エネルギー有効利用のキーアイテム、パワコンに課せられた系統連系試験の重荷を取り払う自動試験システム

KIKUSUI mag 環境・新エネルギー

パワーコンディショナ系統連系試験システム

掲載日-2021年8月 ※記事は当時の掲載日をご確認ください。現在の製品情報や価格、技術についての最新情報ではない可能性があります。ご了承ください。

エネルギー有効利用のキーアイテム、パワコンに課せられた系統連系試験の重荷を取り払う自動試験システム

根強いパワコン需要

自家発電や蓄電が家庭にも浸透してきました。

<渡邊>太陽光、風力、燃料電池、コジェネ、小水力などに加えて最近ではEVやPHEVなど自家発電、蓄電、そして買電が普及してきました。
とりわけ、発電・蓄電装置、電力消費機器、そして電力会社からの系統という三者の電力の流れを制御するパワコン(PCS:パワーコンディショナ)には根強い需要があります。

パワコンは系統と並列する(系統連系する)ことからやや複雑な面をはらんでいます。電力系統は常に安定で安全であることが絶対条件なわけで、パワコンがつながることによって逆潮流(系統への電力注入)で系統の電圧や周波数の過不足が生じたり、解列(系統からの切り離し)時に単独運転による危険が生じたりすることがあってはならず、これらを事前に回避しなければいけないからです。

<小林>自家発電や分散型発電が系統と連系することによって起こる様々な問題は、当初から研究・検討が進められてきました。当社も電力中央研究所様に系統模擬用の交流電源をお納めする等してお手伝いをさせて頂いた等の経緯があります。結果として、現在では国や業界からガイドラインですとか試験方法などの技術要件が示され、市場にあるパワコンはこれらの要件を満たすように設計そして評価されています。

 参考:
・電力品質確保に係る系統連系技術要件ガイドライン 資源エネルギー庁
・系統連系規程 JEAG 9701-2006 日本電気協会
・小出力太陽光発電用パワーコンディショナの試験方法 JIS C 8962
・系統連系形太陽光発電システム用パワーコンディショナの単独運転検出機能の試験方法 JIS C 8963
・小型分散型発電システム用系統連系保護装置等の試験方法通則
JETGR0002-1-6.1(2015) 平成27年10月 一般財団法人電気安全環境研究所 (JET)
・太陽光発電システム用系統連系保護装置等の個別試験方法
JETGR0003-1-5.0(2015) 平成27年10月 一般財団法人電気安全環境研究所 (JET)

設定を変えては測定を繰り返す面倒なテスト

負荷装置の設定を165通り変えなければならないことも

<渡邊>例えば公的な機関であるJETが試験方法という形で具体的な手順と判定法を定めています。
系統につながるうえで十分な安全と信頼が確保されることを確認するためには必要なテストであり、パワコンを世に出すために半ば義務づけられた関門です。メーカさんとしてはできるだけ短時間でしかも簡単にクリアしたいわけです。ところが、この試験方法に問題というか、かなりやっかいな作業手順要求をしている部分があるんです。
実際にやろうとすると人手では到底引き合わない作業が含まれています。

試験の種類と規格

<小林>象徴的な試験項目のひとつに単独運転防止試験というのがあります。
これは、発電設備から電力供給が行われている状態にありながら、事故などで系統から切り離されたときのシミュレーションテストです。発電装置に負荷がつながった状態で系統から切り離すのですが、現実の負荷は抵抗(R負荷)とリアクタンス(L負荷、C負荷)の組み合わせですのでルールでは負荷装置に設定するL,C,Rの値の組み合わせを165通りの場合について行うよう求めています。

<渡邊>考えてみてください。負荷装置の大きなツマミやハンドルとスイッチを操作し設定しては測定、という作業を165回も繰り返すんですよ。系統連係の実験や研究というのであればやるかもしれませんが、商品化のための作業だとしたら到底やっていられません。

実際に手動でやっているお客様もおられるのですが、それに要する時間そして労力たるや大変なもので、実際のところ、作業者が2週間も張り付くハメになったと嘆くお客様もおられました。作業者にとってもメーカにとっても悩みの種、ぜったいに何とかしたいと思いますよね。私たちも試験装置の供給メーカとして何とかしたいと思ったのは同じなんです。

<小林>そういったことがあって、このシステムでは負荷装置にも遠隔設定機能を持たせ、ソフトウエアから自動的に設定できるようにしました。これによりお客様は165回に及ぶ設定と測定の繰り返し作業から解放されます。
作業時間も大幅に短縮されますし、繰り返しに伴う人為的な設定ミス等も無くなり、信頼性が向上します。

他の試験項目も自動化により、作業の効率が大幅にアップします。
例えば周波数フィードバックですとかステップ注入の試験では1サイクルの期間のデータを取り込んで有効・無効それぞれの電力を算出する処理を複数回繰り返す必要があるのですが、これも自動化によって短時間で終えることができるようになりました。
ちなみに、全ての項目において結果がロギングされますので、全体の管理作業も極めて楽になります。

システム図

LAN制御でカスタマイズも容易

発電の種類やパワーなど、お客様にも様々な事情があります。

<渡邊>当然のことながら供給電力はどのくらいか蓄電も含む装置か否か等で細かなシステム構成は異なってきますが、提案システムは系統模擬用の交流安定化電源、系統のインピーダンスを模擬するLIN、発電部模擬用の直流電源、負荷装置、電圧電流の測定器、信号や電力線の切り換えユニット、専用のソフトの組み合わせです。核となる交流安定化電源は30%までの逆潮流を受け容れられる能力を持ったPCR-LE/LE2シリーズを使います。試験の多くは解列に要する動作時間を計測するのですが、それには系統模擬電源とパワコンとの同期が不可欠で、こうした部分も十分に考慮されています。

<小林>本システムではそれらをLANで結びソフトウエアで制御していますので、お客様の都合に合わせたカスタマイズが容易であることが大きなメリットです。例えば、電源とアプリケーションソフトをお求めいただき、計測部分はお客様がこれまでお持ちのものを使って、後にフルシステムに移行して自動化を実現する、といったプランも考えられます。が、何れにしてもハイパワーな設備になりますので設置場所のほか予算的にもまとまったものとなり、お客様にとっては大きな投資となることも確かです。そのため、このシステムには十分な柔軟性を持たせお客様毎に最適なシステム構成をご提案できることが重要だと考えたわけです。

<渡邊>どの場合も作業の効率化と生産性・信頼性の向上を考えれば、投資に十分に見合うソリューションになったと確信しています。自動化による作業効率の良さを実際に体感して頂くためにデモルームを開設しシステムを常備しておりますので、気軽にお声がけ・ご相談いただければ幸いです。

執筆者: 菊水電子工業株式会社

計測と電源のエキスパート・カンパニー 菊水電子工業のスタッフによる執筆です。

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