開発者
インタビュー

菊水電子工業 初ラインナップとなる双方向直流電源「PXBシリーズ」。
製品の企画・開発、量産まで携わった菊水電子 開発責任者とデジタル
回路設計担当者に、「PXBシリーズ」についてインタビューをしました。

AMさん

PXBシリーズ開発責任者
A.M2008年入社

HSさん

デジタル回路設計担当者
H.S2019年入社

AMさん

PXBシリーズ開発責任者
A.M2008年入社

HSさん

デジタル回路設計担当者
H.S2019年入社

まずは簡単に自己紹介をお願い出来ますか?
PXBシリーズの開発責任者のA.Mです。
製品の企画、開発から量産まで一貫して携わってきました。
H.Sです。
私は主にデジタル回路周辺の設計を担当させていただきました。
AMさん
A.Mさん、早速ですが「双方向電源」を開発することになった背景について教えてください。
背景としてはEVシフトにより、電装品の評価で双方向電源の需要が高まったことです。電動化により動力がエンジンからモーターに変わり、さらにそのモーターはエネルギーを双方向に変換するのでモータを駆動する電装品(インバータ、バッテリー等)には双方向の電流が流れます。

これらの電装品の評価では、双方向の電流を扱える電源が市場から求められて電力帯も10kW~数100kWまでEVの種類によって様々で幅広い電力のニーズがありました。当時菊水には双方向の直流電源、また数100kWに対応できる電源がなく、これから車だけでなくあらゆる移動手段が電動化すれば、さらに市場からのニーズは高くなると考えて、市場要求に充分に対応できる直流双方向電源を開発することになりました。
従来の直流電源と大きく違うのはどこでしょうか?
従来の直流電源と大きく違うのは、電力変換部の半導体スイッチの双方化ですかね。
概念図
概念図1
概念図2
具体的にはどのくらい前から始まったプロジェクトですか?
4年前くらいから、開発がスタートしました。
4年も前から開発が始まっていたのですね。4年の間に市場のニーズが変化したところもあるかと思います。開発当時の目指していた仕様と実際に完成した製品とでは何か違いがありますか?
大きい変更部分ですと、電力容量です。開発当初は、16kWの電力容量を3Uサイズで実現することを目指して、開発がスタートしました。

しかし、実際にユーザ訪問をさせていただきニーズを聞いてみると、一台16kW以上の電力容量が求められている事がわかってきました。また、当社は後発品になるので他社製品と大きな差別化も必要で、最終的に16kW→20kWに電力容量をグレードアップしました。
目指す仕様が変更になったことで、開発としてはさらに難しくなったと思います。
開発を進めるにあたって、一番苦労した点を教えてください。
やはり、高電力密度化、3Uで20kWの実現ですね。
PXB筐体
入力電圧が3相200Vで、3Uサイズで20kWの電力容量を持った双方向電源は他にないものですね。
*PXBシリーズは3相200V入力と3相400V入力の2タイプを用意しています
そうですね。他メーカーが実現できてないサイズということで、それを実現するために試行錯誤を繰り返しました。他メーカーに比べて同じサイズで1.5~2倍の電力容量になるので、それだけの高電力密度となると、実現するまでに様々な壁がありました。
どのような壁があったのでしょうか?
特に「部品冷却」「ノイズ低減」「絶縁構造」の3つが大きなハードルでした。冷却に関してはPXBはファンを使った強制空冷になり、試作前に熱シミュレーションで各ポイントの風速を把握し、事前設計では部品の定格温度を超えることなかったのですが、実際には想定通りに風が流れず、開発当初は常温(周囲温度25℃)ですら部品の温度定格を超えてしまってNGでした。

ここからシミュレーションと実機の差分を把握し、機器内部の風量のバランス、部品自体も効率よく冷えるように改善を重ねて50℃環境でも仕様を満足できるようになりました。
高密度実装って色々なハードルがあるんですね。
HSさん
では、H.Sさん。
デジタル回路で一番苦労した点を教えていただけますか?
デジタル関連ですと、並列運転のところですね。
PXBシリーズは10台までの並列運転に対応できるようになっていますが、そのシステムを実装することが大変でした。
デジタル制御的に10台を同時にコントロールすることが大変ってことですか?
そうですね。コントロールするだけなら簡単ですが、なるべく遅延なく10台全てをほぼ同時に出力するとなると大変です。
具体的には何を制御することで、遅延を無くしているのですか?
私も少し開発に携わらせて頂いたFPGAという部品を使って制御しています。
デジタル回路の集積化・高密度化をしたような部品です。FPGA同士で流す電流の指示値や出力するかしないか等の情報をやり取りしています。
凄いですね。乗数を変えるとか、そういう表現でいいですか?
乗数ではないです。FPGAはCLK(クロック)という信号を元に動作させているのですが、そのCLKの周期が早いため複雑な処理も瞬時に行うことができます。

当然、並列運転の台数が増えれば出力するかしないか等の処理にかかる時間も増えますが、高速処理を実現しているため、マスター機・スレーブ機間の出力遅延時間はほとんど気にならないものとなっています。
それでは、当社ならではというか、当社製品としてこだわった点を教えてください。
複数ありますが、特に重視したのが出力の高安定化ですかね。産業用電源で様々な負荷が接続されます。特に大きな容量性負荷での安定度を重視しました。
 

500uFのコンデンサを接続時の立ち上がり波形

PXB出力波形①

▲PXBの出力電圧波形

PXB出力波形②

▲他社製品の出力電圧波形

なるほど。PXBシリーズは、容量性に強いということですね。すごく良いですね!
最後に、次に挑戦したいプランがあれば教えてください。
私はデジタル回路に関する業務を担当していますので、出来る限りデジタル化された電源にチャレンジしてみたいです。今の製品だとアナログ回路とデジタル回路って、大体50%:50%くらいの感じで使われています。

その中でもフィードバック系・制御系の回路はデジタル部品が多く使われているのですが、アナログ部品もそれなりに使われているので、そこをフルデジタル化出来ないかと思っています(FPGAで吸収する等)。
フルデジタルですか!?
そうですね。FPGA等を使用すればより小型化が実現できるのかなと思います。
パワー部以外は全部デジタルなっているみたいな感じですね。
理想はそうですね、機会があれば少しずつデジタル化をしてみたいなと思います。
A.Mさんは如何でしょう?
私の方はPXBシリーズでは10台並列運転で200kWを実現しましたが、ユーザーからは、さらに大きな電力を求められています。そこで、まずは今の仕様よりもっと大きな電力に対応できるようにと考えています。
では、200kW以上の大電力への対応も期待できそうですね。
本日はありがとうございました。

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