コラム

計測トラブルバスターY氏の事件簿(2:前編)

こんにちは!「計測トラブルバスターY氏の事件簿」の2回目になります。キクスイのサポートダイアルで、日々お受けするお問い合わせの事例等を元に、当社製品を使う上で「現場で活かせる実践的な知識」をお伝えできればと思っております […]
投稿日-2017年6月

 

こんにちは!「計測トラブルバスターY氏の事件簿」の2回目になります。キクスイのサポートダイアルで、日々お受けするお問い合わせの事例等を元に、当社製品を使う上で「現場で活かせる実践的な知識」をお伝えできればと思っておりますので、よろしくお願いいたします。
今回は「電源と通信ができない!」というお悩みを抱えたお客様をサポートして参ります。

電源との通信に関するお問い合わせの「あるある」

「明日納品なのに思い通り電源と通信できない。なんとかしてくれ!」
「取説通りにコマンド送っているのに動かないんですが・・・」
「今まで使えていたのに急に使えなくなった!仕事で使っているので困るんだよ!」
「電子負荷とは通信できるのに、交流電源とは通信できない。なぜ?」
「マイコンから制御したいので、通信プロトコルとコマンドの詳細を開示願います。」

よくあるお問い合わせの例です。こういったトラブルがあった時、焦ってあちこち(思いつきで)いじっても解決せず時間ばかりが過ぎていきます。パソコンやPLCから通信で電源を動かしたい場合、落ち着いて順を追って確認していかないと、ほぼ解決には至りません。

そのために重要なことは、基本を知っていること。トラブル解決の突破口は、問題を起こしている現物とリファレンス(基本知識)の差異に気がつくかどうかにあります。
ということで、キクスイの直流安定化電源PMX-Aシリーズを題材にして、パソコンから通信インターフェースを使って制御する際の基本とそのチェックポイントをご説明したいと思います(写真1)。

(写真1)パソコンとPMX-Aシリーズ

写真1 パソコンとPMX-Aシリーズ

なお、今回は内容がやや長くなりますので、前編・中編・後編の3回に分けての掲載となります。あなたが素晴らしい魔法使いになるための修行の第1歩です。しばしの間、話のくどい年寄りにお付き合いくださいませ(笑)

電源とパソコンの通信接続は?

パソコンから電源を制御するには、何らかの通信ケーブルでパソコンと電源を接続する必要があります。

「え?、イマどきはBluetoothかなんかで、ペアリングすれば繋がるのが当たり前ではないの?」、と思う方もいらっしゃるかもしれません。しかし、スマホ等と違って業務用システム等に組み込まれて使われることを考えますと、現時点では有線接続の方が(特に安定性・安全性の面で)有利な場合が多いのです。もちろん、LAN経由でWi-Fiルータを使えば原理的には無線接続できますが、ここではまず、基本の魔法をキッチリと押さえましょう。

PMX-Aシリーズでは標準でRS232C、USB、LANの3つの通信インターフェースを備えています。それぞれのインターフェースには使い方によって向き不向きがあります。
表1にそれぞれのインターフェースの長所と短所をまとめてみました。

表1

表1 各種インターフェースのメリットデメリット

今回は、他の当キクスイ製品でも標準装備されており、すぐ使えそうな割にハマることが多いRS232C(=シリアルポート)を使って通信してみましょう。

準備するもの

「そんなことは分かってる」、「さっさとつなぐ方法教えてよ」という声が聞こえそうですが、冒頭に申しました通り今回のお話は「基本」のご説明です。分かってるつもりでも、意外と見落とす事項もありますので、ここは「再確認」という意味でお付き合いください。
さて、RS232Cで通信するには以下のものを準備する必要があります。

(1)ハードウェア

・パソコン(Windows7以上が望ましい)

Windows7やWindows10が動けば大丈夫です。「XPや2000だって使えるよね?うちの会社普通に使っているけど」という方もいらっしゃるかもしれませんが、通信に使用するミドルウェアがインストール出来ずかえって面倒なことになる場合があります。またセキュリティ面でもサポート切れのOSをわざわざ使う必要はないかと思います。もしどうしても使うなら、古いOSを使うために別の知識が必要です。

・シリアルポート(またはUSB-RS232C変換ケーブル)

現在手に入るノートパソコンではすでにRS232C(=シリアルポート)は過去の遺物とされ、標準ではついていない機種がほとんどです。デスクトップパソコンの一部で搭載されている機種もありますが(写真2)、通常はUSB-RS232C変換ケーブル(写真3)を使用するのが賢明です。変換ケーブルは市販で数千円程度から購入可能です。

写真2

写真2 RS232C(シリアルポート)を搭載したパソコンの背面コネクタの例

写真3

写真3 USB-RS232C変換ケーブルの例(ラトックシステム社製 REX-USB60F)

・クロスケーブル

シリアルポートと電源装置に装備されているコネクタは、両方共「オス」コネクタがついています。通信を行うには互いのTXD(送信データ)端子とRXD(データ受信)端子を結ぶ必要があるので、「クロスケーブル」と呼ばれる、オスコネクタを持つ機器同士を接続するケーブルを使用します(写真4)。

