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V2H/EVシミュレータ

クルマを電力源として使う Vehicle to Homeの実車を模擬 パワコンの短期開発をサポート
投稿日-2021年8月

 

クルマを電力源として使う
Vehicle to Homeの実車を模擬
パワコンの短期開発をサポート

EV普及はグローバルトレンド

EVの普及に併せてV2Hが注目されていますね。

<渡邊>EVの普及が加速しています。さらにここへ来てクルマを電力源として使うV2Hの導入も進んでいます。
ご承知の通りV2H、Vehicle to Homeは、電気自動車(EV)やプラグインハイブリッド自動車(PHV)、燃料電池車(FCV)などが蓄電池に蓄えた電力を災害時等の家庭用電力として利用することであり、クルマが暮らしを豊かにする技術手段のひとつとされているわけです。
一方で、EVのV2H利用というのは我々電気機器の側から見ると大きな転換です。

<市川>元々のEVに対しては充電ステーションなどEV用の充電設備、具体的にはAC/DCコンバータを考えれば良かったわけですが、V2Hではパワーの向きが逆になりますから、AC/DCではなくクルマを電源とするDC/ACインバータにしないといけない。さらに家庭内の電力ラインともつながるとなると、太陽光発電や系統電力などとの交通整理が必要になります。これは機器で言えばパワーコンディショナですとか系統連系装置ですよね。

そうした要因からも電力エネルギー関連、具体的にはパワーコンディショナを手掛けているメーカさんはV2H/EVの普及に対して大きな関心と期待を寄せています。実際のところ、太陽光パネルや蓄電システム向けのパワーコンディショナメーカさんの多くがV2H/EV向けのパワコン/充電器の開発と市場参入に注力されておられます。

パワコン開発の難題

V2Hのパワコンを開発するうえで問題点はありますか。

<渡邊>V2Hのパワーコンディショナはクルマ、もっと具体的にはクルマに搭載されたバッテリが電源入力ですから、クルマとつながらなければ動作しません。したがって動作テストには実際に市販されているEVが必要になります。ですが、開発時の動作テストやデータ取得、生産時の検査など作業の現場に実車を持ち込むのは現実には難しいことです。開発や生産の現場が本物のクルマを持ち込める環境にあることはむしろ希ですし、実車でテストしようとしたら各自動車メーカの各車種を揃えなければならないわけですが、それも無理な話です。最終的にはいくつかの実車による確認は必要ですが、パワコンメーカさんは現場用に各種のEVを代替えする手段に苦慮されています。

<市川>本システムはこの問題に対するソリューション提案で、具体的には当社のDC電源PAT-Tシリーズと電子負荷PLZ-4WHシリーズ、それと通信用のパネルを専用アプリケーションから制御することでEVのバッテリを模擬します。

EVのバッテリは車種毎に容量が違うので、それぞれに合わせたシミュレーションができるようになっているのはもちろんですが、実は違うのは容量だけではなく、電圧電流カーブ、つまりその時々の電圧に対する電流の値が違ったりします。本システムではこの電圧電流カーブも織り込んで、より実際に近いシミュレーションが出来るように考慮しました。
また、狙った充電状態を実車で実現するのも簡単ではない。例えば電池の残量が残り少ない状態をテストしようと思ったらクルマを運転して走り回ってこなければなりませんよね、シミュレータならこれを即時に再現できます。

システム図<渡邊>反対に、実際にはあり得るはずのない状態、例えば電圧が極端に下がった場合に電流を吐き出し続けるとか、バッテリの最大電流を上回って出力するとか、そういう常用域を越えた異常状態みたいなことも作り出すことができます。車は安全第一です。さらにV2Hで系統とつながるとなるとこれも安全が最優先事項ですから、お客様も異常に対する配慮には神経を使います。本システムは安全確認のための異常シミュレータにもなる、というわけです。

クルマの個性やクセも再現

電源と電子負荷があればテストできそうな気がします。

<市川>ご承知の通り、バッテリということでは充放電テストのシステムですとかテスタですとか、当社の得意分野なので技術もノウハウもたっぷり蓄積があって、人材も揃っています。本システムにおいても電池としての充放電特性を模擬するという意味ではPAT-TシリーズとPLZ-4WHシリーズの持つ優れた能力を組み合わせて制御するノウハウが詰め込まれています。

ですが、V2Hではそれに加え充放電に際してCHAdeMOなどの通信を伴います。電気自動車の急速充電に関する技術や標準規格はまだ新しく、個々のEVとステーションの組み合わせによっては、制御信号の通信不具合により動作が異常中断するなど、思わぬトラブルが発生することがあったりもします。そういったことまで考えると、通信も合わせないとEVのシミュレーションにはならないんです。

<渡邊>これに関しても当社は例えばCHAdeMO協議会の正会員でありますし、充電器をつないだ状態でのEMCテストシステムもやっていて、ノウハウや情報も濃いものを持ち合わせています。例えば、CHAdeMOでもバージョンはいくつもあって進化しているわけで、本システムはCHAdeMO/V2H ガイドライン最新版に準拠していますが、実は各バージョンには例えば応答のタイミングなどに細かなクセみたいなものがあります。

また、充電時の通信でエラーが発生した場合や予期しない割り込みに対する反応など、通信の応答などは個々のクルマによってそれぞれ違います。その一方で、充電器に接続されるのは新型車だけではありません。パワコンサイドでは新旧様々なバージョンのクルマとうまく通信できなくてはならないわけで、その確認もしておきたい。EVシミュレータはそういう時のためのものでもあるわけで、本システムでは通信のプロトコルやパラメータについても細かな設定ができるようにしてあります。

多面的EVサポート

EV関連では他にも様々な電気テストが求められています。

<市川>今回はEVシミュレータのご紹介でして、これはEVのメーカさんでは無くパワコンメーカさんのためのソリューションです。当社は太陽光発電や蓄電システムなどに関するテストソリューションも初期の頃から手掛けていますので、エネルギー関連のお客様との交流も厚く、様々なお話を伺ってきた中から生まれたものなんです。

対向するEVに関しても当社では急速充電器ですとかもあり、いろいろ経験を積んでいるわけです。先にお話ししたEVのEMCテストシステムなどの他にも、EV内の高圧部分のテストシステム等EVに関する様々な問題解決に間口を拡げて多面的にお応えしています。

<渡邊>実はお客様の中には充放電に際しての通信のやり取りだけをテストしたいという方もいます。そういうご要求に対しては、電源も電子負荷も無しで通信部分だけのEVシミュレータとしてご提案していくことなども考えています。EVから見たパワコン側・充電器側のシミュレータもソリューションとしてご用意していますのでこちらも機会をみてお話しさせて頂ければと思います。

EVへのシフトは、エネルギーと環境問題から考えても要素技術の開発状況をみても、もはや誰もが疑う余地のない確実なトレンドです。そうしたトレンドに係わっていけるのは技術者として幸せなことです。

CHAdeMO

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菊水電子工業株式会社

執筆者: 菊水電子工業株式会社

計測と電源のエキスパート・カンパニー 菊水電子工業のスタッフによる執筆です。

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