TOS7210S
TOS7210S
360,000円 (税込:396,000円)
- 50Vdc~2000Vdc(分解能1V)の範囲で設定可能
- 印加電圧極性をパネル面のスイッチで瞬時に切替可能
- 出力は接地電位からフローティング。測定ポイント間に流れる電流だけを測定可能
- 電流測定値または抵抗測定値として表示切替可能
- 製品詳細
- PID試験関連資料(出典:産業技術総合研究所)
- 仕様・外形図
- オプション
- ダウンロード
PID現象とは
PID現象とは、太陽電池セルとフレーム間に長時間高電圧が印加されると、セルの発電量が著しく低下する現象です。印加される電圧が高い程、また高温・多湿環境である程劣化が進むと考えられています。例えば、結晶シリコン系太陽電池モジュールの出力電圧が数十Vだとしても直列接続する枚数が増えるとストリング内の電位差は非常に高くなります。一方、PCS(パワーコンディショナ)は交流電源として系統システムに接続されますが接地形態はPCSにより異なります。入力側がフローティング(ー極側を接地[アース]に接続できない)で運用されるトランスレス方式も近年では増加しています。この様な場合は、セルと接地(アース)との間に高い電位差が発生します。結晶シリコン系太陽電池モジュールでは、フレーム(接地[アース])に対して負極電位の高いセルがPID現象を起こしやすい事がわかっています(図1参照)。現在、日本国内では最大システム電圧を600V、ヨーロッパでは1000Vとして太陽電池モジュールを運用していますが、事業用メガソーラーにおいてはストリング数の削減、PCSの総数削減、発電効率向上の観点から最大システム電圧を上げる傾向にあります。
図2は、結晶系シリコン太陽電池モジュールが高電位差に曝された状況を模擬しています。フレームが正極電位、モジュール回路が負極高電位に曝された状況になります。結晶系シリコン太陽電池モジュールのPID現象は、白板強化ガラス内のナトリウムイオンがセル側に移動し、劣化を引き起こしていると考えられています。(薄膜系太陽電池モジュールでもPID現象が確認されていますが、劣化のメカニズムは結晶系シリコン太陽電池モジュールとは異なります。)現在、様々な研究機関によりPID現象の原因究明の実験・研究が進められています。
特長
出力電圧を任意設定
被試験物に印加する試験電圧を50Vdc~2000Vdc(分解能1V)の範囲で設定できます。太陽光発電のシステム電圧を1000V以上に想定した場合の評価などに対応が可能できます。また、電気・電子部品、電気・電子機器の絶縁抵抗試験においてJIS C 1302:1994で規定される電圧以外の試験も可能です。50V~1000Vの範囲では、出力特性はJIS C 1302:1994に準拠しています。
出力は接地(アース)からフローティング
出力端子は接地電位(アース電位)からフローティングされています※1。また、出力ケーブル(TL51-TOS)にシールドケーブルを使用しています。このため、被試験物と大地間に流れる電流は測定せずに試験ポイント間に流れる電流だけを測定できますので高感度で正確な評価試験が実行できます。
※1:極性が正極に設定されている端子の対接地電圧(±1000Vdc )、極性が負極に設定されている端子の対接地電圧(+1000Vdc および -3000Vdc)
極性切替機能
本体パネルのスイッチにより簡単に出力極性を切替えることができます。PID劣化は可逆性の現象で、逆バイアス電圧を印加すると回復する場合があります。極性切替は被試験物までの配線変更の必要もなく便利な機能です。また、RS232Cインターフェースによる、外部コントロールからの切替えも可能です。
アナログ出力端子
抵抗表示モードにおいては抵抗測定値に応じた電圧を対数圧縮して0V~4Vにて出力しています。電流表示モードでは電流測定値および測定レンジ(4レンジ)に応じてリニアスケールで出力しています。データロガー等の外部記録装置を利用すると被試験物の変化や劣化状況を解析することができます。
仕様
出力部 | ||
出力電圧 | 範囲 | 50V~2000V |
分解能 | 1V | |
確度 | ±(1.5% of setting +2V) | |
最大定格出力 | 2W (2000V/1mA) | |
最大定格電流 | 1mA | |
出力端子 | 出力形式 | フローティング |
対接地電圧 | ±1000 Vdc (極性が正極に設定されている端子) +1000 Vdcおよび-3000 Vdc (極性が負極に設定されている端子) | |
リップル | 2000V無負荷 | 20Vp-p以下 |
最大定格負荷 | 20Vp-p以下 | |
電圧変動率 | 1%以下 (最大定格負荷→無負荷) | |
短絡電流 | 2mA以下 (瞬時200mA以下) | |
出力立ち上がり時間 | 50ms以下 (10%~90%、無負荷) | |
放電機能 | 試験終了時に強制放電 (放電抵抗20kΩ) | |
電圧計 | ||
測定範囲 | 0V~2400V | |
分解能 | 1V | |
確度 | ±(1% of reading +1V) | |
抵抗計 | ||
測定範囲 | 0.01MΩ~5000MΩ(100nAを超え最大定格電流1mAまでの範囲にて) | |