写真4

写真4 クロスケーブルの例

単なる「メスーメス変換アダプタ」ではピン配置がクロスになっていないケースがありますので、注意が必要です。PMX-Aシリーズの通信インターフェースマニュアルに、どのような内部結線のものを使用すれば良いか記述があります。

https://kikusui.co.jp/kiku_manuals/P/PMX/i_f_manual/Japanese/03-Intf-2-rs232.html

計測トラブルバスター(2)_図1

図1 クロスケーブルの内部結線例

クロスケーブルに関しては「具体的なメーカー名と型番を教えて下さい」というお問い合わせを、非常によく頂きます。しかし、ケーブルメーカではけっこう頻繁に後継品への変更が行われますので、型番だけでは代替えができるのかがわからず、結局途方にくれることがあります。
ケーブルのカタログには内部結線がほぼ必ず掲載されていますので、面倒がらずに仕様を確認することをおすすめいたします。最低限2Pin-3Pin間がクロス(たすきがけ)接続され、7pin-8pin間がジャンパされていることをチェックすれば使用できます。

(2)ソフトウェア

・VISAライブラリ(またはターミナルソフト)

パソコンのシリアルポートでデータを送受信するには、VISAライブラリ(「びざ らいぶらり」と読みます)と呼ばれるミドルウェア(通信を行うため、ハードとの仲立ちを行うソフトウェア)か、ターミナルソフトと呼ばれる、シリアルポートで文字をやり取りするためのソフトウェアが必要です。

今回は、当社で無償配布しているKI-VISAライブラリを使用して通信しましょう。当社製アプリケーションソフトを使用する際や、ご自身でプログラムを作る場合に必要となります。
もちろん、NI-VISAやKeysight VISAなど他社のVISAやターミナルソフトを使うこともできますが、今回は説明の都合上省略いたします。Windows7およびそれ以降でターミナルソフトを使う場合はフリーソフトウェアの[Tera Term]が有名でおすすめです。

KI-VISAは以下のリンクからダウンロードしてください。
https://kikusui.co.jp/dri-fir-upd/ki-visa/

インストーラは32bit用と64bit用があります。ご自分のパソコンがどちらかわからない、という場合はスタートメニューから「コンピューター」を選んで右クリックし、「プロパティ」を表示すると確認できます(写真5)。

計測トラブルバスター(2)_写真5

写真5 コンピューターのプロパティ

この例では、「32ビット オペレーティング システム」とありますので、32bit用VISAをインストールすれば良いことがわかります。
しかし、ここで注意事項があります。それは「すでに他社のVISAが入っているパソコンにはKI-VISAをインストールしてはいけない」ということです。これはKI-VISAだけでなく、他社のVISAでも同様の制約があります。

VISAが既在の場合、インストール中にアラートが出るのですが、英語表示ということもあり、ついうっかり「はいはいはい」とインストールしてしまい、思わぬ不具合に見舞われることが往々にしてあります。そうした場合は、両社のVISAをアンインストールした後に再インストール、という無用な手間が発生しますので、十分ご注意ください。
下記は、NI-VISA(ナショナルインスツルメンツ社製)が入っているパソコンにKI-VISAをインストールしようとしたときの確認画面の例です(写真6)。

計測トラブルバスター(2)_写真6

写真6 インストール確認

このような確認が出た場合はよく英文を読んで、インストールをキャンセルしましょう。この例では、緑の枠で囲んでいる「Yes」をクリックするとインストールせずに終了します。

うまくインストールが終了すると、デスクトップに青い双眼鏡と怪しい緑のおっさんのアイコン(笑)が現れます (写真7)。青い双眼鏡が今回使用する「KI-VISA Instrument Explorer」です。
「x86」は32bit版という意味です。OSが64bit版であれば、ここが「x64」になります。

写真7

写真7 KI-VISAのユーティリティー

・USB-RS232C変換ケーブルドライバ

こちらはメーカーによって異なりますので、購入したケーブルの取扱説明書を「必ず」一読の上、付属のドライバをインストールしましょう(ここはよくハマるポイントです!)。
なおここで見るべきポイントは「先にドライバを入れてから接続してくれ」と書いてあるかどうか。

使用しているチップセットによっては、Windows標準のドライバで使えるものもありますが、逆に専用ドライバを先にインストールしておかないと「その他のデバイス」として認識されてしまい、そのままでは何度挿し直しても使えない、ということがあるからです。

以上が「準備するもの」です。既に説明が長いです(笑)・・・。
しかし、いかがでしょう?知ってるようで「あ、そうだったのか」というポイントもあったのではないでしょうか。
で、次回「中編」では、電源装置側の設定、およびVISAの設定の「勘所」をご説明いたします。ここにも「落とし穴」がありますよ。ぜひ続けてお読みいただければと思います。

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矢島

執筆者: 矢島

[専門分野] 低周波EMC規格全般 / 高調波・フリッカ計測技術 / アナログ回路設計(高精度計測) / アプリケーションソフト開発(C#、VB.net、Excel VBA) / [主な製品開発実績] 高調波/フリッカアナライザ KHAシリーズ / プレシジョンDCソース KDS6-0.2TR、標準信号発生器 KSG4310 /

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