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電装品テストの動向と対応戦略

欧州で進むLV148や124への対応要求が国内サプライヤに波及 テストシステムにも早急な対応が迫られる
投稿日-2021年7月

 

欧州で進むLV148や124への対応要求が国内サプライヤに波及
テストシステムにも早急な対応が迫られる

世界戦略

─ 欧州規格のLV124/148が話題になっていますね

<千葉>今日は自動車電装品の電圧変動試験について最近の動向と私共の対応状況についてお話ししたいと思います。

ご指摘のLV124/148はドイツを中心とした欧州の自動車メーカさん5社による電装品および車載電子機器に対する電源の試験規格です。LV124は12V系、LV148は48V系について定めていますが、基本的に12Vと48V混在の電気系システムを前提にしています。

自動車業界では従来からメーカ独自の試験要求、例えば電源変動試験で言えばオリジナルの変動パターンを定めてサプライヤに提示してきました。LV124/148は、VDA 320ですとか ISO16750-2などの公的な規格をベースにしてはいるものの、あくまでもメーカさん5社による独自でクローズドな試験規格です。電装品や車載電子機器のサプライヤさんはこの規格に則った品物の納入を義務づけられることになりますが、5社共通ですのでLV124/148に則ったものを作れば5社に提供できるのでメーカとサプライヤ双方にメリットがあります。

<後藤>私共は論評する立場では無いわけですけれども、実質的にはクルマの電圧系統をヨーロッパで標準化する流れの一環です。世間では、日本車のようなストロングハイブリッドではなく、マイルドハイブリッドを経てのEV化を選択した欧州自動車メーカの世界戦略によるものなどと評されていますよね。

兎にも角にも、欧州メーカは12Vと48V混在の電気系システムを選択し、LV124/148はそれを実現するために規格ができあがった。そして、新開発のクルマにどんどん採用されているのはみなさんご存じのとおりです。

<千葉>そう言う意味では日本はちょっと蚊帳の外みたいなところもあるんですが、日本のサプライヤさんや機器メーカさんの中には国内だけでなく欧州系自動車メーカさん向けの仕事をされているところもあります。そうしたサプライヤや機器メーカさんはLV124/148への対応、具体的にはLV124/148で定められた試験をクリアする製品の納入が求められることになってきました。もはや対岸の火事では済まない状況なんですね。

弊社は国内自動車メーカさん向けを中心に数多の電源変動試験システムを供給してきましたが、お話ししたような事情から、ここへ来て試験環境をLV148や124に対応させたいというお話しが増えています。

12V/48V 混在システム
12V/48V混在システム

特異性

─ LV124/148は他の規格と何が違うのですか

<後藤>LV124/148試験には電気試験と環境試験の二つのパートがあって機械的、環境、サービスなどのカテゴリに別れています。電気試験に関して言うと規格自体が新しい電圧体系を定めたものですので、その7割近くは電源変動に関するものになっています。

当然なんですけれども48V系ということで、これまでとは試験電圧が違います。具体的には70Vクラスの電源が要ります。また、12Vと48V混在を前提にしているためか、変動パターンも他とは違う部分があります。例えば電圧の異常な上昇などに多くの項目があり、他とはちょっと異なる印象を持ちますが、電圧が異なることを除けば他の規格と多くの共通点があります。

言い換えると基本的には今まで同様の試験システムで対応できる、というのが我々の考えです。

<千葉>とはいうものの、両者と他の試験規格とを細かく比べてみると、特有な部分もあります。例えば、電源の瞬断などがそうなんですが、コネクタや配線などの接続部品が一瞬外れた時のことを想定しています。電源がオープンになってゼロボルトにする試験要求です。試験電源としては出力電圧をゼロに絞ることは難しくないんですが、その場合は出力インピーダンスはほぼゼロ、負荷からは電源線とグラウンドがショートしてゼロになったように見えます。したがってオープンを模擬するためには本当に出力線を切り離す仕掛けが必要になります。

