直流安定化電源

直流安定化電源は、電子機器などの動作に必要な直流の電源を、商用電源ラインの交流から作り出すものです。その種類は、出力電圧を一定にする定電圧電源、出力電流を一定にする定電流電源、また両者を兼ね備えた定電圧定電流電源に大別でき、それぞれは出力電圧、あるいは出力電流の可変型および固定型に分けられます。

またその構成は、交流電圧を電源トランスへ加え、降圧または昇圧し整流器および平滑回路を通し直流電圧に変換した後、入力電圧の変動、負荷の変動、または温度変化などの要因に対しても、出力電圧または出力電流を安定に供給する制御回路からなっています。

安定化の方式には、シャントレギュレート方式、シリーズレギュレート方式、スイッチングレギュレート方式などがあり、それぞれシャントレギュレータ、シリーズレギュレータ、スイッチングレギュレータなどと呼ばれています。

また、これらの方式を組み合わせた電源もあります。電源本来の機能のほかに、可変型の電源の多くは、出力電圧あるいは出力電流をデジタル表示するメータを有しています。以下では、現在の電源の主な方式であるシリーズレギュレート方式とスイッチングレギュレート方式について説明します。

安定化の原理

定電圧および定電流電源の安定化原理を説明します。

定電圧電源

《図-1》に定電圧電源の基本回路を示します。図中、電源は負荷R 1に電力を供給します。制御回路は誤差増幅器の信号により負荷電圧を制御します。誤差増幅器は基準電圧V REFと、出力電圧V 0を抵抗R 1、R 2で分圧した電圧VSとを比較し、V REFとV Sとが常に等しくなるように制御回路へ信号を出力し、これらにより、出力電圧は安定化されます。

《図-1》定電圧電源の基本回路 《図-1》定電圧電源の基本回路

定電流電源

《図-2》に定電流電源の基本回路を示します。図中、電源、制御回路、誤差増幅器の動きは、定電圧電源で説明した働きと同様です。ただし、誤差増幅器により比較される電圧は、V REFと、出力電流I 0が電流検出抵抗R Sを通過することにより発生する電圧V Sです。つまり、V REFとV Sが常に等しくなるように誤差増幅器が信号を制御回路へ出力し、これらにより出力電流は安定化されます。

《図-2》定電流電源の基本回路 《図-2》定電流電源の基本回路

シリーズレギュレート方式

《図-3》シリーズレギュレート方式の基本回路 《図-3》シリーズレギュレート方式の基本回路

《図-3》にシリーズレギュレート方式電圧電源の基本回路を示します。この回路において、シリーズトランジスタQは、図-1の制御回路に相当します。また、交流入力、電源トランスT、整流用ブリッジダイオードD及び平滑用コンデンサCが電源に相当し、これをコンデンサインプット型整流回路と言います。
今、増幅器AおよびシリーズトランジスタQを理想的なものと仮定した場合、出力電圧V 0

と表され、R f、R i、V REFが安定であれば、出力電圧V 0は安定化されます。

また、Rfを変化させることにより出力電圧を可変することができます。この方式は、出力電圧を広範囲に変化させることができ、優れた安定度と過渡応答特性が得られ、リップル、ノイズの少ないことが特徴です。しかし、出力電圧を低く設定すると、シリーズトランジスタQのV CEが増加し、出力電流を大きくとると、Qのコレクタ損失が増大します。
それを避けるための一手法として、出力電圧V 0に合わせて平滑コンデンサの電圧V Cを変化させる方法があります。例えば、電源トランスのタップをリレー等の接点で変える方法などがありますが、現在主流となっている方法は、サイリスタ等半導体を使用し、電源トランスの交流出力の導通角を制御(位相制御)する方法です。

《図-4》サイリスタによる位相制御回路 《図-4》サイリスタによる位相制御回路

サイリスタを用いた位相制御形プリレギュレート方式の基本回路を《図-4》に示します。図中の位相制御回路は、電源周波数に同期したパルス位相変調器が直列制御トランジスタのV CEが高くなると導通角を狭く、V CEが低くなると導通角を広くします。つまり、V CEを一定に保つようにサイリスタを制御しますので、シリーズトランジスタQのコレクタ損失を大きく増大させることなく動作させることができます。サイリスタ制御系シリーズレギュレート方式の特徴は、応答速度が速い、ノイズが小さい、効率もある程度良い、などですが、主に商用周波数の電源トランスを使用するため、大型で重量が重くなります。この方式は、中電力以上の直流安定化電源において現在最も多く生産されています。しかし、「軽薄短小」「省エネ」の望まれている現在、ある特定の用途を除いて後述するスイッチングレギュレート方式の安定化電源に置き換えられつつあります。

スイッチングレギュレート方式

近年、電子機器全般において、いわゆる軽薄短小や省エネが強く要求されています。直流安定化電源はこうした電子機器に組み込まれる用途が多く、従来方式の電源では、その要求を満足しなくなりました。そこで原理的に小型軽量、高効率化が可能なスイッチングレギュレータが今日広く用いられるようになってきました。

スイッチングレギュレータはシリーズレギュレータと比較して、重さで1/10〜1/2、大きさで1/10〜1/3、また効率はシリーズレギュレータの30%〜60%に対し、スイッチングレギュレータでは70%〜90%となっています。またスイッチングレギュレータは、入力できる電圧の範囲が広く、何の変更もなしに、AC85〜AC264V入力まで使用できるものもあります。

しかし、電力を高速でスイッチするためノイズを発生したり、安定度、高速性においてシリーズレギュレータに劣りますが、ノイズに対してはシールドなどの対策により一部の用途を除いては問題なく使用できる方式の電源です。

スイッチングレギュレータの原理図を《図-5》に示します。交流入力を整流用ブリッジダイオードと平滑用コンデンサで直流に変換し、スイッチング素子により高速にスイッチし、再び整流、平滑し所望の直流出力を得るDC/DCコンバータを通り出力されます。定電圧あるいは定電流比較回路のフィードバックで、DC/DCコンバータの回路方式により、スイッチング周波数やスイッチのON/OFFの比(デューティといわれる)を変化させ、安定化出力を得ます。
現在、主に使用されているDC/DCコンバータ回路方式の例を以下にあげます。

《図-5》スイッチングレギュレータの基本構成 《図-5》スイッチングレギュレータの基本構成

リンギングチョークコンバータ

《図-6》にリンギングチョークコンバータの代表的な回路を示します。リンギングチョークコンバータはON/OFF方式の自励型回路で、部品点数が少なく、特に小容量(数W〜数10W)、低価格が要求される電源に使用されています。この回路の安定化は次のように説明できます。出力電圧が上昇すると、2次巻線電圧V 1が上昇し、V 1に比例した検出電圧V 2が上昇します。V 2が上昇し定電圧ダイオードD Zが導通すると、スイッチング素子であるトランジスタQのベース電流を下げQをオフにさせ、出力電圧を安定化します。この方式は、帰還増幅器を使用していないことから安定度は低くなります。したがって高い安定度の必要な用途に対しては2次側に帰還増幅器を使用し、フォトカプラを通して安定化させる方法が用いられます。以上のような特徴から、リンギングチョークコンバータは補助電源や、容量の小さなシリーズレギュレータのプリレギュレータとして多く利用されています。

《図-6》リンギングチョークコンバータの一例 《図-6》リンギングチョークコンバータの一例

フォワードコンバータ

《図-7》にフォワードコンバータの基本回路を示します。出力はスイッチング素子のON/OFF比の制御により安定化されます。リンギングチョークコンバータではスイッチング素子に三角波形の電流が流れるのに対し、この方式では方形波の電流を流すため、同じスイッチング素子を使用した場合、より大きな電力を変換できます。したがって中容量以上の電源に用いられ、またその応用範囲も広くなります。

《図-7》フォワードコンバータの基本回路 《図-7》フォワードコンバータの基本回路

《図-8》にフォワードコンバータ方式を応用したフルブリッジ回路を示します。この方式は、図-7の方式に比べ、スイッチングトランスの利用率が高く、より小型大容量化が可能で、大電力電源に用いられます。

《図-8》フォワードコンバータ方式によるブリッジ回路 《図-8》フォワードコンバータ方式によるブリッジ回路

フォワードコンバータの出力電圧および出力電流の安定化は、デューティ比の制御によると述べましたが、その動作原理を《図-9》に示します。 出力電圧および出力電流を検出し比較回路から出力された電圧と、基準電圧となる三角波とを比較し、三角波の電圧が高い期間スイッチングトランジスタQのON期間となります。

