このインタビュー記事は2026年2月に実施されました。
このインタビュー記事は2026年2月に実施されました。
01
CCオプションとは?

H.Tは開発プロジェクトマネージャー。CCオプション開発では、
特に技術継承と若手メンバーの育成に注力したと語る。
菊水電子の大ヒット製品「交流・直流安定化電源 PCR-WEA/WEA2シリーズ」に新たな可能性をもたらした「定電流出力/回生電子負荷機能オプション(通称:CCオプション)*」。PCR-WEA/WEA2シリーズの可能性を大きく広げた今回の開発メンバーに、着想から実装など語ってもらいました。
まずは、今回のテーマとなるPCR-WEAシリーズのCCオプションについて、どのような機能なのか簡単にご説明いただけますか?
「定電流出力/回生電子負荷機能オプション」 通称 CCオプションは、PCR-WEA2シリーズの最大電力6kVA以上のR付きモデルに搭載することができる工場出荷時のオプションです。従来の交流・直流安定化電源としての機能に加えて、新たに「定電流出力(CC SUPPLY)モード」と「回生電子負荷(CC LOAD)モード」の2つの動作モードの追加が可能です。
つまりCCオプションは、PCR-WEA2シリーズに新たな動作モードを追加できるオプションということですね。
はい、イメージとしてはその通りです。
従来の交流・直流安定化電源(CV SUPPLY)の機能はそのままに、CC SUPPLYとCC LOADの2つの追加動作モードを工場出荷時に搭載できるのがCCオプションです。
なるほど。
では、その「CC LOAD(回生電子負荷)」は具体的にどんなことができるんでしょう?
CC LOADは、定電流のAC/DC回生負荷として動作します。位相は0.1°単位で設定でき、力率を細かく変えられます。さらに任意波形機能を使うことで、コンデンサインプット波形や位相制御型の負荷動作も再現できます。また、吸収したエネルギーは一次側に構内回生して再利用できるので、CO2削減にもつながります。
つまりCCオプションを載せるとPCR-WEA2シリーズが「二刀流」になるという感じですね。
はい。CCオプション搭載により、PCR-WEA2シリーズは電力の供給と吸収を自在に操ることのできる『万能電源』へと進化できるわけです。
回生電子負荷モード(CC LOAD)
位相(力率)可変
任意の電圧に対して電流位相を0°~± 360°設定可能

高調波電流重畳
任意の高調波電流を重畳可能

特殊波形
21 種類の特殊波形*が事前にインストールされています

*ユーザ定義の特殊波形を生成したい場合は、別途アプリケーションソフトウェア Wavy for PCR-WE が必要です。
位相急変
任意のタイミングで位相(力率)の急変が可能

02
開発の経緯

K.Sは CC 制御系の設計のほか、技術営業も担当。
CCオプションの開発が始まった背景を教えていただけますか?
やはり市場から定電流(CC)電源への強い要望があったことがひとつと、定電流で回生機能や大容量・高電圧をカバーする製品が当社になかったため、これらを補完する形で、交流のCC回生型負荷の開発が求められたということがあります。
実は、当初は定電流電源を作るという話でスタートしたのですが、実験してみると回生負荷としても非常にうまく機能することが分かり「これは製品化できる!」と確信しました。実際にリリースしてみると、EV関連や再生可能エネルギー分野からの引き合いも多く、ニーズの高さを感じています。
定電流電源から回生負荷へ、というのは面白い展開ですね。そして、このCCオプションの実現には、PCR-WEAシリーズがこれまで重ねてきた改良も大きく貢献していると伺いました。
まさにその通りです。PCR-WEAシリーズは、出力インピーダンスの低減、出力安定度の向上や並列運転台数*の増加など幾度かの改善を加えてきました。前面の表示パネルも横長のVFDタイプからLCDタイプへ変更されました。特にLCDパネル化によって画面に縦方向の余白ができたことがCCオプションのUIを反映させる上で非常に幸運でした。
もし横長のままだったら、CCオプションの機能表示スペースを確保するのは難しかったでしょう。また、幾度かの改善で追加された回路が、実はCC動作に不可欠な役割を果たしていたことも後になって判明しました。
これらの偶然とも言える幸運が重なり、CCオプションが実現できたのは、まさにPCR-WEAシリーズが持つポテンシャルの高さと、これまでの開発者たちの努力の賜物だと感じています。
*CC SUPPLY/CC LOADモード時は並列運転出来ません。
NEW LCD


