耐電圧試験/部分放電試験
耐電圧試験とは…
耐電圧試験とは絶縁耐力試験やハイポットテストとも呼ばれ、電気製品や部品の電気的絶縁部分が、取り扱う電圧に対して「十分な絶縁耐力があるかどうか」を評価する試験です。絶縁部分に通常印加される電圧よりも高い電圧を、規定された時間印加し、絶縁破壊を起こすかどうか試験します。

耐電圧とは…
耐電圧とは樹脂などの絶縁物に直流もしくは交流の電圧を印加させたときに絶縁破壊が発生する限界の電圧であるといえます。判断としては非常に高い電圧(絶縁破壊が発生しそうな領域まで)で印加させたときに、実際に絶縁破壊が発生するかどうかを調べます。徐々に上げていき、絶縁破壊が発生したところが耐電圧(限界の電圧)といえます。


耐電圧試験の目的
全ての電気用品は安全でなければなりません。人々の生命を脅かす事、財産に対して損傷を与える事があってはなりません。耐電圧試験は電気製品に存在する感電・火災などの危険から消費者と消費者の財産を守るために、電気用品が十分な絶縁耐力を持っているかどうかの確認を行うことが目的です。
耐電圧試験を具体的に

耐電圧試験の原理について、左の図を用いて具体的にご説明します。左の図は代表的な試験箇所として、電気用品の一次回路の試験接続図を示しています。耐電圧試験機の出力ケーブル(HIGH側)を試験対象物のAC入力端子のライブ(L)とニュートラル(N)を短絡した部分に接続します。もう片側の出力ケーブル(LOW側)は接触可能な導電部(シャーシ)といわれる箇所に接続します。
HIGHとLOW間にAC(交流)の高電圧を印加し、ACライン-シャーシに流れる漏れ電流を計測し絶縁性を確認します。ACラインとシャーシの間にあるZ1やZ2には、主にノイズ除去を目的とするYキャパシタがあり、交流電流を通す特徴があります。耐電圧試験機はキャパシタに流れる電流を含めた総合的な漏れ電流を検出し、設定した限度値を超えていないかどうかを確認する原理となります。

部分放電試験とは…
部分放電とは、絶縁物の一部が部分的に絶縁破壊を起こす放電現象で、主に絶縁物の中のボイドなどで発生する気中放電です。通常ボイドは空気等の気体でできていて、その大きさは非常に小さいのでボイドの静電容量も小さいものとなります。
電極間に電圧を印加すると、静電容量の小さいボイドの部分に大きな電圧がかかり、ボイドに電界が集中し部分放電が発生します。


A点とB点の間に耐電圧試験を行うと、絶縁物の内部ではボイドの静電容量CVにも試験電圧とほぼ同じ電圧が加わります。すると、絶縁距離が短いボイドは低い電圧で放電します。
しかし、ボイドで放電が発生しても絶縁物があるので電極間を短絡する放電には至りません。以上の例のように、絶縁物中のボイド等で放電が発生しても電極間の放電には至らない状態のことを部分放電といい、その時の電荷移動量や放電パルスを測定するのが部分放電試験です。
部分放電試験のポイント
- ボイドの静電容量は極めて小さい
- そこに大きな印加電圧が加わる
- 絶縁距離が短いボイドは低い電圧で放電する
- この放電では電極間を短絡する放電には至らないが電荷の異動が起こる(部分放電)
※負荷の絶縁破壊には至らない
部分放電試験の利点
部分放電試験では、絶縁破壊に至る前の状態を検出するので、従来の耐電圧試験では分からなかった潜在的な不良や、製造上のバラツキも検出できます。また、従来方法と比較して以下のメリットが見込めます。

- 絶縁設計の最適化
- 製造バラツキの縮小
- 材料のバラツキの発見
- 安全性の向上
- 原因不明の不良解析に一役
- 非破壊で不良を検出できれば、欠陥部分の調査が可能
- 絶縁性能の長期信頼性が評価できる

部分放電と絶縁破壊の関係

電極間に印加された電圧と放電の一般的な関係は上図のようになります。被試験物に印可した電圧を徐々に上昇させると、まず部分放電が開始(A)して、その後火花が発生(D)します。その後、アーク放電(E)に移行して被試験物は絶縁破壊します。アーク放電に移行してさらに電力が供給されると、絶縁破壊した被試験物はアーク放電の熱で焼損します。
部分放電領域をさらに詳しく見ると、(A)の部分放電開始の後、(B)から(C)の安定領域があります。この領域では絶縁物中の複数のボイド等で部分放電が発生しています。その後(C)から(D)の部分放電急増領域を経た後に、各ボイド間の絶縁が破壊されてアーク放電に移行します。
耐電圧試験と部分放電試験の違いとは?
耐電圧試験は、被試験物に交流(又は直流)の高電圧を印加して、被試験物が絶縁破壊した時に流れる漏れ電流を検出して良否判定をおこないます。つまり「絶縁破壊=電流の増加」として扱っており、試験で不合格になった被試験物は、多くの場合破損していて復元不可能な状態になります。
また、耐電圧試験では破壊(電流の増加)がなければ、絶縁不良の原因になるボイド等が存在していても良品と判断されます。一方、部分放電試験は、絶縁破壊が起こる前の電荷量の増加をとらえるため、多くの場合被試験物が破壊されることはありません。また、絶縁破壊に至る前の状態を検出するので、従来の耐電圧試験では分からなかった潜在的な不良や、製造上のバラツキも検出が可能になります。