スイッチング電源は、その特性上スイッチングによる高周波のノイズを発生します。このノイズが他の電子機器に悪影響を及ぼすため、各国でその用途により規制あるいは自主規制されています。FCCやCISPRなどの規格では規制され、日本のVCCIなどでは自主規制となっています。一般家庭などで使用される電子機器に使われる場合と、工場など産業用に使用される電子機器に使われる場合とに分けられ、後者に比べ前者はより低いノイズレベルに規制されています。ノイズの放出を防ぐために、スイッチング電源の入力側に、ノイズフィルタが配置されています。

《図-9》デューティ比例制御の動作原理 《図-9》デューティ比例制御の動作原理

《図-10》にその一例を示します。図に示すように、入力ラインとグランド(ケース・アース)間にコモンモードノイズを抑制するコンデンサが配置されています。これは電源からの漏えい電流となり、この電流が多くなると感電、あるいは感電による2次的な災害を人体にもたらします。したがって、フィルタのグランド(ケース・アース)を大地に接地するなどの注意が必要です。

《図-10》ノイズフィルタの一例 《図-10》ノイズフィルタの一例

保護回路

過電圧保護

電源装置が何らかの原因で故障し制御不能となった場合、または使用者のミス等により負荷に過電圧を加え破損することが考えられます。これを防ぐ目的のための保護回路です。長時間無人運転を行う場合等の電源装置に必要な機能です。

過電圧保護回路には、過電圧を検出してブレーカにより入力の電源を遮断してしまうタイプと、電源の出力端子間をサイリスタ等により短絡する(CROWBAR)タイプ等があり、接続される負荷により使用者が選択します。

過負荷保護回路

定電圧電源は出力インピーダンスが非常に低く、出力を短絡した場合、過大電流により回路を破損します。したがって、過大電流を防ぐ保護回路が必要です。その種類は下記に大別できます。

  • フォールドバック形保護回路(フの字型保護回路)
  • 定電圧定電流移行形保護回路

当社の定電圧電源には、定電圧定電流移行形保護回路が使われています。

突入電流防止回路

電源装置は入力電源の投入時、トランスの磁気飽和や平滑用コンデンサへの充電などで大きな突入電流が流れます。この電流を防止するのが突入電流防止回路です。一例として、入力にトライアックやサイリスタなどと並列に抵抗を配置し、コンデンサの電圧が上がる間は抵抗により突入電流を制限するなどの回路が配置されています。この回路はたいていの場合電源1台で使用される場合を想定しているので、多数の電源を機器に組み込む場合には、機器に配置する入力スイッチに十分な配慮が必要です。

プログラマブル電源

近年の電子機器では、時代の要求として自動システムなどを組み、作業効率のアップを行うことが多く、このような用途に対応するのが プログラマブル電源です。電源装置には、GPIB、RS-232Cなどをインタフェースするボードが内蔵されているものや、オプションにより対応されるものがあり、《図-11》にシステムの一例を示します。

《図-11》プログラマブル電源システム構成例 《図-11》プログラマブル電源システム構成例

多出力電源

多出力電源は、ひとつの電源装置から数系統の電源出力を同時に取り出すことができるものです。2系統を出力するデュアルトラッキング方式(正・負電圧追従運転)の電源はひとつのツマミを操作することにより、正・負の電圧を同時に可変できる電源です。デュアルトラッキング方式の基本回路を《図-12》に示します。

《図-12》デュアルトラッキング方式の基本回路 《図-12》デュアルトラッキング方式の基本回路

交流安定化電源

交流安定化電源は大別すると、単に出力電圧あるいは波形を一定に保つ目的のACスタビライザ(AVR)と、これに加えて出力周波数を一定に保つ(または可変する)周波数コンバータ(CV・CF)とからなります。

両者とも要求される仕様としては、出力電圧(周波数コンバータの場合は出力周波数を含む)の安定度が優れていること、入力電圧の波形に影響されず出力波形品質(歪率等)が良いこと、負荷の種類(力率等)に影響されることなく安定に電力を供給できることなど、直流安定化電源とは異なるさまざまな条件が必要となってきます。一方、近年国内の商用電源ラインの電力事情は大きく向上し、高信頼、高品質の電力が供給されているものの、自然災害(雷、風雨雪等)による瞬時的な停電、電圧低下は避けられない実情です。

また工場の生産ライン等では、種々の負荷が接続され、オフィスや住宅環境地区においても、コンデンサインプット形整流回路を持つ電子機器(テレビ、パソコン、OA機器等)の影響で、波形歪、ノイズ等を含んだ電力が供給されています。
このような電源ラインの異常に対してCPU搭載機器は停止したり誤動作を起こすばかりでなく、時には人身事故を起こす等、重大な社会問題を引き起こす要素も含んでいます。このようなトラブルを防ぐ目的では無停電電源装置が有効ですが、機器の製造メーカーにおいては電圧変動、停電等幅広い電源環境試験を行う必要があるため高性能で多機能なシミュレーション電源が要求されるようになっています。

以下に使用目的と性能の違いを中心に各種交流安定化電源の方式及び概略について述べます。

交流安定化電源の種類

ACスタビライザ(AVR)

  • 可飽和リアクトル方式
  • 鉄共振方式
  • スライダック方式
  • タップ切換方式
  • 位相制御方式
  • リニアアンプ方式(電圧補正方式)

周波数コンバータ(CV・CF)

  • リニアアンプ方式
  • インバータ方式

以上の他に各種方式がありますが、実用化されていなかったり使用例が少なく、また、上記の可飽和リアクトル方式、鉄共振方式は近年あまり利用されなくなったため説明は省略します。

ACスタビライザ(AVR)

スライダック方式

入出力間にスライダックを挿入し、その出力電圧を検出し、いったん直流信号に変換してから基準電圧(直流)と比較誤差増幅し、サーボモータへ加えスライダック摺動子を動かすことにより出力電圧を一定に保つ方式です。この方式は効率が良く小型ローコスト化がはかられますが、機械的な動作を伴うので応答速度が遅く、また摺動子の寿命が短いため信頼性は低く、出力電圧の歪は入力電圧とほぼ同一となります《図-13》。

《図-13》スライダック方式 《図-13》スライダック方式

タップ切換方式

入出力間に多くのタップを持ったトランスを挿入しその出力電圧を検出し基準電圧と比較増幅し、トランスのタップ電圧をサイリスタやトライアック等の半導体スイッチで切換えることにより出力電圧を一定に保ちます。 この方式はスライダック方式に比べ機械的な動作がない為寿命も長く、効率が良く小型ローコスト化がはかられます《図-14》。

《図-14》タップ切換方式 《図-14》タップ切換方式

位相制御方式

入力電源をSCR等で位相制御して得られた電力を、LC共振回路等によるローパスフィルタを通して波形整形し正弦波を出力する方式です。出力電圧の制御は、前記スライダック方式と同様に直流信号同士の比較となります。したがってAC/DC信号変換部の時定数により応答速度はあまり速くできません。この方式も効率は良く比較的小型ローコスト化がはかれます。信頼性は高いですが発生歪は大きくなります《図-15》。

《図-15》位相制御方式 《図-15》位相制御方式

リニアアンプ方式(電圧補正方式)

入力電圧の電圧(波形)変化をリニアアンプにより補正して出力電圧(波形)を一定に保つ方式です。入力電源に同期した基準電圧(正弦波)を作り、出力電圧検出信号と比較し、その誤差分をリニアアンプで電力増幅し、入出力間に直列に挿入されたトランスにて電圧波形に瞬時補正をかける方式のものです。したがって出力電圧の安定度、歪率等出力波形品質は最も優れています。ただし効率、コスト面では若干劣ります《図-16》。

《図-16》リニアアンプ方式(AVR) 《図-16》リニアアンプ方式(AVR)

周波数コンバータ

リニアアンプ方式

入力電源を整流回路によりいったん直流電源に変換し、これをリニアアンプの電源として供給します。一方水晶発振器等から正弦波基準電圧を作り、これをリニアアンプの入力として電力増幅を行い出力する方式です《図-17》。

リニアアンプ部はその供給直流電源電圧により効率が大きく変化するため、位相制御回路あるいはスイッチング電源回路を用いて安定化します。適切な供給電圧を得るため、また入出力間の絶縁を図るため通常入力側あるいは出力側にトランスを設けますが、このトランスの挿入位置により出力波形の品質は左右されてしまいます。