03
課題と工夫点

W.Tはプロジェクトリーダーの業務のほか、製品システム全体の設計も担当。
開発期間は約4年間だったとお聞きしましたが、長い開発期間の中で、特に苦労された点や工夫された点はありますか?
H.Tさん、責任者としてはいかがでしたか?
私が一番気をつけていたのは、とにかくこの活動を止めないことでした。新しいものを作る際、工数が割けずに活動が停滞してしまうことがよくありますから。また、若いメンバーを巻き込んで、もしCCが動かなかったらどうしよう、という心配もありました。最初の原理的な部分がちゃんと動いた時は、本当にホッとしましたね。
構想をスタートしてから4年間でしたが、実際は最初の2年間は土台となる技術を確立する期間でした。若手メンバーには、毎日数時間ほど自習を含めて勉強を重ねてもらい、PCR-WEAのモデル化技術を継承しました。残りの1年半~2年間で製品開発を進めるという形でした。
効率的な開発プロセスを経ての製品化となったと思いますが、W.Tさんはいかがでしたか?
プロジェクトリーダーとして、また設計者としてのご苦労はされた点があれば教えてください。
プロジェクトリーダーと一設計者の両立が非常に大変でした。リーダーとしては、他部署との連携や社内規定の調査など、これまで経験のない業務が多く、苦労しました。特に関連部門と密に連携し、開発期間を短くするために奔走しました。
設計者としては、お客様からの要望を電気的性能や技術的課題として理解し、負荷装置としてどうあるべきか?をK.Sさんと一緒に熟考しました。その内容をもとに製品仕様や新機能の仕様に落とし込んでいきました。
既存のソフトウェアでどのように新機能を実現するかという点においては、A.Tさんとの密な連携が不可欠でした。既存製品を深く理解し、それに合うように新たな機能を追加していく過程は、非常にやりがいがありました。
A.Tさん、ファームウェアの大規模な変更は大変だったと伺っています。
はい。従来のCV電源がある中でCCを組み合わせ、かつ従来の使い勝手を維持する点が最も難しかったです。特に、CVとCCは「水と油」のような関係で、両立させるには多くの工夫が必要でした。
CVは定電圧なので、負荷が変わっても電圧を一定に保つように動く一方で、CCは定電流なので電流を一定に保つように動きます。この相反する動作を同じハードウェアで実現するため、最終的には、1つの電源制御部分のファームウェアに対してUI部分のアプリケーションをそれぞれ独立した動作モードとして3つ作り上げることで、ソフトウェア間の競合を避けることができました。
これにより、基本ベースは一つでありながら、アプリケーションとして機能を拡張し、使い勝手を向上させることができました。
K.Sさん、お客様の要望と既存ハードウェアとの制約の間で、どのようにバランスを取られたのでしょうか?
まさにそこが難題でした。もともとは CV に最適化されたハードウェアですから、CC として使いたいお客様からの要求の中には、実現が難しいものも多々ありました。その中で、ちょうど良く折り合いがつくCC制御系の設計や、トレードオフを補完するような機能設計が重要でした。
例えば、応答速度は速ければ速いほど良いのですが、負荷によっては発振しやすくなるため、お客様が実際に使える範囲で安定性を確保する「ダンピング機能」を追加しました。お客様の負荷特性に合わせて周波数帯域を調整できるよう、現場の声を取り入れた設計になっています。
ダンピング機能
本機に接続する回路によっては、電流波形が振動することがあります。この振動周波数にダンピング周波数を合わせることで、振動を減衰(ダンピング)させる機能です。


