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省力化・自動化を見据えた電源変動試験システム

肥大化する電源変動のテストパターン、続々と持ち込まれる試験体に困惑する現場。 テストを効率化し評価試験の自動化を目指す。
投稿日-2021年8月

 

肥大化する電源変動のテストパターン、続々と持ち込まれる試験体に困惑する現場。
テストを効率化し評価試験の自動化を目指す。

パターンの肥大化に困惑

クルマの電子化が加速しています

<後藤>自動車に搭載される電装品の数は増える一方です。大小多数のモータやアクチュエータ、ECUやカーナビを初めとする多種のマイコン組み込み機器、そしてバッテリとダイナモが組み合わされて一つのシステムを構成しそれぞれがオンオフと変動を繰り返すわけですから、電源ラインの精度や安定度、即ち各電装品から見た電源環境は決して良いものではありません。

一方で、クルマは命を預かる乗り物ですからその動作は常に確実でなければなりません。このため、各電装品が電源変動というストレスに対して影響されないことを確認する電源変動のイミュニティ(耐性)テストが従来から行われています。具体的には特定の電源変動パターンを想定し電装機器の動作を確認するテストです。変動パターンは国際規格などで定められている部分もありますが、各自動車メーカさんが独自のテストパターンを提示して電装品のサプライヤにテストを求めるスタイルがほとんどです。

言い換えると、サプライヤさんはクルマメーカさんから提示されたテストパターンを使って自社の製品テストを忠実に行うことが求められます。ちなみに、テストは従来であれば一次サプライヤまででしたが近年はそれ以下のサプライヤでも行われる様になりました。

車載電装品電源変動試験

<野尻>そうした中で課題として浮かび上がってきたのが、変動パターンの肥大化巨大化で生じる作業量の増大です。電源の変動パターンは電装品が追加される毎、車の車種が増える毎に追加されます。と同時に追加前のパターンでもテストする必要があります。そのためパターンの数は増え続け、場合によっては数万パターンにも及んでいます。

結果としてテストに要する手間と時間は増すばかりとなり、全体のコストを圧迫しています。こうして、効率化と省力化が車載電装品用電源変動試験の当面の課題となっています。

インテリジェント・バイポーラ電源を核に据えたシステム提案

電源の試験は菊水さんの得意分野ですね

<後藤>我々は車載電装品用電源変動テストの効率化と省力化という課題に対してインテリジェント・バイポーラ電源<PBZシリーズ>を中心に据えたシステムを提案しています。
PBZシリーズは、小型軽量・高効率かつ高速な電源(直流アンプ)ですが、(1)バイポーラ出力、(2)多出力、(3)自在で柔軟な出力構成、(4)出力同期機能、(5)信号源内蔵、(6)波形生成とシーケンス機能、(7)低リップル低ノイズ、など電源変動テストシステムに求められる機能・性能を全て備えているからです。

バイポーラ出力は大きなリアクタンス(誘導性/容量性)負荷となる電装品に対しては必須ですし、多出力は+B,ACC,IGなど複数の電源系統を有する自動車向けには欠かすことができません。また、並列運転も可能など出力を自在に構成できるので、大小様々な電装品に対して柔軟な対応ができます。
最近では試験信号の高分解能化が進んでいますが、PBZはスイッチング+リニア方式により低ノイズ低リップルを実現しているので、試験に十分な信頼性と再現性をもたらします。

インテリジェント・バイポーラ電源PBZシリーズ

とりわけ、波形生成とシーケンス機能を持った信号源を内蔵したうえで、複数の出力間で出力が変化するタイミングをピタリと一致させる”同期機能“は変動試験に持って来いです。これらに波形作成と自動試験の専用ソフト(Wavy for PBZ)を組み合わせることで複雑なパターンも簡単に生成できます。

当社では従来から電源変動テスト用の電源や試験システムを供給してきました。そうした中で膨大な波形パターンの蓄積があるので、PBZのシステムについてもライブラリとして提供できます。
さらに、システムとしてご提供できるよう例えば瞬断を実現するボックスをはじめ様々な周辺機器の用意があります。 例えば瞬断試験は電源出力がオープンになる状態のシミュレーションなので、出力をゼロボルト(インピーダンス=0)ではなく瞬時に出力を切り離す(インピーダンス=無限大)必要があります。

同期運転使用例

自動化の要請にも応える

作業量が増えると自動化を検討したくなります

<野尻> テストに要する手間と時間の増大という問題を解決する手段として自動化は当然の流れと言え、これまでにも多くのご相談を頂いています。
実は、電源変動試験のようなイミュニティ(耐性)テストはEMC試験の中でも自動化が遅れている分野なんです。例えば、ノイズの発生量のようにシステムからのストレスを測るエミッション試験であれば、システムをセットして測定値をパソコンで読み取れば良いので自動化は比較的簡単です。

これに対して、イミュニティテストは試験対象にストレスを与えて対象が影響を受けない(正常動作する)ことを確認するテストなので、試験の間中ずっと試験対象の動作を監視していなければなりません。この”人が常時監視して異常が起きていないことを確認する“という部分の自動化が難しいんです。

そのため、「試験の間、複数の人間がずっと目視で監視して判定は未だに人力」といった手段が採られているのが実情なのです。ですが、人間がやることですので、例えば「テスト中に試験体に組み込まれたマイコンに異常を来したが、パワーオンリセットが働いて短時間で自動復帰したため異常を見逃してしまった」といったことも起こり得ます。お客様としてはこうした部分を自動化したいわけです。

<後藤>自動化のご要望に対して我々は人の目と耳は自動化できるというスタンスで望んでいます。画像解析や音声判定の技術を導入すれば実現できることだからです。細かい話になりますが、PBZシリーズの同期機能で得られる電源変化のトリガや、車のCANモニタ等と組み合わせる事ができれば異常の特定や原因の絞り込みなども素早く行えます。

また、複数の生産拠点でテスト作業を展開しているので変動パターンを一元管理したい。というように計測ネットワークに係わるご相談を頂くこともありますが、我々は何れについてもソリューションという立場に立ってコンサルティングやシステム提案を行っています。

菊水電子工業株式会社

執筆者: 菊水電子工業株式会社

計測と電源のエキスパート・カンパニー 菊水電子工業のスタッフによる執筆です。

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