出力トランスを用いることは、周波数特性、安定度、歪率等の特性を悪化させるためフィードバックループよりトランスを外した出力トランスレス(OTL方式)が理想的です。これにより出力トランスの飽和の問題がなくなり出力電圧、周波数を自由なタイミングで変化させられるので、電源ラインの異常シミュレーション(瞬停試験等)が行え、ATE等への応用が可能となります。

さらにはアンプ部の周波数特性を拡大することにより、歪波形等実情の商用電源ラインに近いシミュレーションも可能となるため今後発展性の高い方式でもあります。

《図-17》リニアアンプ方式(周波数コンバータ) 《図-17》リニアアンプ方式(周波数コンバータ)

インバータ方式

前述のリニアアンプの代わりにPWM(Pulse Width Modulation)スイッチング方式のDC/ACインバータを用いた方式で、このインバータ部の効率は非常に優れています《図-18》。また入力電源の依存性が少ないため入力電源は安定化する必要はなく特に入力出力間の絶縁の必要がない場合にはトランスを省略することも可能です。

したがって小型、高効率化がはかられます。ただし、スイッチング方式であるため、リニアアンプのように広帯域のフィードバックはできないため、十分なフィードバックがかけられず、出力電圧の品質はリニアアンプ方式に比べ劣ります。またノイズも大きくなる欠点があります。

しかしながら、半導体技術の進歩により高周波化が容易になってきたため、出力電圧品質の向上は比較的容易です。この方式は省エネルギーの面から最も注目される交流安定化電源です。なお、無停電電源装置あるいはインバータエアコン等のDC/AC変換部においてはすでにこのインバータ方式が主流となっています。また前項のACスタビライザへの応用も可能です。

《図-18》インバータ方式
《図-18》インバータ方式

直流安定化電源を使用したいと思った時に、少なくともそれを用いて何をしたいかはおぼろげながらわかっているものです。ところが実際に直流安定化電源を選択しようとするとあまりにも種類が多く、どれを選択してよいか途方に暮れてしまう場合があります。そこで本稿では、目的に合った直流安定化電源を選定するためのキーポイントをご紹介します。

直流安定化電源を選定する時に考慮する点は意外と多い?

  • スイッチング方式、シリーズレギュレータ方式?
  • 単一レンジ電源?ワイドレンジ電源?
  • 駆動や試験に必要な電圧と電流は?
  • 電圧の変化時間を管理したい?
  • リップルノイズの影響を受けるか否か?
  • 流れる電流の変化時間の速さは?・・・など

直流安定化電源を選定するときのポイント

回路方式の特長

スイッチング方式とシリーズレギュレータ方式の特長を理解する!

回路方式の特長

単一レンジ電源とワイドレンジ電源

単一レンジ電源

出力範囲が定格電圧または定格電流で制限されるタイプ。一般的な実験用可変型直流電源のほとんどがこのタイプになります。当社の代表的な製品としてはPMX-Aシリーズ、PAN-A/Eシリーズ、PAT-Tシリーズなどです。定格電圧・定格電流で出力範囲(レジン)が方形に固定されているため単一レンジ電源と呼んでいます。なお、このタイプの電源では電圧・電流それぞれを定格最大値の状態で連続出力させることができます。

単一レンジ電源

ワイドレンジ電源

出力範囲が設定電圧と定格電力、または設定電流と定格電力で制限されるタイプ。電力型電源ともいわれ、当社の製品としてはPWR-01シリーズ、PWXシリーズが該当します。上限が定格電圧または定格電流で制限されるという点では単一レンジ電源と同じですが、ワイドレンジ電源は同容量の単一レンジ電源と比較すると電圧・電流出力範囲が広く(=ワイド)なっています。なお、ワイドレンジ電源では定格電力を越えない範囲での最大電圧または最大電流において連続出力させることができます。

ワイドレンジ電源

菊水電子からのアドバイス

単一レンジ電源かワイドレンジ電源か?(選定の目安)

1. まずは単一レンジの中から

必要な定格を持つモデルをご検討するのがオススメ。同容量であれば、単一レンジのほうが一般的には廉価になります。(バイポーラ電源のPBZシリーズは例外)しかし、負荷に対して選んだモデルの電源容量が過大かと思われる場合は(負荷容量に対して電源容量が数倍)ワイドレンジにした方が適切かもしれません。

2. ワイドレンジ電源が有利になるケース

定常時の電流が少なく起動時に大きな電流が流れる誘導性負荷(モーターなど)の駆動に使用する場合や電力は小さいが様々な定格(電圧・電流)の試験対象があり、全てをカバーするには大きな電源または複数の電源を設備する必要がある場合です。

3. ワイドレンジのデメリット

ワイドレンジは、レンジ幅を拡げたことのトレードオフとして同一容量の単一レンジと比べて設定分解能が荒く、また過渡応答(負荷変動の追従特性)についても遅くなります。この点についても、考慮をいただく必要があります。

菊水電子工業の直流安定化電源 ラインナップ

ポイント

単一レンジとワイドレンジはいずれも一長一短があり、どちらかが一方的に優位にあるものではなく負荷・条件にあわせてそれぞれの特性を活かしたかたちでお選びいただくことが肝要です。

その他の選定ポイント

試験実行内容の確認選定ポイント
被試験物の動作に必要な電圧と電流を検討して決定する定格電圧と定格電流の確認
被試験物に与える電圧の変化時間を管理したい出力電圧の立上り時間、立下り時間の確認
被試験物はリップルノイズにより影響を受けるか否かリップルノイズの確認
被試験物に流れる電流の変化時間が速い過渡応答特性の確認
電源装置をバッテリの代わりに使う内部抵抗可変機能の有無を確認
被試験物がバッテリであるブリーダー回路(放電回路)オフ機能の有無を確認
遠隔操作(外部電圧、パソコン)による測定が必要外部コントロール機能を確認

念願の双方向電源

2023年4月より菊水から双方向電源が発売されました。
約4年前にシステム品の設計担当していた私にとっては、本当に待ちに待った製品です。

以前電池の充放電システムやモータ評価システムの引き合いを受けた時、お客様の要求仕様の中に「電源は双方向タイプによる」この一文がある事で菊水では対応不可となり、何度涙を流したことかわかりません。負けず嫌いの私は、当時の上司に「競合の電源を使用しシステム提案をさせて頂けませんか?」と言って怒られた事も思い出しました。

でもこれからは違います。自信を持った仕様と品質で菊水の双方向電源をお客様に提供できるのですから!

双方向大容量直流電源 PXBシリーズ
双方向大容量直流電源 PXBシリーズ

双方向電源の素晴らしさ!

まず双方向電源とは、通常の直流電源とは違い電流が双方向に流せる電源となります。
例えば電池を接続した場合、通常の直流電源は充電方向の電流しか流せないのに対し、双方向電源は充電/放電どちらの方向の電流も制御し出力できる電源なのです。

また放電方向の電力は熱で消費するのでなく、入力電源側に電気エネルギーとして回生させる仕組みで使用電力を大幅に低減でき、カーボンニュートラルにも貢献する電源となっています。

カーボンニュートラル

現在、弊社の提案型製品を担当する部署では各国EV充電規格の通信プロトコルと双方向電源を組み合わせ、EV充電システムやV2H(EV⇒HOME)をすべて自社技術でシステム構築する事も検討しています。

またこの双方向電源は、車に搭載するインバータやモータの評価に活用できるよう設計していますので多方面への応用が可能です。

インバータ・モータの評価試験、双方向DC/DCコンバータのエージング試験

菊水の双方向電源を使ってみよう!

