燃料電池の発電効率は?
それでは燃料電池でどの位の発電効率が得られるだろうか?
先ほどガソリンエンジンはガソリンの持っているエネルギーの15%位しか車の駆動力にならないと言った。新鋭のガスタービン複合発電は、天然ガスの持つエネルギーの50%位を電力に変換している。少し難しくなって恐縮だが、電気化学の教科書に従って、燃料電池の効率を説明すると図3のようになる(2)。一般に温度Tの元でH2+1/2O2=H2Oのような化学反応が進むとすると、左辺から見た右辺のエネルギー変化をみると、エンタルピー変化ΔH、自由エネルギー変化ΔGとエントロピー変化ΔSの間に、ΔH=ΔG+TΔSと言う関係が成り立つ。先の水素と酸素の反応は左辺のほうがエネルギー状態が高いので、ΔH、ΔG、ΔSは全て負となるので、以後マイナスを付け正にして話を進める。
図3でFはΔGなどのエネルギーを電圧Vに変換するファラデー定数を示し、ここでは2である。水素と酸素が萌えて出す-ΔHのエネルギーの内、-ΔGは電気に変換できるが、-TΔSは熱にしかならない。つまり、水素と酸素の反応で最大限電力に変換できる割合はΔG/ΔH、つまり82%(ただし高位発熱量基準)となり、熱量電池で得られる最大発電効率となる。エンジンやガスタービン複合発電は熱機関であるので、カルノー効率の制約を受けるが、燃料電池にはこの制限が無い。電流を流さない時、-ΔGは実際の運転状態で電圧に換算すると
と書ける。
水素と酸素が完全に反応して水になれば、最大1.23Vの電圧を発生する。ここでΔG0は標準自由エネルギーを、Rは気体定数を、PH2、PO2、PH2Oは水素、酸素、水蒸気の分圧を示す。
以上は理想論で、実際の熱機関はカルノー効率*1を達成できないように、熱量電池も理論効率を達成できない。1500℃の最新鋭ガスタービン複合発電のカルノー効率は83%となるが、実際は色々損失があり50%位の発電効率しか達成されていない。
燃料電池も同じで、ΔG/ΔH=82%の効率を実際達成することはなく、現在開発されている燃料電池は30-50%程度の発電効率である。これは図3に示したように電流を流さなければΔG/ΔHに近い効率が得られても、電力を取ろうと電流を流すと、電気化学反応を起こすための活性化過電圧や、電解質や電極を電気が流れるための抵抗過電圧、多孔質な電極中を水素や酸素や生成した水蒸気が流れるための拡散過電圧など諸々の損失が発生し、セル電圧は0.7V程度に下がり、発電効率は30-50%になってしまう。
しかし、数十万kWと発電規模を大きくしないと高効率が達成できないガスタービン複合発電などの熱機関と違い、燃料電池は数十から数百kWと車に積むような小型のエンジンでも30%程度の高い発電効率が期待できる点に、車載用燃料電池や分散型電源を開發しようとする大きな魅力がある。
(2)恩田和夫、基調講演2、機会学会熱工学講演会講演論文集61ページ(1999)




