去年の秋あたりから忙しく、
「積ん読」のまま、本を読む気になれない日が続いた。
積ん読でも、無意識への刺激(プライミング効果)として
活用できるとは言われている。
なので全く無駄ではないらしいが、
実際読むに勝る効果はないだろう。
そんなわけで、私の新年の恒例は「積ん読解消」だ。
・成功はすべてコンセプトから始まる(木谷哲夫著)
・新・君主論 AI時代のビジネスリーダーの条件(木谷哲夫著)
・50歳からの時間の使い方(弘兼憲史著)
・100年マンション資産になる住まいの育てかた(長嶋修著)
・考えない練習(小池龍之介著)
・金持ち定年、貧乏定年(長尾義弘著)
・シリコンバレー式頭と心を整えるレッスン人生が豊かになるマインドフルライフ(木蔵シャフェ君子著)
ちょっと前はガチのビジネス書が多かったが
年齢とともに「終活見習い生」的な本も混じってきた・・・
そして、こんなハウトゥものをいまさら読んでどうなると思いながら
ジャケ買い(?)した本がこれだ。
学びを結果に変えるアウトプット大全
樺沢紫苑著/サンクチュアリ出版
去年買った本の帯には「10万部突破」とあったが
過日見た新聞広告には「35万部突破」になっていた。
結構売れているようだ。
これを「ジャケ買い」した理由は、アウトプットというキーワード。
過去から様々な知識の習得方法が提示されているが、
多くは「いかに早くたくさん吸収するか」に力点がある。
つまり「学び=インプット」という常識?に対して
真逆の着想がちょっと面白いと感じたから。
著者の樺沢氏は精神科医であり、自身の経験をもとに
学びを結果に変えるために有効な80の方法を紹介している。
内容はこんな感じだ。
・インプットとアウトプットの黄金比は3:7
・手に入れた情報は2週間で3回使うことで記憶する
・信頼関係は、「一度に長く話す」よりも「短い会話を何回も」
・ほめる・叱るは、「結果」でなく「行動」を評価
・「目標」ではなく「ビジョン」に人はついてくる
・ジョブズと太宰もやっていた、落書き創造法とは
・文章が3倍速で書ける、「設計図」のつくり方
・「ファーストチェス理論」の決断が、人生を変える
書名に「大全」とあるように、
構成は辞典的であり最初から順番に読む必要はない。
気になった記事を読むだけでも役立つようになっている。
辞典的な構成には良し悪しがあって、
体系的に(深く)知りたい人にとっては
散漫で内容が薄く感じるようである。
しかし、著者の狙いは、ヘビーな(知識意欲の高い)読書家ではなく
自己研鑽に芽生え始めた「若葉マークさん」や本嫌いの人の
背中を押す感じではないかと思う。
1テーマ=見開き2ページという基本構成は、
読書に不慣れな人にとっては
負担感が少ないはずので、私は良い構成だと思った。
と、本書を読み進めたらその狙いが書いてあった(P102)。
私の目利きも捨てたものじゃないようだ。
さて本書の趣旨はこのようなものだ。
「知ってる・わかってる」という人と
「やってみた・出来る」という人には想像以上の能力差がある。
多くの人は、見たり、聞くなどして得た知識を
脳内世界で留めて終わりにしてしまう(わかったつもり)。
だがそういった形でいくら蓄積しても、それは自己満足であって
自己成長、つまり結果(現実世界を変える力)には、なかなか繋がらない。
学んだ知識で結果を出したいのなら
話す、書く、行動するといった「アウトプット」を意識しろと。
しかも、学び(読む・聞く)を「インプット」とするなら
望ましいインプットとアウトプットの比は「3:7」だという。
知識は使えてナンボ、とは思っていたが
出す方が重要という認識はあまりなかったので
アウトプット7割は意外と大きいと感じた。
仕入高(イン)より納入高(アウト)が多いというのは
一見おかしな気がするが、現実世界では「当たり前」だろう。
企業活動で考えるなら、仕入高より納入高が高いということは
「付加価値」が大きいということになる。つまり「黒字(儲かる会社)」である。
また仕入高と納入高が同じなら「利益ゼロ」、
仕入高が納入高より大きなら「赤字」だ。
望ましいのは、言うまでもなく黒字だろう。
ここでの価値とは、現実世界での利益(役に立つ)に加えて
学びを自分のもの(より深い記憶)にできるという
両面で効用があるということ。
知識もお金のように、活用(価値変換)が大事ではないか。
せっせと「溜め込む」だけでは、読書時間は単なる浪費ではないのか。
言うなれば、知識にもメタボがあるということだろうか。
確かに、メタボはよろしくない。
なお、本書に記された方法はどれも
当たり前と思われることであったり、
自己啓発系の本をよく読む人なら既知の内容が多いだろう。
期待値を上げすぎると、肩透かしをくらうかもしれない。
しかし普通のことを普通に(愚直に)やるのは難しい。
程度が低い(=無意味)と思うと、心理的抵抗を感じてしまうもの。
「その通り(バカになって)やってみる」のハードルは案外高いということだ。
そういう点でもメタボ解消(ダイエット本)とよく似ている。
原則は食事制限と運動とわかっていても、いざやるとなると・・・
だからこういった本が売れるのだな。
もちろん、知的娯楽としての読書も、おおいにアリで
何でもかんでも実利(効用)を求めるのは、少々えげつない気もする。
しかし、仕事や勉学のための知識を身につける必要に迫られている場合は
この「学びをアウトプットする」という手法は、
自分の経験に照らしても有効だと感じる。
例えば家庭教師のアルバイト。
経験がある方なら分かると思うが、教えるには自分の理解が先。
自分の理解度は教える機会の数と比例する。
本書は「知識」を無形資産として再認識(そして活用)する
きっかけを作ってくれると思うので、
気になったら手にしてみてもいいのではと思う。
余談だが、記事を書きながら「知識活用」という表現を思いついたので、
(ありそうだが、あまり聞き慣れない表現なので、使われ方を調べたいと思い)
ググってみたら次のような資料を見つけた。
インテル社が作成した教育に関する資料の一部らしいが、詳細が不明。
1929年、哲学者アルフレッド・ノース・ホワイトヘッドは、
目的なく頭を使わず情報を詰め込むことを表す「不活性知識」という用語を考案しました。
デビッド・パーキンス(1955年)は、不活性知識を「カウチポテト並みの知識」(P.22)と
表現しました。ただそこに居座って場所を占領しているだけ、という意味です。
詰まるところ、物事を知ることの目的は、それを使って何かをするということなのです。
カウチポテト並みの知識という表現に、ちょっと笑ってしまった。
ちなみにカウチポテトは、ソファー(カウチ)に寝そべったまま、
テレビ等を見てだらだらと長時間を過ごす「自堕落な様」を指すスラング。
カウチポテトの結果である肥満は「摂取>消費」で生じる。
寝そべって、ポテチ片手に読書(読んで終わり)・・・ダメっぽい感満載。
おぉ、やっぱりメタボなんだ(笑)
ということで、
積ん読は「解消」ではなく「活用」を心掛けようと。
反省かたがた2019年の抱負とした次第である。
墓穴掘ったな(汗)