ここまでお読み頂きまことに有難うございます。
もしご興味があり一度試してみたいとお思いの方は、デモ機を多数用意させて頂いておりますのでご連絡頂ければ幸いです

また弊社担当を動作試験に立ち会わせて頂くこともでき、お客様のご要望に合わせた最適な使用方法の御提案も積極的に承っております。

この双方向電源は弊社技術者が市場要求に習うところは習い、品質にこだわって開発したものです。
一度御使用して菊水品質を味わって頂ければと思います。

一人で中国出張。

いま思い出してもゾッとします。

時は2019年の初め頃、製品のプリプロ(量産試作)立ち上げ作業に開発メンバーとして立ち会うため、提携している中国の工場に出張したときのお話です。

前回出張したときは海外出張に慣れている同僚が一緒だったので何の心配もなく行くことができましたが、今回は一人で行く事になってしまいました。私にとって初めての一人海外出張です。

先に現地入りしている同僚からは、『ハイヤーの運転手が名前を書いた紙を持って出迎えてくれますから心配はありませんよ。』と言われていました。故に私は軽い気持ちで、日本人を迎えるのだから名前は繁体字で書くだろうな、くらいに思っていました。

ところが、迎えに来てくれたハイヤーの運転手さんはご自分が普段使っている簡体字で書いた紙を持って来ていたようでした。

相手の立場になって考えていますか?思い込みですれ違い寸前。

日本語の「大澤」は中国語の繁体字だと「大澤」となります。これが簡体字だと「大泽」に変わります。双方勝手に自分の都合の良い字体で思い込みをしていました。

上海虹橋国際空港の到着ロビーを出たところでは大勢の出迎えの人たちが集まっていました。
さて、「大澤」って書いてある紙はあるかな?あれっ?その中に「大澤」と書かれてた紙を持っている人がいないみたい…

何度みても「大澤」の文字はない!この時点でもうパニック状態です!!
このままでは異国の地で路頭に迷う羽目になる。落ち着け!落ち着くんだ、自分!

もう一度出迎えの人たちを端からゆっくりと眺めていきました、その中に「大泽」と書かれたA4の赤い紙を持っている人が目の中に入ってきました。
でもどうみても普段着姿の中年のおじさんです。日本のハイヤー運転手とはかなり違うスタイル。「大」の字は同じだ、たとえ違っていたとしても聞くしかありません。

中国語はおろかカタコト英語も話せないのになんて尋ねる?泊まるホテルは昆山ホテル、でもそのまま日本語読みで言っても通じるのか?
動揺しながらも出発前に同僚から辛うじて教わった読み方で聞くしかありません。

恐る恐る「大泽」と書かれた紙を持っていた人に近づき、昆山宾馆(コンサンピンカン)?と聞いてみました。
すると、うなずくではありませんか。あー良かったと思う反面、騙されて違う場所に連れて行かれたらどうする?なんていう思いも頭の中を過ります。だけれども… 自分はこの人に賭けることにしました。

その人は自分が持っていた荷物をサッと手にすると足早に駐車場の方向に歩き出しました。慌てて後を追う自分。頭の中ではこのまま撒かれて盗まれるのか?大丈夫か?と思考がぐるぐるしている自分。
駐車場に駐めてある黒いハイヤーにたどり着くと、すかざす荷物をトランクに入れていました。やはり、運転手さんのようです。ドアを開けて「乗れ」と言わんばかりに顎で指している。

本当に大丈夫かな!?っと思いつつも従うしかない自分。疑心暗鬼のなか、運転手さんとは一言も言葉を交わさないまま一時間ほどのドライブ、そしてめでたく昆山ホテルに到着。何事もなく車から降ろされて、ホテルのロビーへ向かいました。そこで先に現地入りしていた同僚と合流できました。一安心。でも本当に怖かったですわ~

こうやって海外出張のスキルが上がっていくのでしょうね。
さぁ、次はどこへ行かされるのやら、私の試練は続くのでした。

世の中には優れたアイデアを出して大きな成果を上げる人がいます。自分もそうありたいと憧れつつも、そうそう思う様な自分にはなれないものです。
自分が間近で見聞きして素晴らしいと感じたアイデアの事例と、そうありたいと思っている自分が担当したある業務の事例を紹介します。

ある知り合い夫人のアイデア

今から20年ほど前、私の妻は子供服を扱う仕事をしていました。シーズン毎に新しいデザインの子供服が店に並ぶのですが、シーズンが過ぎ売れ残った服は廃棄されるのが慣例となっていました。

妻はこの廃棄される服の事を、妻が子供の頃から付き合いのあるタイ人の夫人(ご主人が日本人)に話したところ、「捨てるのであればタイの自分のところに送ってくれないか。」という話になり、それからは毎回廃棄する服を送るようになりました。

夫人は妻から送られた服をどうしたかというと、なんと知り合いのセレブなマダム友達に高い値段で売っている、という事でした。なんでも日本で売られている服は丈夫で品質が良い為、セレブなマダムたちは高い値段でも喜んで買ってくれるのだそうです。

しかしこれだと何だかチャッカリしたオバさんの話でしかありませんが、この夫人の動きには続きがありました。そうして得たお金で現地の低価格な子供服を大量に買い込み、身寄りのない子供達の施設に寄付している、というのです。

素晴らしいアイデアだと思いました。この夫人と廃棄されていた筈の子供服に関わった全ての人が皆、誰も損する事なくハッピーに話が納まっています。(夫人の無償の働きあっての、ですが)
このようなアイデアを思いつき、実行してしまう人がいるのだと感心してしまいました。

ラスベガスで観たショーの前座アイデア

これも同じく20年近く前、夫婦でラスベガスに旅行し、あるアーティストのショーを観に行った時の事。

ショーの会場はステージと客席が向い合せで、客席はステージから離れるにしたがって階段状に上がっていくためどの席からもステージは見やすい構造で、約4000席という事でした。
ステージの背後にはステージ幅程の映画館よりも大きなスクリーンが設置されていました。開場され着席した時には、そのスクリーンにはステージ側からの固定カメラで丁度鏡写しの様に客席をリアルタイムで映しており、時間とともにまばらだった客席が徐々に埋まっていく様子がわかりました。

客席が9割方埋まった辺りでずっと固定されていた客席に向けたカメラ映像が突如サーチライトの様に客席を上下左右に動き出し、そして客席のあるカップルをスクリーンにアップで映し出しました。
カップルは映されている事に気付き手を振り返します。日本だとここまでですがそこはアメリカ、続けてキスまでしてしまいます。その様子を見た観客からは拍手と歓声。するとカメラはそのカップルのアップから離れて新たに客席をサーチし始め、別のカップルをアップ。その二人もキス→拍手と歓声、その次も、またその次も。
こうして「お約束」の流れが出来たところで次にアップにされたのは男性二人組。

「オイ冗談だろ、勘弁してくれよ。」的なジェスチャーで拒否をアピールするも、4000人の観客の終わらない「お約束」要求の歓声に観念し渋々・・・。
その瞬間、会場は完全に一体になりこの日一番の大歓声。そしてカメラが不貞腐れた態度の二人を置き去りにして狙った次のアップのターゲットは、これまでの洒落たカップルとは違った、それぞれがかなり特徴的なビジュアルを持った2人。
スクリーンにアップになると会場は「見たくない!」とばかりに容赦のない大ブーイング。一般客に対してかなり辛辣なアクションですが本人達は気にせず「お約束」を実行に移そうとします。

顔が近づくにつれブーイングの音量は増していき、二人の顔が触れ合う直前にスッとカメラがアップを二人から逸らし、「その瞬間」をスクリーン映像から逃がしたのです。
このカメラワークに対して会場は先程を超える大、大歓声が上がりました。会場の上がりすぎたVOLTAGEを下げる為か、また洒落たカップル2,3組を周ったところで会場はゆっくりと暗転、ステージにスポットライトが当たり主役が登場、ショーの始まりとなりました。

さて長々と描写しましたが、一流のパフォーマーが何かをする訳でも、お金をかけた派手な演出がある訳でもなく、客席を映していた、たった1台のカメラのカメラワークだけで4000人の観客の目をステージに注目させ、楽しませて会場の一体感を作った上で主役を迎え入れるというその前座のアイデアがとても鮮やかだと感じました。

私の場合

先の例のような非凡な人々から生み出される優れたアイデアに簡単に感化される凡人の私も、自分発のアイデアであらゆる場面の課題やテーマを解決できたら、と常々思っています。

開発時代、あるインバーターの設計担当になった事があり、実現する為にはクリアしなければならない課題がいくつかありました。
そのうちの一つが高電力密度(≒高効率)である事。なかなか厳しい要求でしたが、パワー半導体に高効率動作が期待できるSiC MOSFETを採用する事が許される状況ではありました。

しかしSiC MOSFETは当時まだまだ高価で、たとえ高効率性能が達成できても、それは設計者の力によるものとはいえず面白くないところであり、逆にアイデアでひっくり返すチャンスであるともいえます。

それから過去の社内のインバータ回路や、近年の電源回路を眺めている中でSiC MOSFETを使わずに高効率を実現する回路的な工夫の余地がある事に気が付きました。
この「回路的な工夫」はSiCに比べて低コストで実験結果も良好。従来の製品に使われたインバータ回路に比べて効率は3%程高く、高電力密度の要求を満足する事ができました。

