世には様々な職業があり、その職域(業界)の中で通じる「専門用語」や「業界用語」があります。もちろん私の職場である電気業界にもあります。 言葉というのは(言うまでもありませんが)大変便利なものです。特に概念や仕組みを表すよ…

コラム

本当は怖い専門用語・業界用語(前編)

公開日:2017年 5月 この記事の公開日をご確認ください。製品、価格、技術に関する情報は最新の内容ではない可能性があります。

世には様々な職業があり、その職域(業界)の中で通じる「専門用語」や「業界用語」があります。もちろん私の職場である電気業界にもあります。
言葉というのは(言うまでもありませんが)大変便利なものです。特に概念や仕組みを表すような用語は、平易な言葉に置き換えて長々説明するよりも端的に相手に伝えることができます。しかしそれが「怖い」ところでもあります。

とりわけ業界に長くどっぷり浸かっているベテランほど、実は危うかったりします。かつて電気業界が「イケイケ(これ通じるかな?)」だった頃、それぞれの専門領域は縦割りで、それぞれが自分の領域のみを深堀していればよし、隣のことは知らん、という風潮でした。しかし現在は、技術革新のために、隣接分野はもちろん、異分野を交流させるような仕事や人の流動化が当たり前のように起きています。
なので、自分が属する分野(職場)で普通に使っている用語や表現が、異分野の人に伝わらない、もしくは誤解されるようなケースが、昔よりも起きやすくなっているかと思います。特にわたしの感覚としては「略語」はかなりの確率で地雷になり得るのではないかと。

そこで今回のコラムでは、私が体験した用語・表現に関するプチトラブル(恥?)をご紹介したいと思います。みなさんにとって「用語という地雷原」をうまく回避するヒントになれば幸いです。

<ケース1>電変(でんへん)

私は20年程前にEMC試験器を製造する会社から、菊水電子がEMC関連事業を行うとの事で入社しました。以前勤めていた会社では、交流または直流電源に接続される機器の入力電圧を変動させて挙動を調べる試験の事を「電源変動試験」と呼び、試験以外でも変動させる事を「電源変動」や省略して「電変」と呼んでいました。なので菊水電子に入社してからも当たり前のように、「電源変動」、「電変」といった言葉を使っていたのですが、特にプロパー(生え抜き)の菊水電子社員の方になかなか通じませんでした。

菊水電子は電源装置を製造している会社です。菊水電子社内では「電源変動」と言えば、電源の安定度を表す特性(※1)の一つを表す用語です。また、短縮形である「電変」は、電源装置の(交流)入力電源電圧の変更を意味する略語です。(※2
今でこそ電源電圧を変動する試験を「電源変動」や「電変」と言っても伝わるようになりましたが、私の入社当時は(前職場で)使い慣れている用語が、(菊水電子社内で)違う意味で使われていましたので、「こいつ、何を言っているのだ?」という顔をされたのは当然と言えば当然でした。

※1: 電源変動には電圧と電流があり、「交流入力電圧の±10%(例えばAC100V入力の場合、AC90V〜110Vとなります)の変動に対する、出力電圧(または電流)の変動値。」となります。
※2: 例えば、AC100Vでしか動かない機器の入力電圧をAC200Vで動くように改造することを「電変」と呼んでいます。

<ケース2>高圧(こうあつ)

最近ではだいぶ慣れましたが、私は人前で話す時は結構緊張します。若いときは特に緊張しやすく早口であり、話している最中にトラブルがあると一気にテンパってしまうのです。
この例は、緊張も手伝い、しどろもどろになってしまったケースです。

前勤務先でのことです。ある顧客会社様が受注したシステムに(前勤務先の)製品が組み込まれる案件があり、当該製品のみについて、その説明をおこなう事になりました。さほど複雑な装置ではなかったため、緊張しながらも何とか順調に説明をおこなうことができました。
そして終わりかけたころに事件はおきました。「このパネルの裏には高圧がかかっていますので注意してください。」と説明した時、顧客会社様の主担当の方から「ちょっと待った」の指摘が・・・。一気にアドレナリンが分泌されるのを感じました。「このパネルの裏には高圧がかかっていますので注意してください。」のいったい何が悪かったのでしょうか。

電気の世界では「高圧がかかります」は良く使う表現です。「高圧」と表現しても「高電圧」と理解していただけるケースが殆どですし、主担当の方も私の説明で「『高圧』が高電圧であることは理解している。」との事でした。それでも指摘をしたのは「この製品は、高電圧回路とコンプレッサー等の圧縮機を使ったシステムであり、装置を理解していない若手もいるので、高圧と高電圧は明確に使い分けてください。」という指摘でした。確かに「高圧」を英語でいえば「High pressure」です。私が意味している高電圧「High voltage」とは異なるものです。システムの圧縮機の部分は顧客会社様の担当部分でした。私は、システム概要を見た時に「コンプレッサーがあるな」程度で、実はあまり気にしていなかったのです。

説明途中で中断されたため一気に緊張が加速し、説明は更に早口になります。「高電圧」も言い慣れていませんでしたので、「高圧、あ、高電圧」と何度も言い直しながら、散々な説明となってしまいました。そのような事件の後「今後は高電圧と表現しよう」と心に決めました。ところがインターネットで「高電圧」をキーワードにして部品を検索すると、かえって見つからないことがあったりします・・・。「高圧」と「高電圧」の混用は根が深そうです。なので、いまだに「高圧」も使っています。
余談ですが、菊水電子には安全規格試験のための「耐電圧試験器」という製品もあります。これも昔は「耐圧試験器」と呼んでいました。しかし同様の理由で、ある時点から「電」を付けて「耐電圧」と表記するようになりました。

いかがでしょう?みなさんの職場でも、こういった漢字の「略語」がないでしょうか?

繰り返しになりますが、こういった用語は慣れると非常に便利です。気心の知れた仲間なら、何も考えずに「◯◯でよろしく!」で問題が起きることは稀です。
しかし、職場外になると「前提条件」つまり、TPO、文脈(前後関係)が変わるのです。いつもの調子で発した「用語」が思わぬ地雷になる危険性があります。
後編では、「前提条件」とりわけ「相手が誰か」という視点も加えた「表現」にまつわる例をいくつかご紹介したいと思います。

ところで「TPO」って通じてますよね?
東京フィルハーモニー交響楽団(Tokyo Philharmonic Orchestra)ではないですよ。

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