JIS規格からIEC規格を推測するには
前回(基本編1)で紹介した方法により、とりあえずJIS規格を見ることはできたかと思います。
(ご覧になっていない方は(基本編1)を先にお読みください!)
今回は、参考に取り上げたJIS C4421を使ってIEC61800-3の内容を推測する方法、秘伝の「賢者の呪文」をご紹介したいと思います(笑)。
賢者の呪文「IDTとMOD」
JIS C4421は序文にもある通り、「電力系統の違いなどによって技術的内容を変更して作成した」規格とされていますので、すでにIEC61800-3とは違う箇所があることがわかっています。(図1)
JIS規格の場合、特に日本固有の電源方式や電圧の違いから、そのままでは国際規格であるIECの内容を採用できないため、このような形になっている例が多くあります。こういった場合、国際規格の対応の程度が示されていますので、それを見ることで規格差異の程度を確認できます。
この例では2004年度版のIEC61800-3に対し、「MOD」と記載されていますので、IEC規格から技術的な変更が含まれた規格であることがわかります。ちなみに、IEC規格の内容を変えずに採用している場合は「IDT」と表記されています。
IDTの場合、基本的に技術的な内容は変えないのが基本ですが、IECの言い回しが不明瞭だったり、明らかに間違っている箇所があったりすることもあるので、その場合は制定段階で修正を行い、規格付属の解説書に修正内容や意図を記述しています。
違う箇所はどこだ?
さて、今回の規格はMODでしたので、技術的内容が違うことはわかりました。次はどこが違うのかを気にしつつ本文を読み進めましょう。読んでいくと、文中の電圧や電流にアンダーラインが引かれている箇所があります。ここがIECと違う点になります。
IECからの変更内容を知るには、附属書JCにある「JISと対応する国際規格との対比表」を見ると、どのような変更がされているのかがわかります。IEC規格では1000V、400Aで規定されている箇所をJISでは600V、100Aにしたようです。また、理由を見ると電気設備の技術基準に合わせて変えたことに加え、定格電流はテストサイトで実際に試験できることも勘案して変えているようです(JISって実用的!)
という具合に、とりあえず「どんな規格なのか?」を知るためにはJISCでの無償閲覧はかなり有効な武器になると思いますがいかがでしょうか?
適合確認にはやはり原文が必須
さて、ここまではJISでの閲覧のメリットを説明してきましたが、最後に大切な注意を一つ。この方法はとりあえず規格の概要を知るには問題ないのですが、CEマークの取得をするために第三者認証機関に依頼したり、CE自己宣言をしたりするにはやはりIECやEN規格の原文を購入しておくことが絶対に必要です。
それはなぜか? 守るべき規格は現地規格であり、JIS規格ではないからです。
欧州CEマーキングであれば有効なのは現地の規格であるEN規格が有効であり、中国CCC認証であればGB規格が有効な規格となります。いくら「JIS規格でIDTって書いてあったから」といっても誤植がゼロと言う保証はどこにもありませんので、今回説明した方法だけに頼って規格コミットの確認をすると後で大変な「おつり」が来ることがあります。また、JISCでの無償閲覧では「解説書」がついてきません。タダより高い物はありません。
魔界のルールを守って、より安全で確実な開発をしていただくことを願ってやみません。
以上で「基本編」は終わりまして、今後は、規格の成り立ち(どこで草案が作られ、どうやって検討が進むのかなど)や、規格制定の舞台裏(どこまで書けるかなぁ)などをご紹介していければと思います。