このまま万事順調にと願う所ですが、やはり問題は起こります。検証を進めて行くと、ある動作モードの時に温度的にNGとなる部品が出てきました。
色々対策を考え試しましたが解決に至らず、そしてSiCを使わない現状の回路はMOS以外の追加部品が多いためメイン電流通路の基板パターンが理想的ではなくEMC的に不利で、信頼性も劣ると言った短所も併せ持っていました。逆にSiCの価格は今後安価になっていく事は確実で、もはやSiCを選択しない理由がなくなり、結局SiC MOSFET実装にてインバーターは完成。

凡人の猿知恵は最先端の高性能部品を超える事は出来ませんでした。残念ですがそれでは最初からSiCを選べば良かったか、となるとはやはりそうは考えたくありません。誰もが入手できる部品で得られた性能は、その部品で他者も同様の性能を得る事ができるからです。
(そこは割り切って、他のところで知恵を絞るというのであっても勿論良いと思っています。)

やはりアイデア勝負あってこそ、この気持ちが枯れないうちはまともに働いていられるかな、と思っています。

“スーパーカー”ブーム

1970年代後半に確かにあった“スーパーカー”ブーム。何がスーパーなのかも良く判らないが、スーパーカークイズでシルエットクイズに胸躍らせた世代は今も車好きなはず。そんな世代が自動運転と人工知能に思う淡い期待。

ドラマに出てくるそれっぽいハイテクカー

子供のころから“車”というものが好きだった。スーパーカーブームが終わってから記憶に残っているのは、なんとなくそれっぽい装飾のハイテクカー。西部警察の助手席を取っ払ってPCっぽい何かを積んで犯人を追跡するRS軍団、キャノンボール2でコンピュータが打ち出す作戦でことごとく失敗するスタリオン、それこそタイムマシーンでハイテクを超えたオーバーテクノロジーなバック・トゥ・ザ・フューチャーのデロリアンなどが代表格だろう。

みんな大好きナイト2000

中でもナイトライダーのナイト2000は各エピソードでトンデモ機能連発。ドラマも単純な勧善懲悪で、アメリカ人は陽気なやつしかいないと少年の心に刻まれた。ベースは3代目のポンティアック・ファイヤーバード・トランザム。このナイト2000の一番の売りは光沢のある漆黒ボディのボンネットの中にある左右に動く赤い光と言いたいところだが、人工知能K.I.T.Tであろう。

時代を先取りしていた人工知能K.I.T.T

この人工知能K.I.T.Tは運転手なしの自動運転はもちろん、追跡車のブレーキを勝手にかける、敵アジトの門扉に高電圧を発生させるいかしたやつ。無謀なご主人様マイケル・ナイトにジョークと嫌みとまで言える、愉快な“相棒”。
当時は人間以上のジョークを話せる荒唐無稽な車は遠い未来の話と思っていたが、自動運転の技術は実用化の域になったし、膨大なデータベースから学習した人工知能は人間らしい受け答えまで出来るようになっている。

建前抜きの理想はナイト2000

過疎化が進む地方都市において自動運転のバスなど高齢者の移動手段として非常に画期的でもっと普及が進んで欲しいと思う反面、少年の心を躍らせた“相棒”みたいな車に乗る老後もあって欲しいと妄想している。昨今、自動運転と人口知能を開発する業界では利権を争う買収や撤退が繰り返されていると聞く。

利益を追求するのは、企業として当然なのだが、それだけで開発していると利益追求で利便性のみを考える物が出来そうで、ちょっとした余裕が欲しいかなとも思ってしまう。かかりつけの病院にドリフトしながら迎えにくる“相棒”が高齢ドライバーの運転をフルサポートのような未来が建前抜きで本当に期待している技術の進歩かもしれないと。

ヤンチャな“相棒”が登場することに淡い期待をしている。

ナイトライダー
私立探偵機関の調査員、マイケル・ナイトが、人間の言葉を話し特殊装備を搭載したドリーム・カー『ナイト2000』とともにさまざまな事件を解決するカーアクションドラマ。

「ナイトライダー」『フリー百科事典 ウィキペディア日本語版』より。
2023年1月12日16時(日本時間)現在
URL: https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%8A%E3%82%A4%E3%83%88%E3%83%A9%E3%82%A4%E3%83%80%E3%83%BC

ナイト2000
ナイト2000(Knight Industries Two Thousand、K.I.T.T.)は、アメリカで放映された特撮番組『ナイトライダー』に登場する架空のドリームカーである。

「ナイト2000」『フリー百科事典 ウィキペディア日本語版』より。
2023年1月12日16時(日本時間)現在
URL: https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%8A%E3%82%A4%E3%83%882000

部分放電とは

部分放電とは、導体間の絶縁を部分的にのみ橋絡(キョウラク)する放電をいい、導体間を完全に橋絡する放電は含まない(JEC-0401-1990より)と定義されています。絶縁材料が部分放電にさらされると、放電によって直接的に侵食されるばかりでなく、放電が原因で生じる活性酸素・オゾン・酸化窒素・酸などによって材料が物理的化学的に変化し、劣化していく(※1)ことが知られています。

それでは、なぜ部分放電が起きるのでしょうか?
部分放電のメカニズムをモデル化すると次のようになります。

絶縁物は何らかの理由(ボイド、欠損、材料不均一など)で組成が一様でない場合、さまざまな容量を持ったコンデンサの集まりと見ることが出来ます。ボイド(気泡)を例に取り、部分放電を説明すると以下の通りです。

部分放電のメカニズム
絶縁物中にボイドが1個ある例

全体の静電容量CはC=C1+C4+C2×C3×Cv/(C3×Cv+C2×C3+Cv×C2)です。ボイドCvに印加される電圧Vvはボイドに火花放電が生じないとして、Vv=V×C2×C3/(C3×Cv+C2×C3+Cv×C2)となり、ボイド(気泡)の性質からC2、C3>>Cvと考えると、VvVとなって印加電圧VがほとんどCvにかかることになります。

絶縁距離が短いボイドは比較的低い電圧で放電して、ボイドで放電が発生しても絶縁物があるので電極間を短絡する放電には至りません。以上の例のように、絶縁物中のボイド等で放電が発生しても電極間の放電には至らない状態のことを部分放電といい、その時の電荷移動量や放電パルスを測定するのが「部分放電試験」です。したがって、部分放電を測定することによって絶縁材料の状態を知ることが出来ます。

部分放電試験では、放電電荷量(単位:クーロン)の他に、以下の値が被試験物の絶縁特性を評価する重要なパラメータになります。

  • 部分放電開始電圧(Ui)※2:
    所定の大きさを超える部分放電が開始する電圧
  • 部分放電消滅電圧(Ue)※2:
    所定の大きさを超える部分放電が消滅する電圧

部分放電と絶縁破壊の関係

電極間に印加された電圧と放電の一般的な関係は以下のようになります。

部分放電の電圧
部分放電の電圧─電流特性概念図

被試験物に印加した電圧を徐々に上昇させると、まず部分放電が開始(A)して、その後火花が発生(D)します。その後、アーク放電(E)に移行して被試験物は絶縁破壊します。アーク放電に移行してさらに電力が供給されると、絶縁破壊した被試験物はアーク放電の熱で焼損します。部分放電領域をさらに詳しく見ると、(A)の部分放電開始のあと、(B)から(C)の安定領域があります。この領域では絶縁物中の複数のボイド等で部分放電が発生しています。その後(C)から(D)の部分放電急増領域を経た後に、各ボイド感の絶縁が破壊されてアーク放電に移行します。

耐電圧試験と部分放電試験の違い

耐電圧試験は漏れ電流をしきい値としてGO/NGの判定が主たる試験です。一方、部分放電試験は絶縁物・絶縁状態の特性を放電電荷量を通して調べる試験です。耐電圧試験では印加するエネルギーが大きく被試験物へのダメージも大きいですが、部分放電試験ではそのエネルギーが非常に少ないので非破壊試験と言われる所以(ゆえん)です。

耐電圧試験と部分放電試験の違い

※1参考文献「放電ハンドブック」(電気学会放電ハンドブック出版委員会)※2添字i、eはinception(開始)、extinction(消滅)の意です。

(この文献は菊水電子工業 季刊情報誌SAWS 1999年春号に掲載された記事です)

課題

リレーやスイッチの電気的な寿命は、負荷の容量(接点電圧や接点電流)や周囲温度などの条件が同じであっても、接点開閉時の突入電流の大きさにより、大きく異なってしまいます。一般的に電子負荷装置を用いてリレーやスイッチの寿命試験を行う場合、CCモードの電子負荷をLOAD ONした状態で、負荷配線間に挿入したDUT(リレー/スイッチ)のON/OFFを連続的に行います

ON/OFFを繰り返す

しかし、LOAD ON状態でスイッチのON/OFFを行うと、負荷電流が急激に立ち上がり、オーバーシュートが発生しDUTの寿命を大きく引き下げてしまったり、オーバーシュートの影響で電源側の過電流保護回路が作動し、試験が中断される可能性があります。このような問題にはどう対処すれば良いのでしょうか?