表示 | □.□□MΩ [R<10.0MΩ] □□.□MΩ [10.0MΩ≦R<100.0MΩ] □□□MΩ [100.0MΩ≦R<1000MΩ] □□□□MΩ [1000MΩ≦R≦5000MΩ] (R=絶縁抵抗測定値) | |
確度※1 | ±(10% of reading) [100nA<i≦200nA] | |
±(5% of reading) [200nA<i≦1μA] | ||
±(2% of reading) [1μA<i≦1mA] | ||
(i =出力電圧測定値/抵抗測定値) | ||
測定レンジ | 選択 | 電流測定レンジをAUTOかFIXに選択可 |
AUTO | 抵抗測定用電流値に応じて電流測定レンジを随時自動的に変更 | |
FIX | 出力電圧設定値とLOWER設定値により電流測定レンジを固定(W COMP OFFにて) | |
ホールド機能 | 試験終了時の抵抗値をPASS期間中ホールド | |
電流計 | ||
測定範囲 | 0.000μA~1900μA | |
表示 | □.□□□μA [i<10.00μA] □□.□□μA [10.00μA≦i<100.0μA] □□□.□μA [100.0μA≦i<1000μA] □□□□μA [1000μA≦i] (i=電流測定値) | |
確度※2 | ±(4% of reading +0.005μA) [i<10.00μA] ±(4% of reading +0.005μA) [10.00μA≦i<100.0μA] ±(2% of reading +0.005μA) [100.0μA≦i<1000μA] (2% of reading) [1000μA≦i] (i=電流測定値) | |
測定レンジ | 選択 | 電流測定レンジをAUTOかFIXに選択可 |
AUTO | 電流測定値に応じて電流測定レンジを随時自動的に変更 | |
FIX | 出力電圧設定値とLOWER設定値により電流測定レンジを固定(W COMP OFFにて) | |
判定機能 | ||
判定方法/判定動作 | LOWER FAIL 判定 | 下限基準値以下の抵抗値を検出した場合に出力を遮断しLOWER FAILと判定 |
W COMP 判定 | 上限基準値以上または下限基準値以下の抵抗値を検出した場合に出力を遮断しUPPERもしくはLOWER FAILと判定するウィンドコンパレート判定 | |
時間 | ||
試験時間設定範囲 | 0.5s~999s (TEST TIME OFFを設定すると連続運転可能) | |
判定待ち時間設定範囲 | 0.3s~10s (TEST TIME > WAIT TIME) | |
確度 | ±(100ppm+20ms) | |
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SIGNAL I/O | 後面パネルD-SUB 25ピンコネクタ | ||
入力仕様 | ハイレベル 入力電圧 | 11V~15V | 入力信号は全てローアクティブ制御 入力端子は抵抗により+12Vにプルアップ 入力端子の開放はハイレベルを入力したのと等価 |
ローレベル 入力電圧 | 0V~4V | ||
ローレベル 入力電流 | 最大 -5mA | ||
入力時間幅 | 最少 5ms | ||
出力仕様 | 出力方式 | オープンコレクタ出力 (4.5Vdc~30Vdc) | |
出力耐電圧 | 30Vdc | ||
出力飽和電圧 | 約1.1V (25℃) | ||
最大出力電流 | 400mA (TOTAL) | ||
ANALOG OUT | 抵抗測定値、電流測定値および電圧、電流レンジ情報を直流電圧で出力。 | ||
抵抗測定値 | ![]() Rx:(1MΩ: 0.3V、10MΩ: 1.04V、100MΩ: 2.00V、1000MΩ: 3.00V、10000MΩ以上 : 4.00V) 出力インピーダンス1kΩ | ||
電流測定値 | Renge1 : V0[V] = 測定値 [μA] /512 Renge2 : V0[V] = 測定値 [μA] /64 Renge3 : V0[V] = 測定値 [μA] /8 Renge4 : V0[V] = 測定値 [μA] | ||
COM | アナログ出力回路コモン | ||
確度 | ±(2% of FS) | ||
RS232C | 後面パネルD-SUB 9 ピンコネクタ (EIA-232-Dに準拠) POWERスイッチ、KEYLOCK以外の全機能がリモートコントロール可能 | ||
ボーレート | 9600/19200/38400 bps(データ : 8bit、パリティ : なし、ストップビット: 2bitは固定) | ||
REMOTE | 前面パネル6ピンMin DINコネクタ オプションのリモートコントローラRC01-TOSまたはRC02-TOSを接続して、 スタート/ストップをリモートコントロール(ただし、変換アダプタが必要) | ||
表示 | 7セグメントLED、電圧表示4桁、絶縁抵抗値表示4桁、電流値表示4桁、時間表示3桁 | ||
メモリー機能 | 最大10通りの試験条件をメモリー可能 | ||
TEST MODE | MOMENTARY | STARTスイッチを押している間のみ試験を実行 | |
FAIL MODE | リモートコントロールのストップ信号によるFAILの解除を無効にする | ||
