産業用機器の場合、大きな電力を使う製品が多いために消費電力をVA値で表示する慣例があると思います。また、力率改善コンバータなどを積んでいないため、入力波形がコンデンサインプット型丸出しといった商品もありますが、時々工場の生産データ取りの際に「電力の値が製品規格に入らない」というクレームが上がってくることがあります。
これがなぜ起こるのかちょっと検証してみましょう。
ある計測器を負荷として交流安定化電源(PCR2000M)の場合と商用電源の場合とでそれぞれ測定してみました。

上の表で分かる通り、電源電圧自体は0.7%程度高いにもかかわらず、電流はrmsで-4.6%、尖頭値に至っては-7.9%以上も少なくなってしまっています。 また、電流が下がっているため、皮相電力も4%近く下がっていることが分かります。
それぞれの波形を比較してみても尖頭値電流が落ちているのが分かります。
- 系列1:電圧波形(単位:V)
- 系列2:電流波形(単位:A)
(1)PCR2000M+KPM1000 で測定した時の波形

(2)商用ライン(実験机のコンセント)
上記のグラフを比較すると、下のグラフの青い線(=電圧)がピークに近いところでひずんでいるのが分かります。これはなぜ起こるのでしょうか?
以下の図はIEC61000-3-3 フリッカ測定時の測定回路なのですが、Rとjxが入っていると思います。
これが、線路インピーダンスです。
線路インピーダンスの値は様々な配電系統を実測した値から求めた中央値であるといわれています。
この値は
RA = 0.24Ω jXA = 0.15Ω at 50Hz
RN = 0.16Ω jXN = 0.10Ω at 50Hz
ですので、合わせると0.4Ω+jx0.25Ωとなり、50Hzに対しては約0.472Ωの合成インピーダンスを持つことになります。
ここから計算しますと、上記線路インピーダンスの系統において、尖頭値電流における電圧降下は
0.472Ω×2.958(A)=1.39(V)
となりますが、実際にはコンデンサインプットの波形の場合、より高い周波数成分を含んでいますのでインダクタンス成分による尖頭値の電圧降下はこの値よりもずっと大きくなります。
この電圧降下が電圧ひずみの正体です。
このような回路で測定した電流は当然インピーダンスの低い系統で試験した場合に比べ小さくなりますので、製品の仕様を決める際には
- 小容量の機器であれば交流安定化電源の出力で測定する。
- 大容量の機器であれば配電盤に近く、ケーブルを太くして測定する。
などの注意が必要です。100Wもいかない機器だから・・・といって、評価の際に電源コンセントからとった値で製品の仕様を決めると、マージンが少なくなりますのでご注意を。