解決

この問題は、電子負荷装置のソフトスタート機能を活用する事で解決できます。ソフトスタートは、負荷電流の立ち上り時間を制限する機能です。負荷電流が動作電圧以下の場合は、LOAD ON状態でも電流が流れることはありませんが、動作電圧以上になった時点で、設定されたスルーレートで電流が流れ始めます。このソフトスタート機能を適切に設定する事により、電圧が急に立ち上っても電流がゆっくり立ち上るためオーバーシュートが発生しません。また、常に同じ波形で立ち上げるので、再現性の高い試験が可能になります。

ソフトスタート機能

※弊社製品ですとPLZ-5W seriesやPLZ-5WH2 seriesがソフトスタート機能付き電子負荷装置になります。

関連事項

弊社では、電子負荷装置と直流電源を活用したヒューズの溶断試験機を特注品で承っております。詳細情報は以下の弊社ソリューション製品情報サイト「KIKUSUI mag(キクスイマグ)」からご確認いただけます。ご興味のある方は是非お問い合わせ下さい。

自動車用ヒューズ溶断試験ソリューション
JASO D612対応 新世代自動車向けヒューズの開発・特性評価をサポート

メガソーラーの隠れた大敵を見つけ出し
パネルの品質向上やスクリーニングに一役

メガソーラーの隠れた大敵

─ PID現象について簡単に教えてください

<渡邊>PIDは、 Potential Inducted Degradation:電圧誘起出力低下と言いまして、太陽光発電設備でセルの出力がある時点から大幅に低下してしまう現象のことです。高電圧下で使われる産業用ソーラーシステム特有の現象とされ、設置時には確認できないやっかいな現象でメガソーラーの隠れた大敵なんです。

電気的には、高温多湿環境で長期間にわたり高電界に曝されると絶縁性が悪化しその漏れ電流が発電性能の劣化を引き起こす様に観察されます。

モジュールの出力電圧が数十Vでも直列接続する枚数が増えるとストリング内の電位差は非常に高くなり、セルと接地との間にも大きな電位差が生じます。ちなみに日本では最大システム電圧600V、ヨーロッパでは1000Vとして運用されており、事業用メガソーラーでは最大システム電圧をさらに上げる傾向にあります。PIDがメガソーラー特有の現象とされるのはこのためです。

ソーラーパネル

<山口>PIDの研究・解明と共に試験評価方法の確立や規格化に向けた作業が進められています。PIDは潜在的な現象ですので何れも加速寿命試験的な方法を採っていて、具体的にはパネルとフレーム間に1500Vの高電圧をかけてPIDを人為的に短時間で引き起こし電気特性を測定します。PID現象が起こりやすい状況を作り出して危険性を予め潰したり、怪しいモジュールを取り除くことを意図しているからです。したがって、PID評価には高電圧の印加と絶縁抵抗や漏れ電流測定がマストの機能ということになります。

メガソーラーの成熟

─ キクスイとPIDとの係わりはどこに

<山口>当社は一般電気機器向けの絶縁抵抗計や耐圧試験器メーカとして長い実績を積んでいます。けれどPIDの絶縁試験には一般用より高電圧が求められたので、過去にPID専用の試験器として電圧範囲を拡げたTOS7201Sというのを開発しまして、試験サイトさんなどに納入させていただいてきた経緯があります。

<渡邊>その一方で、日本ではメガソーラーの急増から時が経ち、そろそろ経年劣化が露わになる時期に来ています。大規模なメンテナンスや更新、家で言えばリフォームの時を迎えているわけです。その際には設置されたソーラーパネルやモジュールについてリユースか交換・廃棄・リサイクルするかなど判断しなければなりません。 メガソーラーさんにとっては、設置から年数を経た今、目の前にある大量のパネルが今後も使えるのか使えないのか、スクリーニング(仕分け)したいわけです。

TOS7210S

<山口>先のTOS7201SはPID解明を目指す研究者様からのご要望から生まれた基礎研究向けのモデルです。
別の言い方をすれば、今お話ししたような設備屋さんやメーカさんなど、大量の測定や判定を効率よくこなすと言うことをあまり意識せずに作られた製品です。 ここへ来て測定法や規格もだんだん見えてくると同時に、メガソーラーのパネルが劣化してメインテナンス時期を迎えた。用途が変わってきたというか世の中がTOS7201Sで意図したのとはちょっと違う方向へ向かったわけです。

お客様も困っておられました。測定法の確立には多くのサンプルでの検証が早期に必要になりますし、メンテなんかでは的確で効率の良い判定が必須だからです。 実際のところ、研究機関のお客様から「効率の良い測定とデータ処理ができるようにならないだろうか」、というご相談を頂戴したのが本システム開発のキッカケなんです。

実績と経験を活かす

─ 開発に当たって意識したことは

<山口>一例ですが、IEC61215という規格の中に湿潤漏れ電流試験というのがありまして、試料を恒温槽などに入れて測定を行います。電気測定自体はフレームとモジュール間の電圧を500V/s以下のレートで徐々に上げていって絶縁抵抗を測定するように規定されたPIDテストなんです。ところがTOS7201Sは電圧を細かく設定できるのですが、徐々に上げていくということまでは考えられていません。

規格適合試験ともなれば定められた設定条件と手順に従ってスムーズに測定を行い、記録もきちんと残さなければなりませんよね。リユースやリサイクルのためのスクリーニングなどでは大量の試料を対象にするでしょから尚更なわけですが、そうしたことへの配慮も必要でした。

<渡邊>幸いにしてTOS7201Sには外部制御の機能を持たせてあったのでアプリケーションソフトでの対応を考えたんです。 ソフトからなら電圧の上げ下げも可能ですし、測定のログを採って吐き出したりできるからです。

本体だけですとパネル表示に限りが有ってお客様が確認したいと思われる項目を表示しきれそうに無かったのもソフト化した理由の一つです。アプリでは絶縁抵抗を2分間測定して、絶縁抵抗など測定値の変化をグラフ化して見ることができます。パネル選別などでの利便性を考慮してGO/No-GO判定などもできるようにしました。

パネル

単体からソリューションへ

─ お客様の声を捉えるコツは

<渡邊>ソフトの形態としては、この規格専用のアプリケーションソフトとする方向性も考えましたが、他の用途にも使えるように自由度を持たせた汎用外部制御・データ収集のアプリスタイルにしました。そうすることで要求される数値が変わったり他の用途向けの試験に使うことになったりしてもすぐに対応できます。スタンドアローンでは対応できないユーザニーズの変化をアプリケーションソフトでカバーする単体測定器のソリューション進化形なわけです。

私としてはPIDについて現象解明や研究段階からパネルの診断やリサイクルのフェーズまで係わることができました。これからも流れを注視しつつソリューションベンダーとしてお手伝いし続けますよ。

<山口>ソリューションの実現にあたってはお客様とコミュニケーションが原動力です。本システムも開発段階でお客様からパネルをご提供頂き、お客様と共に色々と検証を重ねて機能を固めていった経緯があります。結果的にも、持っている技術を応用した良いものができたと思っています。 このアプリケーションだけでなく、お客様のニーズには細かなところまで柔軟にお応えしていく考えです。

参考:
IEC 61215:2016:Terrestrial photovoltaic (PV) modules – Design qualification and type approval.
IEC TS 62804-1:defines test methods for evaluating PID in crystalline silicon PV modules.
IEC TS 62804-2:defines test methods for evaluating PID in thin-film PV modules.
JIS C8990:地上設置の結晶シリコン太陽電池 (PV) モジュール−設計適格性確認及び形式認証のための要求事項

課題

耐電圧試験器、仕様書だけで選定されていませんか?

