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PID絶縁抵抗評価試験システム

メガソーラーの隠れた大敵を見つけ出し パネルの品質向上やスクリーニングに一役
投稿日-2021年10月

 

メガソーラーの隠れた大敵を見つけ出し
パネルの品質向上やスクリーニングに一役

メガソーラーの隠れた大敵

─ PID現象について簡単に教えてください

<渡邊>PIDは、 Potential Inducted Degradation:電圧誘起出力低下と言いまして、太陽光発電設備でセルの出力がある時点から大幅に低下してしまう現象のことです。高電圧下で使われる産業用ソーラーシステム特有の現象とされ、設置時には確認できないやっかいな現象でメガソーラーの隠れた大敵なんです。

電気的には、高温多湿環境で長期間にわたり高電界に曝されると絶縁性が悪化しその漏れ電流が発電性能の劣化を引き起こす様に観察されます。

モジュールの出力電圧が数十Vでも直列接続する枚数が増えるとストリング内の電位差は非常に高くなり、セルと接地との間にも大きな電位差が生じます。ちなみに日本では最大システム電圧600V、ヨーロッパでは1000Vとして運用されており、事業用メガソーラーでは最大システム電圧をさらに上げる傾向にあります。PIDがメガソーラー特有の現象とされるのはこのためです。

ソーラーパネル

<山口>PIDの研究・解明と共に試験評価方法の確立や規格化に向けた作業が進められています。PIDは潜在的な現象ですので何れも加速寿命試験的な方法を採っていて、具体的にはパネルとフレーム間に1500Vの高電圧をかけてPIDを人為的に短時間で引き起こし電気特性を測定します。PID現象が起こりやすい状況を作り出して危険性を予め潰したり、怪しいモジュールを取り除くことを意図しているからです。したがって、PID評価には高電圧の印加と絶縁抵抗や漏れ電流測定がマストの機能ということになります。

メガソーラーの成熟

─ キクスイとPIDとの係わりはどこに

<山口>当社は一般電気機器向けの絶縁抵抗計や耐圧試験器メーカとして長い実績を積んでいます。けれどPIDの絶縁試験には一般用より高電圧が求められたので、過去にPID専用の試験器として電圧範囲を拡げたTOS7201Sというのを開発しまして、試験サイトさんなどに納入させていただいてきた経緯があります。

<渡邊>その一方で、日本ではメガソーラーの急増から時が経ち、そろそろ経年劣化が露わになる時期に来ています。大規模なメンテナンスや更新、家で言えばリフォームの時を迎えているわけです。その際には設置されたソーラーパネルやモジュールについてリユースか交換・廃棄・リサイクルするかなど判断しなければなりません。 メガソーラーさんにとっては、設置から年数を経た今、目の前にある大量のパネルが今後も使えるのか使えないのか、スクリーニング(仕分け)したいわけです。

TOS7210S

<山口>先のTOS7201SはPID解明を目指す研究者様からのご要望から生まれた基礎研究向けのモデルです。
別の言い方をすれば、今お話ししたような設備屋さんやメーカさんなど、大量の測定や判定を効率よくこなすと言うことをあまり意識せずに作られた製品です。 ここへ来て測定法や規格もだんだん見えてくると同時に、メガソーラーのパネルが劣化してメインテナンス時期を迎えた。用途が変わってきたというか世の中がTOS7201Sで意図したのとはちょっと違う方向へ向かったわけです。

お客様も困っておられました。測定法の確立には多くのサンプルでの検証が早期に必要になりますし、メンテなんかでは的確で効率の良い判定が必須だからです。 実際のところ、研究機関のお客様から「効率の良い測定とデータ処理ができるようにならないだろうか」、というご相談を頂戴したのが本システム開発のキッカケなんです。

実績と経験を活かす

─ 開発に当たって意識したことは

<山口>一例ですが、IEC61215という規格の中に湿潤漏れ電流試験というのがありまして、試料を恒温槽などに入れて測定を行います。電気測定自体はフレームとモジュール間の電圧を500V/s以下のレートで徐々に上げていって絶縁抵抗を測定するように規定されたPIDテストなんです。ところがTOS7201Sは電圧を細かく設定できるのですが、徐々に上げていくということまでは考えられていません。

規格適合試験ともなれば定められた設定条件と手順に従ってスムーズに測定を行い、記録もきちんと残さなければなりませんよね。リユースやリサイクルのためのスクリーニングなどでは大量の試料を対象にするでしょから尚更なわけですが、そうしたことへの配慮も必要でした。

<渡邊>幸いにしてTOS7201Sには外部制御の機能を持たせてあったのでアプリケーションソフトでの対応を考えたんです。 ソフトからなら電圧の上げ下げも可能ですし、測定のログを採って吐き出したりできるからです。

本体だけですとパネル表示に限りが有ってお客様が確認したいと思われる項目を表示しきれそうに無かったのもソフト化した理由の一つです。アプリでは絶縁抵抗を2分間測定して、絶縁抵抗など測定値の変化をグラフ化して見ることができます。パネル選別などでの利便性を考慮してGO/No-GO判定などもできるようにしました。

パネル

単体からソリューションへ

─ お客様の声を捉えるコツは

<渡邊>ソフトの形態としては、この規格専用のアプリケーションソフトとする方向性も考えましたが、他の用途にも使えるように自由度を持たせた汎用外部制御・データ収集のアプリスタイルにしました。そうすることで要求される数値が変わったり他の用途向けの試験に使うことになったりしてもすぐに対応できます。スタンドアローンでは対応できないユーザニーズの変化をアプリケーションソフトでカバーする単体測定器のソリューション進化形なわけです。

私としてはPIDについて現象解明や研究段階からパネルの診断やリサイクルのフェーズまで係わることができました。これからも流れを注視しつつソリューションベンダーとしてお手伝いし続けますよ。

<山口>ソリューションの実現にあたってはお客様とコミュニケーションが原動力です。本システムも開発段階でお客様からパネルをご提供頂き、お客様と共に色々と検証を重ねて機能を固めていった経緯があります。結果的にも、持っている技術を応用した良いものができたと思っています。 このアプリケーションだけでなく、お客様のニーズには細かなところまで柔軟にお応えしていく考えです。

参考:
IEC 61215:2016:Terrestrial photovoltaic (PV) modules – Design qualification and type approval.
IEC TS 62804-1:defines test methods for evaluating PID in crystalline silicon PV modules.
IEC TS 62804-2:defines test methods for evaluating PID in thin-film PV modules.
JIS C8990:地上設置の結晶シリコン太陽電池 (PV) モジュール−設計適格性確認及び形式認証のための要求事項

執筆者: 菊水電子工業株式会社

計測と電源のエキスパート・カンパニー 菊水電子工業のスタッフによる執筆です。

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