皆さんは、エンジニアとして大事な資質は何だと思いますか? 技術力?知識や情報収集力?それとも独創性?いやいや、連日の徹夜をものともしない体力でしょ? どれも一理あって、重要な項目かと思いますが、それらと同じくらい私が重要…

コラム

いい仕事の半分は、技術力以外でできている

公開日:2016年 12月 この記事の公開日をご確認ください。製品、価格、技術に関する情報は最新の内容ではない可能性があります。

皆さんは、エンジニアとして大事な資質は何だと思いますか?
技術力?知識や情報収集力?それとも独創性?いやいや、連日の徹夜をものともしない体力でしょ?
どれも一理あって、重要な項目かと思いますが、それらと同じくらい私が重要だと思っているのが、きちんと「打ち合わせ」ができる能力です。

試作機は全滅

今から36年前、私が新卒で入社してから半年くらいたった頃の経験です。
私は特注電源の開発チームに配属されました。当時は特注(OEM)電源の需要が多く、社内の設計工数が不足していたため、設計外注さんに依頼して製作する機種が、少なからずありました。そしてある日上司から、設計外注さんが製作した電源の試作機が納品されるので、動作確認をするように指示を受けました。

翌日の夕方、生産部の作業机に10台のスイッチング電源が並んでいました。ACプラグも取り付けられた状態でしたので、まずは通電と思い、コンセントにプラグを差し込みました。ところが一瞬で「パシュッ」という音と小さな火花と共にヒューズが切れました。「えっ?」と思いながらもう一台。2台目も同様でした。
すぐにこのことを上司に報告しました。上司はその場で設計外注さんに電話をして、大きな声を出していました。どうやら組み立てただけで、火入れ(通電)はしていないということだったようです。

突貫で再設計

上司は電話を切って、私に指示を出しました。
「壊さないようにして火入れして、動作確認をしなさい。」
「壊さないように」って、プラグ刺した瞬間に飛んでしまうのに、と思いながら、とにかく構造を把握しないことには始まりません。まずは回路図とにらめっこです。スイッチングレギュレータ用制御IC MB3759・・・なんですかコレ?解らないことばかり。いろいろ調べました。部品のこと、回路のこと、その他諸々。納品から二週間くらい過ぎてしまいましたが、なんとか10台が動作する状態にはなりました。しかし仕様を満足するものではありませんでした。

このままではお客様に納品ができません。仕様を満足するための改造が始まりました。スイッチングトランスの巻き方から再検討です。そして基板も再設計です。特注(OEM)製品の納期は絶対厳守。約一か月の突貫作業になりました。
どうにか作業の甲斐あって、指定納期に初回ロットの10台を納品できました。納品時には営業さんに同行。その時に聞いた、納品先の設計者の方の言葉を今でも忘れられません。
「さぁ、電源入れて動かせるぞ。楽しみだ!」

この特注電源は+5、±12、+24の固定4出力のスイッチング電源でした。その後総出荷台数は1万台を超え、12910台になりました。用途は卓上型の仮名漢字自動変換機能付き日本語業務用ワードプロセッサです。当時の価格は270万円(!)。

時代の最先端をゆく製品の電源という重要な部分を担うことができて、とてもやりがいのある仕事でした。かなり忙しかったのですが、日々新しいことが現れてきて、それを吸収していくことが面白く、とても楽しく仕事をしていたように記憶しています。そしてその後の自分の仕事の進め方にも、とても影響のある仕事でした。

結局何がダメだったのか?

この仕事の中で学んだのは、スイッチングトランスの巻き方、部品の選考、基板のパターン設計、熱設計、ディレーティングの取り方といった技術的な知識に加えて、一緒に仕事をする人とのコミュニケーションであったのかと思います。
設計外注さんが納めた試作機がうまく動作しなかったのは、設計外注さんの技術力が云々ではなく、こちらの指示伝達や相互の情報共有が上手くなかったことも、失敗要因として大きく働いていたのだと思います。

当時は(今もある?)、かなりザックリした指示だけして、後は納期を待つという、信じられないような発注の仕方も少なくなく、その日になって大慌てということがありました。この時の仕事も、よくよく後になって調べると、かなりアバウトな感じで始まっており、それに応じた結果(初回試作全滅)になっていたわけです。

打ち合わせの心得3訓

そういったわけで、私的な「打ち合わせ」の心得として学んだことは次のようなことです。

議事録を必ず残す
打ち合わせをしたら、議事録は必須です。ただし一方的な議事録(メモ)は意味がありません。書き起こしたら必ず先方にも提示して、双方が了解した記録として残しましょう。

制約がある部分、自由な(任せる)部分を明確にする
指示内容としては、どういった状態のものをいつまでに製作するのかを明示するとともに、設計上制約がある部分と、自由裁量(お任せ)の部分をはっきりとさせましょう。基本回路図だけ渡して「あとはよろしく」とやると、ほぼ間違いなく「これじゃない!」というものが上がってきます。

日程表も共有
仕事を進める上で日程表がない、ということは考えにくいのですが、「共有」されないということが往々にしてあります。納期は決まっているが、開発フェーズ毎のマイルストーンが見えないと結局進捗管理ができず、最後の最後に馬力で帳尻合わせ(夏休みの宿題状態)ということになります。なので、日程表についても議事録と同じく、双方が了解した内容で(マイルストーン毎に)確認しあえるようにしましょう。

小規模な開発なら一人で全てやってしまうこともできますが、それなりの規模の開発はチームでおこなうことになります。こういった開発においては個人の技術力も重要ですが、それと同じくらい「コミュニケーション」も重要です。しかしこういった仕事を進めるための「コミュニケーション」方法は、教わるという機会がありません(ほとんど先輩の見様見真似でしょう)。

なので、若いエンジニアの皆さんには、技術的なスキルアップとともに、ぜひチームで仕事を進めるためのHOW TOも学んで欲しいなと思います。いい仕事の半分は技術力以外で出来ている、と思いますので。

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