耐電圧試験は、電気製品の安全性を確保するために重要な安全試験の一つです。そのため、商用電源で動作する製品には全数検査が求められています。各種安全規格では試験電圧値や試験時間が定められていますが、試験電圧の波形品位までは規定されておりません。そのため、一般的な耐圧試験器はACラインの入力電圧をスライドトランスを使い昇圧して出力するタイプがほとんどです。実はこのことが、試験の確実性と再現性を低下させる要因になっています。

解決

一般的な耐電圧試験器で採用されているスライドトランス方式は、商用電源(ACライン)を昇圧して出力しています。この方式はとてもシンプルですが、商用電源の電圧変動や波形歪がそのまま試験用出力に反映されてしまいます。ピークがつぶれたり、正弦波から大きく外れた波形でテストすると、信頼性や再現性が大きく損なわれてしまいます。また、歪んだ電圧を被試験物に印加する事は新品不良の原因を作ってしまう(部品劣化の加速)場合もあるのです。

特に新興国の生産ラインなど電源事情が悪い地域で耐圧試験を行う際は注意が必要ですが、比較的商用電源が安定している日本においても、生産設備がフル稼働で動いている時間帯と昼休みの時間帯では、商用電源の電圧値に差が出ることは良く起きる現象ですので、例外ではなりません。

では、この問題はどうしたら解決できるでしょうか?答えは、PWMアンプ方式の耐圧試験器を選定すれば良いのです。
※弊社製品ですとTOS5300seriesやTOS9300seriesがPWMアンプ方式になります。

PWMアンプを搭載した耐圧試験器であれば、商用電源を整流し交流を再生成しているので、不安定な商用電源に影響を受けない安定した高電圧を出力できます。商用電源の電圧変動を気にせず、安心して、信頼性の高い試験を行うために、耐電圧試験器の出力波形は、仕様書には書かれていない重要な要素なのです!

安定した高電圧を出力

スライドトランス方式とPWMアンプ方式の比較

肥大化する電源変動のテストパターン、続々と持ち込まれる試験体に困惑する現場。
テストを効率化し評価試験の自動化を目指す。

パターンの肥大化に困惑

クルマの電子化が加速しています

<後藤>自動車に搭載される電装品の数は増える一方です。大小多数のモータやアクチュエータ、ECUやカーナビを初めとする多種のマイコン組み込み機器、そしてバッテリとダイナモが組み合わされて一つのシステムを構成しそれぞれがオンオフと変動を繰り返すわけですから、電源ラインの精度や安定度、即ち各電装品から見た電源環境は決して良いものではありません。

一方で、クルマは命を預かる乗り物ですからその動作は常に確実でなければなりません。このため、各電装品が電源変動というストレスに対して影響されないことを確認する電源変動のイミュニティ(耐性)テストが従来から行われています。具体的には特定の電源変動パターンを想定し電装機器の動作を確認するテストです。変動パターンは国際規格などで定められている部分もありますが、各自動車メーカさんが独自のテストパターンを提示して電装品のサプライヤにテストを求めるスタイルがほとんどです。

言い換えると、サプライヤさんはクルマメーカさんから提示されたテストパターンを使って自社の製品テストを忠実に行うことが求められます。ちなみに、テストは従来であれば一次サプライヤまででしたが近年はそれ以下のサプライヤでも行われる様になりました。

車載電装品電源変動試験

<野尻>そうした中で課題として浮かび上がってきたのが、変動パターンの肥大化巨大化で生じる作業量の増大です。電源の変動パターンは電装品が追加される毎、車の車種が増える毎に追加されます。と同時に追加前のパターンでもテストする必要があります。そのためパターンの数は増え続け、場合によっては数万パターンにも及んでいます。

結果としてテストに要する手間と時間は増すばかりとなり、全体のコストを圧迫しています。こうして、効率化と省力化が車載電装品用電源変動試験の当面の課題となっています。

インテリジェント・バイポーラ電源を核に据えたシステム提案

電源の試験は菊水さんの得意分野ですね

<後藤>我々は車載電装品用電源変動テストの効率化と省力化という課題に対してインテリジェント・バイポーラ電源<PBZシリーズ>を中心に据えたシステムを提案しています。
PBZシリーズは、小型軽量・高効率かつ高速な電源(直流アンプ)ですが、(1)バイポーラ出力、(2)多出力、(3)自在で柔軟な出力構成、(4)出力同期機能、(5)信号源内蔵、(6)波形生成とシーケンス機能、(7)低リップル低ノイズ、など電源変動テストシステムに求められる機能・性能を全て備えているからです。

バイポーラ出力は大きなリアクタンス(誘導性/容量性)負荷となる電装品に対しては必須ですし、多出力は+B,ACC,IGなど複数の電源系統を有する自動車向けには欠かすことができません。また、並列運転も可能など出力を自在に構成できるので、大小様々な電装品に対して柔軟な対応ができます。
最近では試験信号の高分解能化が進んでいますが、PBZはスイッチング+リニア方式により低ノイズ低リップルを実現しているので、試験に十分な信頼性と再現性をもたらします。

インテリジェント・バイポーラ電源PBZシリーズ

とりわけ、波形生成とシーケンス機能を持った信号源を内蔵したうえで、複数の出力間で出力が変化するタイミングをピタリと一致させる”同期機能“は変動試験に持って来いです。これらに波形作成と自動試験の専用ソフト(Wavy for PBZ)を組み合わせることで複雑なパターンも簡単に生成できます。

当社では従来から電源変動テスト用の電源や試験システムを供給してきました。そうした中で膨大な波形パターンの蓄積があるので、PBZのシステムについてもライブラリとして提供できます。
さらに、システムとしてご提供できるよう例えば瞬断を実現するボックスをはじめ様々な周辺機器の用意があります。 例えば瞬断試験は電源出力がオープンになる状態のシミュレーションなので、出力をゼロボルト(インピーダンス=0)ではなく瞬時に出力を切り離す(インピーダンス=無限大)必要があります。

同期運転使用例

自動化の要請にも応える

作業量が増えると自動化を検討したくなります

<野尻> テストに要する手間と時間の増大という問題を解決する手段として自動化は当然の流れと言え、これまでにも多くのご相談を頂いています。
実は、電源変動試験のようなイミュニティ(耐性)テストはEMC試験の中でも自動化が遅れている分野なんです。例えば、ノイズの発生量のようにシステムからのストレスを測るエミッション試験であれば、システムをセットして測定値をパソコンで読み取れば良いので自動化は比較的簡単です。

これに対して、イミュニティテストは試験対象にストレスを与えて対象が影響を受けない(正常動作する)ことを確認するテストなので、試験の間中ずっと試験対象の動作を監視していなければなりません。この”人が常時監視して異常が起きていないことを確認する“という部分の自動化が難しいんです。

そのため、「試験の間、複数の人間がずっと目視で監視して判定は未だに人力」といった手段が採られているのが実情なのです。ですが、人間がやることですので、例えば「テスト中に試験体に組み込まれたマイコンに異常を来したが、パワーオンリセットが働いて短時間で自動復帰したため異常を見逃してしまった」といったことも起こり得ます。お客様としてはこうした部分を自動化したいわけです。

<後藤>自動化のご要望に対して我々は人の目と耳は自動化できるというスタンスで望んでいます。画像解析や音声判定の技術を導入すれば実現できることだからです。細かい話になりますが、PBZシリーズの同期機能で得られる電源変化のトリガや、車のCANモニタ等と組み合わせる事ができれば異常の特定や原因の絞り込みなども素早く行えます。

また、複数の生産拠点でテスト作業を展開しているので変動パターンを一元管理したい。というように計測ネットワークに係わるご相談を頂くこともありますが、我々は何れについてもソリューションという立場に立ってコンサルティングやシステム提案を行っています。

HEV,PHEV,EVの出現、LV148に向けた48V化などにより変貌を遂げるクルマの電源。それに合わせたヒューズの対応も急がれている。評価試験では規格対応はもちろんのこと、電流設定から計測保存まで一貫して管理できる体制が望まれる。

自動車電源の大変革に対応するヒューズ要求

ヒューズは生産も測定技術も確立されていると思えるのですが、どんな問題を抱えているのですか

<吉川>確かにヒューズはシンプルかつレガシーな部品であり、一般の電気電子機器はもとより自動車においても長い間大量に使われてきた実績があります。
ちなみにヒューズは使用されるアプリケーションのパワーラインに使用されることに注目してください。もし、使用されるアプリケーションにおける電源のインフラに変更が起これば、それに合わせた新たなヒューズが必要になることが分かります。