DOUBLE ACTION | STOPスイッチを押し、離してから約0.5秒以内にSTARTスイッチを押したときのみ試験を開始 | ||
PASS HOLD | PASSの判定を保持する時間を0.2秒、またはHOLDに設定可能 | ||
KEYLOCK | START/STOP以外のキー操作を受け付けない状態に移行 | ||
環境 | |||
設置場所 | 屋内、高度2000mまで | ||
仕様保証範囲 | 温度/湿度 | 15℃~30℃/20%rh ~80rh (ただし、結露なきこと) | |
動作範囲 | 温度/湿度 | 0℃~40℃/20%rh~80rh(ただし、結露なきこと) | |
保存範囲 | 温度/湿度 | ー20℃~70℃/90%rh以下(ただし、結露なきこと) | |
電源 | |||
交渉電圧範囲(許容電圧範囲) | 100Vac~240Vac(85Vac~250Vac) | ||
消費電力 | 定格負荷時 | 最大30VA | |
許容周波数範囲 | 47Hz~63Hz | ||
絶縁抵抗 | 30MΩ以上 (500Vdc) (AC LINE -シャーシ間) | ||
耐電圧 | 1500Vac、1分間10mA以下(ACLINE-シャーシ間)、3000Vac、1分間(A、B端子-シャーシ間) | ||
接地連続性 | 25Aac/0.1Ω以下 | ||
外形寸法/質量 | W : 214mm、H : 81mm (Max 115mm)、Dmm : 340mm (Max385mm)/約2kg | ||
付属品 | 電源コード×1本、高電圧テストリードTL51-TOS(1.5m)×1組、セットアップガイド×1冊、クイックリファレンス×1枚、安全のために×1冊、高電圧危険シール×1枚、CD-ROM×1枚 | ||
外形寸法図(mm)
オプション
絶縁抵抗試験器用 高電圧テストリード
リモートコントロール・ボックス
DINコネクターケーブル
PID試験関連資料
(出典:産業技術総合研究所)
PID現象の試験について
独立行政法人産業技術総合研究所 太陽光発電工学研究センター(以下、産総研)が2011年4月に発足した「第Ⅱ期高信頼性太陽電池モジュール開発・評価コンソーシアム」の中で共同研究テーマとしてPID現象を再現するための実験が行われました。TOS7210Sは、実験に必要な試験装置として菊水電子が開発を行いました。
単セルモジュール作製
テストモジュールは、単セルモジュールとして6インチ多結晶シリコンセルを白板強化ガラス・エチレンビニルアセテート(封止材)・バックシートでラミネートされています。
太陽電池モジュールに使用される部材
- セル基板:6 inch多結晶シリコンセル
- 受光面ガラス:白板強化ガラス
- 封止材:エチレンビニルアセテート(EVA)
- バックシート:PVF/PET/PVF 構成バックシート

試験方法
受光面ガラスにアルミ板を張り、恒温槽内に設置し、PID絶縁試験器TOS7210Sと接続。
モジュール温度を85℃に保ち3枚の単セルモジュールに-1000Vdc、-1500Vdc、-2000Vdcを印加しました。
ソーラーシミュレータによる出力特性の確認
モジュールの初期(Pmax /F.F./Isc/Voc)特性と時間経過後の変化により出力低下を確認することができます。
EL(electro-luminescence)エレクトロルミネッセンスによる劣化の確認
太陽電池モジュールは外部から電圧を印加すると接合面で再結合が起こり発光します。正常な部分は綺麗に発光しますが、劣化が進むと暗部が多くなり、最終的には発光しなくなります。PID現象を確認する有効な手段として採用されています。また、PID現象は可逆性現象により時間の経過とともに劣化が軽減されたり、初期状態に近い回復をする事が認められています。


印加電圧による劣化の違いを確認
印加電圧が増加するとモジュールの最大電力(Pmax)が低下する比率が上がりました。またEL画像から判断できるように印加電圧が高くなると同時間でのEL画像暗部が増加していることがわかります。
逆電圧印加による回復試験・結果
PID現象は可逆性の現象で試験終了から放置または逆電圧を印加することで、劣化が軽減されたり初期状態に近い回復をするモジュールもあります。TOS7210Sは、スイッチにより極性切替が容易にできます。被試験物への接続等の混乱もなく作業ができます。Pmaxの低下が著しいモジュール(-99%以上)は、長時間電圧を印加しても回復は見られません。それに対してPmax低下が中程度(-53%~-71%程度)の場合は0.5時間~2時間経過でほぼ完全な回復がみられました。また印加電圧に依存せずに回復しています。

さまざまな評価方法
現在(2014年7月)、評価試験方法や判定基準等は規格化されている状況ではありません。各国の研究機関や試験所、モジュールメーカーにより独自の評価を行っています。
- 水張り法:モジュールガラス面に水を張り電圧を印加する方法
- チャンバー法:恒温槽内で温度・湿度を管理し電圧を印加する方法
- アルミ法:アルミホイールでガラスを覆うか、アルミ板をガラス面に密着させて電圧を印加する方法
それぞれの試験方法による優劣、温度・湿度の差、試験時間の違い等、規格化に向けて実験を重ねています。国際規格IECでは、PID現象に対する試験方法を策定中です。