第一話 あとがき
携帯できる電気製品を含め、ほとんどの電気製品は、直流と呼ばれる電力で動いています。直流の代表的なものが電池です。しかし電池には寿命があり、時間が経つに従って電圧が下がってしまいます。電気製品の開発や製造をする際には、そのような特性では困ってしまいます。
そこで一定の電圧を長時間取り出せる機器が必要になります。それを実現するのが「直流安定化電源(以降は「直流電源」とします)」です。これは商用電源(家庭に配電されている交流)を電力源にしていますので、長時間連続して使用することができます。また用途により様々な電圧、電流を取り出せるタイプがあります。
第1話では宇都木(先輩)がみなみに、電池と直流電源との違いを「出力設定の自由度」で説明しました。
しかしそれ以外にも下記の表のような違いがあり、仕事用としては、直流電源を使用する方が一般的、かつ合理的でしょう。
また直流電源は、専門業務で使う道具としては比較的単純な機器と思われがちです。取扱説明書を見ずとも、操作パネルを「なんとなく」さわれば出力が得られます。
しかしそれは直流電源においては、非常に危険な行為です。
宇都木が言う様に、直流電源が他の電気製品と大きく異なる点は「電気エネルギー」そのものが出てくることです。
なので、直流電源を使用する場合は、必ず前面パネルにある定格表示(例:0〜40V/0〜5A)を確認して、出力される電気エネルギーの大きさ(危険性)を認識するとともに、付属する取扱説明書で基本操作や注意事項を確認することが重要です。
最後に宇都木はみなみに、取扱説明書を読んでわからない部分を付箋でマーキングしてくる様に言いました。
これは、電気に不慣れな人にはかなりの苦行でしょう。はたして取扱説明書はどういう状態で宇都木の前に戻ってくるのでしょうか(ほぼ想像がつきますが)?
これは、電気を専攻してない異分野(機械や化学など)を出自とした方が、直流電源を使おうとして、戸惑われるケースを追体験してもらうトピックとして設定しました。
第2話では、この取扱説明書を材料に、直流電源を正しく使うためのヒントを示します。ぜひ続けてお読みいただければと思います。



