課題
モーターの試験する際に、異常電圧の発生や電圧上昇により正しい測定が出来なくなる場合があります。 このような、異常電圧および電圧上昇の原因の一つに、回生電流 による影響が考えられます。
回生電流の発生ケース
回生電流 の発生は、以下のようなケースで発生します。
ケース1モーター性能試験時モーター側で乱調が発生
- 制御ソフトの不具合
- 確度センサの断線や接触不良
- 異常試験での過負荷・過回転・負荷急変
ケース2減磁特性試験
- 過回転・急ブレーキ
回生電流 に起因する「異常電圧の発生」や「電圧上昇」により、何が起こるのか?
- 発生した電圧によりモーター自身が破損
- EUTの安全装置が動作して試験不能
- 周辺機器への悪影響発生
- 供給側の電源機器が保護動作で停止
解決
モーターで発生した回生電流や異常電圧を一定のレベルに制御する!
汎用性とコストパフォーマンスを両立する事例として、直流電子負荷を活用した解決方法をご紹介します。
電圧の変動速度が遅い場合(数十ms程度〜)
CV(定電圧)モードを使用します。電子負荷の動作モードをCVにセットし、制限したい電圧をOVPとして設定します。変化する電圧を直接抑制し、EUTや電源装置を保護します。
設定時のポイント
設定する値はEUTの最大電圧や電源機器の過電圧保護設定に対して、十分に低い値であることが重要です。
試験時の注意
上昇した電圧をOVPで抑制するため、電子負荷で吸い込む電流値が大きくなる傾向があります。使用する電子負荷の容量は、OVPで設定する電圧×吸い込む最大電流値を十分に賄える機器を選定する必要があります。また、CVモードを使用した試験では、電圧が高速に変化する場合、オーバーシュートが発生する場合があるので注意が必要です。
電圧の変動速度が速い場合(10ms以下)
CC(定電流)モードを使用します。回生電流を吸収することにより、上昇する電圧を抑制します。
設定時のポイント
STEP 1最初に電圧上昇の有無と回生電流のピーク値を測定します。
- 回生電流を確認するためインバータ側に電流センサを配置
- 電源側の電圧上昇とEUT側の電圧変動を確認するため、測定系を各電圧端子に配置
- 回生電力のピーク電流と電圧上昇の波形を測定
STEP 2電子負荷のモードをCCにセットし、事前に計測したピーク電流を設定値とします。
高速に電流を吸収することで、異常電圧や急激な電圧の上昇を抑制し、電源やEUTを保護します。ブロック図は、電源側の端子電圧に異常が発生した場合を想定しています。
試験時の注意
10ms以下の高速な変動にも対応可能です。しかしながらCVモードを使用する場合と比べ、事前の測定が必要なため若干試験に手間がかかります。また、直流電子負荷の容量は、EUTもしくは電源装置の電源リミット×回生電流のピーク電流を十分に満たす電力が必要です。