A.Tはユーザーインターフェースとファームウェア設計を担当。
CRモードも後から追加されたと伺いましたが、これもお客様の声からですか?
そうですね。当初はCC電源として開発を進めていましたが、お客様との対話の中で、CR(定抵抗)モードの需要も非常に大きいことが分かりました。CRモードは、回生可能な抵抗負荷装置となるモードです。発熱や電気代を抑えつつ、最大設定分解小数点以下2桁の微調整可能な高精度な抵抗負荷として活用できます。これもまた、お客様の声を反映した結果です。
開発チームの皆さんの密な連携が、この製品を支えているのですね。
その通りですね。W.TとA.Tは同期で、K.Sも年齢が近く、非常に良いチームでした。毎日、ソフトとハードが情報交換しながら、お客様の声をフィードバックして作り上げていきました。彼らの主体性とチームワークがなければ、この製品は完成しなかったでしょう。
そうした苦労を経て完成したCCオプションの魅力は何でしょうか?
やはり「二刀流」であることですね。電源と電子負荷、どちらの動作も1台で完結できるため、例えばEV の普通充電やV2X での試験、パワーコンディショナーの連系/自立運転での試験などで試験効率が大幅に向上します。
これまで別々に用意する必要があった試験機器が、PCR-WEA 1台で済むのは大きなメリットです。
PCR-WEAは元々、直流電源としても使用できる「万能電源」と言われていましたが、CCオプションが加わったことで、さらにその万能さに磨きがかかったと感じています。直流・交流、電源・負荷、CV・CCと、これ一台で多岐にわたる試験に対応できるのは、他に類を見ない強みだと思います。
他の製品と比較しても、その優位性は際立っていますね。
そうですね。ほかにも例えば、当社の交流負荷装置「PCZ」と比較しても、ゼロクロス付近の電流波形歪みが非常に少ない点や、高品位な電流を維持したまま力率が可変できる点で進化しています。また、電力密度も圧倒的に高く、省スペース化にも貢献します。
これだけの高機能でありながら、お客様に新たな価値を提供しつつ、導入しやすい価格帯を実現できたことも、大きな特長です。既存のPCR-WEAの優れた基盤を最大限に活かし、お客様に新たな価値を付加しながらも、導入しやすい価格帯を実現できたことは、私たち開発チームにとっても大きな喜びです。
まさに1台あれば何でもできる万能な製品ですね。
ゼロクロス部分の波形比較
印加電圧100V、負荷電流10Aにおける電流波形。
PCZではゼロクロス部分に段がありますが、PCR-WEA2RのCCオプションではこれがなく、低歪で高品位な負荷電流波形を再現できます。
PCR-WEA2R

PCZ

04
今後の展望

では最後に今後の展望・野望についてお聞かせください。
PCR-WEAで培った技術や、もっと深掘りしたい技術を次の製品に組み込むことで、さらに発展性のある製品を作り続けたいです。当社の交流安定化電源は、今後も長くお客様に愛され貢献できる製品と思いますので、今後とも進化を続けていきたいと考えています。
当社の交流負荷は、まだまだ発展途上です。特に機能面では、より高機能・多機能化が求められています。
次期製品開発では多機能化に応えられるシステムにリニューアルし、要求に応えられる機能を搭載することで、交流電源、交流負荷の双方で付加価値を高めたいと考えています。
今後も高機能化・多機能化が進む中で、ソフトウェアの拡張性を高め、お客様が直感的に使えるUIを追求していきたいです。取扱説明書を読まなくてもわかるような、使いやすいインターフェースを目指します。多機能化と直感的な操作性の両立は難しい挑戦ですが、そこにこそ価値があると考えています。
本製品の開発を通して、もはや交流や直流、電源や負荷、そういった概念なしに 1台で何にでも使える製品を作る技術ができたと思います。今後の製品では、さらなる多様な用途や要求を実現する新しい制御や機能を開発したいです。
また、それをどうやって使ったら、お客様の困りごとや、まだ気づいていない潜在的な課題を解決できるのかも考えていきたいです。
菊水がお客様の良きパートナーであれるように、今後も新たな挑戦を続けていきたいですね。PCR-WEA CCオプションは、まさに皆様の技術とお客様への想いが詰まった製品だと感じました。本日は貴重なお話をありがとうございました!



