コラム

アドバイスが役に立たない理由

4月ですね。この時期になると多くの会社に新人さんが入ってきます。これを読んでいるあなたも、もしかしたら新人さんでしょうか。これから色々あるかと思いますが、無理のない範囲で頑張ってください。 さて、新人さんに求められる資質 […]
投稿日-2017年4月

 

4月ですね。この時期になると多くの会社に新人さんが入ってきます。これを読んでいるあなたも、もしかしたら新人さんでしょうか。これから色々あるかと思いますが、無理のない範囲で頑張ってください。

さて、新人さんに求められる資質(というか気構えかな)として「元気さ」そして「素直さ」があるように思えますが、ときに、この「素直さ」というのがあだになることがあるかも?というお話です。

「素直さ」は原則大事です。知らないことの方が圧倒的に多いわけですから、職場の上司や先輩の助言はありがたく拝聴すべきでしょう。しかしです。たとえば新人のあなたが何らかの問題に直面した時、上司や先輩はあなたの今の立ち位置に100%同期することはありません。同じ時空間(時間と座標)に居られるのは常に一人だけです。つまり事象によって引き起こされるものの見方、考え方、感じ方があなたと同じになることは理論的にありえないのです。

ある歌に、「私はあなたじゃないから、同じものを見ても同じように感じるかどうかわからない」といった内容がありますが、これは仕事においても同じではないのか。転じて、問題に直面したあなた(の感じていること=情報)とシンクロしていない他人(上司や先輩)のアドバイスは、常に有益なのだろうか?という疑問が沸いてきませんか?

今回のお話は、私がその答えを確信した事件です(笑)。例によってタイムマシンに乗って、私が入社して3年目、後輩がひとり付いて二人三脚で仕事をしていた頃に戻ってみます。

引継いだ仕事で問題発生

私たちの部署は2〜3人のチームが三つあって製品開発にあたっていました。その中のひとつのチームでスケジュールがかなりタイトな状況が発生したため、上司の判断でOEM製品1モデルを私たちのチームが引き受けることになりました。引き継ぎの打ち合わせを開催し、内容は下記のようなことでした。

  • ・OEM製品 1モデルを2台製造してお客様に納品する。
  • ・回路設計は終了。パーツ(部品、基板、筐体)の発注も済んでいる。
  • ・組配から火入れ、性能出し、仕様確認までを実行してほしい。

日程としては5日間、月曜日スタートで金曜日終了。翌週の月曜日に製品検査を受けて火曜日に納品というギリギリのスケジュールです。

10130057

打ち合わせから2週間後、着手の日がやってきました。月曜、火曜の組配は順調に進捗。そして水曜日からの火入れも良好に進んでいたのですがメインのスイッチング回路で問題が発生。原因は今回初めて使ってみたという、ジャンボトランジスタ(写真)。

TO−3を一回り大きくした外形のものです。
スイッチングレギュレータのスイッチングトランジスタとして採用したものです。これが熱くなったときの放熱が不十分なのです。回路設計はできていたけれど、熱設計は完全ではなかったようです。私と後輩、さてどうしたものかと腕を組んでいるところへ、このOEM製品であるスイッチングレギュレータの設計者が登場。

「どお? 順調に進んでます? 新規採用のジャンボトランジスタはうまく動いてますか?」
「それが、うまくありません。放熱が不十分なようです。」

そう私たちが答えると、ちょっと考えて、

「手前のヒートシンクが風の通りを邪魔しているから4cm位削除しよう。」

そうすることによってジャンボトランジスタのヒートシンクへ十分な風が流れるようになるので放熱できるはず、という見解でした。
「アドバイスありがとうございます。」私たちは礼を言い、ヒートシンクを取り外し、工作室へ向かい、ヒートシンクの切断加工をし、再度の実装、放熱の確認をしました。

アドバイス通りにやってみたら

ところがここで、問題が更に深みにはまります。この対策があまり効果のないどころか、削ってしまったヒートシンクに取り付けられていた半導体の温度が上昇してしまうという悪影響も現れることになってしまいました。

問題が起きると時間の過ぎるのがとても速くなります。もう金曜日になっていました。私たちは考え方を変えて、ジャンボトランジスタのヒートシンク構造の見直しと、ドライブ回路の見直しをしようということにしました。そしてその日の午後、再び設計者登場です。

「ジャンボトランジスタの放熱はどうなりましたか?」
「手前のヒートシンク削ってみましたが、ダメでした。これから他の方法で対策をしてみるところです。」
すると、
「なんで手前のヒートシンクを削ってしまったのですか、意味がないと思います。構造を変えた方がいいです。」

私と後輩は顔を見合わせて、言葉が出ませんでした。
先輩が立ち去った後、後輩がぽつりと言いました。

「ヒートシンクを削ろうって言ってましたよね。」

アドバイスとの正しい付き合い方を学ぶ

今となってはどうしようもない。
私たちには来週の月曜日に、製品検査を受けなければならないという現実があるのみ。
ヒートシンクの厚さを変更したものを製作し、手前のヒートシンクも作り直しました。
ジャンボトランジスタのドライブ回路も電力損失が小さくなるように見直しました。これらによって放熱の問題はなんとか解決できました。

最後に電気的仕様の確認も終了し、提出用の試験成績表を作成しました。
時は、日曜日の午後5時。休日出勤をしなければ、間に合わすことができませんでした。先輩が設計したスイッチングレギュレータの動作確認中に発生した放熱問題と、その解決方法として頂いた先輩のアドバイス。この先輩に振り回された一週間でした。

私たちはこの件の後、先輩から、しいては上司からのアドバイスを鵜呑みにするようなことはしなくなりました。また逆にアドバイスをする立場になった時は、互いの視点に差異があることをふまえて(「親身になって」と言ってもいいかもしれません)それを行うようになりました。

冒頭の繰り返しになりますが、アドバイスを「素直に」聴くことは大事です。しかし、それをそのまま鵜呑みにするのはどうかと。呑み込む前に、いったん自分の頭で考えて「咀嚼する(=疑問を持つ)」ことが大事なのかと思います。思考停止と直結した素直さは考えものです。
アドバイスというのは、実はその中身が云々ではなく、それは考えるきっかけであり、素材にすぎないということですね。ぜひ、そのことを覚えておいて欲しいと思います。

余談ですが、休日出勤した土曜日・日曜日は社員旅行の日でした。
私はその宴会でバンド演奏をすることになっていました。リードギターの部分は、練習の時に録音しておいたカセットテープからうまくミキシングして乗り越えたと、バンドメンバーから聞きました。
やっぱり演奏したかっゼ!!

1つ星2つ星
この記事が参考になったらクリック
秋山

執筆者: 秋山

[主な製品開発実績] 直流安定化電源 PAK-Tシリーズ、PAK-Aシリーズ、PAD-LETシリーズ / 高速プログラマブル電源 PAXシリーズ、PBXシリーズ / 充放電バッテリテスタ PFX40W-08

お気軽にご質問・ご相談ください

カタログダウンロード一覧を見る
導入検討中・見積り依頼メールで問い合わせる
close

検索

サイト内の記事と製品を検索

製品のみを検索  サポート記事から検索