さらに、コネクタが外れた時の試験では電源ラインだけでなくコネクタを渡る複数の通信信号線も同時にオープンにするテストなども含まれています。試験システムがLV124と148に対応するためにはこれらにも対応しなければなりません。

試験システムがLV124と148に対応するためにはこれらにも対応しなければなりません

方針と状況

─ 具体的な菊水さんの対応は

<後藤>当社はクルマの電源試験に対して大きく分けて二つのソリューションを展開してきました。ひとつは電源試験全般を広くカバーするトータルソリューションKES7000システムでして、電源変動に対してはKES7400シリーズがあります。

もうひとつは試験目的に応じて標準品の電源や電子負荷とアプリソフトを組み合わせるパーソナルなソリューションです。電源変動に対してはインテリジェント・バイポーラ電源のPBZシリーズとソフトウエアの組み合わせをご提案してきました※。

<千葉>LV124と148に対してはこのPBZシリーズでの対応を進めているところです。電圧が48とか60Vになるという点については、使用するPBZの電圧が上がるだけですから現行のままで移行できますし、試験パターンはパターンファイルをLV124と148で定義されたものに書き換えるだけで済みます。ただ、お話ししたように複数線のオープンによる瞬断などに対応する必要があるため、PBZと連係してLV124/148試験ができるスイッチボックスを新たに開発しています。全体を制御するアプリケーションソフトはスイッチボックスを制御する機能を付け加えるほかLV124/148の手順に沿ったものにするため若干の書き換えが必要になりますが、元になるソフト(Wavy)が定められたシーケンスに従って機器設定や測定を行うためのものなので早期にカタチにできそうです。

新アイテム

─ スイッチボックスについてもう少し教えてください

<千葉>実はKES7400にはクルマのワイヤーハーネスが外れた状態を模擬するためにオープン瞬断するスイッチユニットが以前から設定されていまして、今回、LV124/148対応するにあたってはこのユニットの設計資産が大いに役に立ち、短期間で実現の見通しがつきました。
いっぽう、信号線用のスイッチは新規開発です。電源線も信号線も半導体スイッチなんですが、信号線の場合は電流の方向がどちらの向きになるか分かりませんので、双方向のスイッチとする必要があります。そうしたうえでリニアリティと応答性を確かなものにすることを心掛けました。

情報の収集と分析もカギ

─ 技術の蓄積と総合力が活かされる世界ですね

<千葉>先にお話ししたとおり、私共は国内の各メーカさんやサプライヤさんの独自仕様に対して個別対応でお仕事を進めさせていただいています。
実は、信号線を含めた瞬断テストについては最近の日本のメーカさんの規格にも似たようなものがありまして、今回のスイッチボックスが使える見込みです。
ソリューションというのはお客様の問題解決ですから、ご提供までの時間がキーポイントになります。その意味で設計開発の身としては短期の開発と設計の効率化を常に考えながら仕事をしています。
また、スイッチボックスを複数の信号ラインの瞬断テスト用アイテムという捉え方をすれば、自動車だけでなく一般の電子機器なんかにも応用ができるはずで、その辺りもリサーチしていこうと思っています。

<後藤>規格対応試験ということで考えると、IECですとかパブリックな規格は改版や見直しのスケジュールが公にされていますが、プライベート規格は例えば改版などの変更があっても我々には伝わってきません。
ですが、それによってお客様がお困りになった時点で問題を知るというのでは対応として遅いんです。規格ができるとか、変わるっていうのを動きがある時点で捉えていなければダメなんですよね。適切なソリューションを素早くご提供するには日頃からのお客様とのコミュニケーションがすごく重要なんだなとつくづく思います。

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菊水電子工業株式会社

執筆者: 菊水電子工業株式会社

計測と電源のエキスパート・カンパニー 菊水電子工業のスタッフによる執筆です。

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