながらオサラバする。
多額の預金を残して亡くなると「愚かで無駄」と指弾する声はあるが
(当人もおそらく無念だろうし、相続はほとんど国に召し上げられるし・・・)
希望には残高上限がない、青天井だ。課税もない(^^)。

最後の日の財布の中身は
レシートやポイントカードではなく
「希望」でパンパンでありたいと思うのだ。

藤川

執筆者: 藤川

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