代表的なアプリケーションとして自動車を考えてみますと、クルマ用なら12V系のヒューズですよね。標準化と規格化も進み測定法も確立されています。

ヒューズ

<坂田>一方でクルマでは、近年、電源系に大きな変革が起きました。HEV,PHEV,EVなどの出現により12Vを遙かに超える高電圧が持ち込まれたのはその典型です。同時に電装品が増えたことで電流値が大きくなっていますし、LV148*1でバッテリの電圧が上がるといったこともあります。

そして、それら新たな電気系統に合わせるためにヒューズにも新たなものが求められているんです。電気系統の高集積化に併せて従来よりも小型なヒューズ要求などもトレンドです。
それら各々について、用途に合わせた新型ヒューズの開発と評価法/規格化などの策定が進んではいます。新たなヒューズ開発や評価にマッチした効率的なシステムが求められていますが、従来の12V系ヒューズが確立された技術として長い間使用されてきたこともあって評価装置の進化が遅れていた面も否定できません。

高速大電流の生成と制御、データの一括管理

新たなヒューズ開発や生産に用いるテストシステムの要件は何ですか

<坂田>ヒューズの試験法自体はシンプルです。基本的にはヒューズに定められた電流を流して溶断するか否かを見るわけです。但し、ヒューズに流す電流は様々な大きさと様々なパターンがあり、これを素早く正確に作り出すのは簡単とは言えません。また溶断までの時間や電流パルスを加えた回数のカウントなど、測定系も併せ持ったうえでデータを合理的に管理する機能を有する必要があります。

<吉川>キクスイではこれらの状況を鑑みて現行の代表的規格であるJASO D612*2対応をベースにした自動試験システムをご提案しています。
JASO*3 D612はヒューズそのものの規格ですので形状等も含めて定められています。溶断の電気特性に関しては「電圧降下試験」「トランジェント電流遮断試験」「溶断時間試験」「ステップ通電試験」「遮断容量試験」が規定され、ヒューズの定格毎に許容値が定められています。このD612をベースにしたのは、新たなヒューズ開発においてもこの規格に準拠した測定が基になると考えられるからです。

本システムでは、申し上げた6つの試験について自動設定・測定とGo/NoGo判定ができます。もちろん、試験のパターンファイルを書き換えることで規格とは異なる新型ヒューズの試験・判定値を定めてテストすることも可能です。試験結果は条件も含めてファイル出力されるので、一元的な管理が可能です。

アプリケーション

<坂田>システムの根幹となる電流駆動系は、当社の大容量スイッチング電源[PATシリーズ]と電子負荷[PLZシリーズ]で構成され、電源→ヒューズ→電子負荷の3者で電流ループを形成することで高精度な高速大電流パルスの生成を実現しています。

測定系は溶断までの時間計測にユニバーサルカウンタ、電圧測定にデジタルマルチメータを組み込んでおり、電子負荷のモニタ電圧から切断情報を、スタートトリガは電子負荷の信号出力から得ます。お客様の中には溶断までの電流波形を残したいというご要求もありますので、その場合は電流のモニタ出力をデジタルオシロスコープに取り込んで残すこともできるようになっています。

システム構成図

<吉川>少し専門的な話になりますが、D612規格では電流の立上がり時定数が2msと定められています。実際の使用状態から考えればごく自然な規定なのですが、時定数が一定ということは到達する電流の大きさによって電流スルーレートが異なることを意味します。ところが、一般に電子回路による電流源のスルーレートは装置毎に一意に定まるものであるため、規格に沿った測定のためには駆動電流毎にスルーレートを変える何らかの工夫が必要になるんです。幸い、当社のPLZシリーズには電流スルーレートの可変機能があるので、本システムでは到達電流値を入れればスルーレートが自動設定されるようにしてあります。

  1. LV 148
    Electrical and electronic components in motor vehicles 48V electrical system 2011年にドイツの自動車メーカー5社がマイルドハイブリッド車を想定して策定した48Vの車載電源規格
  2. JASO D612
    公称電圧12V又は24V,定格電圧32V,遮断容量1000Aの自動車用低電圧ヒューズの定義並びに試験に関する一般条件,基礎的試験方法及び性能要件
  3. JASO
    Japanese Automotive Standards Organization 日本自動車技術会規格

参考:ヒューズの国際規格にはISO 8820-3が米国の国内規格ではSAE J2077などがある。また、42V系にはJASO D621がある。

ハイブリッド車に搭載される高電圧(数百V)入力・低電圧(12V系)出力のDC-DCコンバータは、入出力共にダイナミックに変動する過酷な条件下での動作を強いられる。試験評価にも慎重さが必要だ。

HEVの12V系電力供給

ハイブリッド車にはモータ駆動用の高電圧と他の電装品のための低電圧(12V系)が混在していますね。

<新垣>ハイブリッド車両は駆動モータなどの強電系用に高電圧電池を搭載しており、他の電装品用には強電系からDC-DCコンバータでダウンコンバートして電力を供給します。EVでも弱電系用の発電システムが廃止される方向にあるためハイパワーのコンバータが必要になります。
(ストロング)ハイブリッド車の場合、高電圧バッテリの電圧は300V〜400V程度あり、これをDC-DCコンバータで12Vに落とし込みます。12V系は(低圧の)バッテリを含めて電装品の用途や重要度に合わせて複数のラインがありますのでコンバータは出力を複数持っているのが普通です。

ハイブリッド車両

入力も出力もめまぐるしく変動

車載用DC-DCコンバータ特有の事情があるのですか

<吉川>ハイブリッド車両のDC-DCコンバータはハイパワーで降圧比も大きい部類に入りますが、電気的な動作環境、具体的に言うと入出力条件が非常に厳しいという点で一般の電気機器用のコンバータとは性格が異なっています。

一般電気機器用コンバータの場合、入力と負荷は静的と言いますか概ね定まっていて、設計もそれらの上限下限を考慮すれば済みます。現実の評価においては入力を定格の範囲で振ったときの出力変動即ちラインレギュレーションと、負荷のオンオフに伴う変動いわゆるロードレギュレーションのチェックで済みます。

これに対してハイブリッド車では、コンバータの入力となる高圧ラインには駆動モータなどがつながっているためラインの電圧は動的であって、かなりダイナミックに変動します。その一方で負荷側も多数の電装品がつながっておりクルマの動作状態によって様々なパターンでめまぐるしく変動します。このようにハイブリッド車用のDC-DCコンバータは入力も出力も大きく変動する中で所望の動作が確保されることが絶対条件なんです。当然ながら評価・測定にもそれへの対応が求められます。

<新垣>もう少し具体的に言うと、他の一般的なコンバータや電源のテストでは、安定化電源で入力を固定しておき、出力に電子負荷をつないで様々なパターンで変化させて出力の電圧変動をチェックした後に、負荷を固定した状態で入力の電圧を変えて出力変動を測定したりするというのが一般的です。

電源と電子負荷のそれぞれをコンピュータから操作するのはさほど難しいことでは無く、当社も計測用電源や負荷装置のリーディングメーカとして電源と負荷を単体あるいは両者とそれぞれの制御ソフトをラックに組み込んだシステムを多数供給してきました。
ではあるのですが、それらは車載用DC-DCコンバータ特有の事情は考慮されていませんでした。

今回我々がHEV搭載DC-DCコンバータ評価ソリューションとして御提案しているシステムは、これまでのような単体の組み合わせ(ただけのシステム)ではありません。主要な構成要素として安定化電源と電子負荷が置かれていることに変わりはありませんが、複数の入出力を一括かつ連動して同時に制御できるように工夫し、専用の制御パネルとソフトウエアを組み込んだ点がポイントなんです。

実車に合わせた入出力の実現

電源と電子負荷が一括連動するメリットは何ですか。

<新垣>一言で言えば、HEV搭載DC-DCコンバータテストに求められる多様な試験条件に対応できることです。まず、本システムではHEV搭載DC-DCコンバータの実情に合わせて電源は(500V/32A)2系統、負荷は3系統まで、さらにコンバータ制御用の電源も組み合わせできるようにしてあります。電源は高電圧のPATシリーズを、負荷はPLZシリーズを使うので、パワーバリエーションは豊富です。

ポイントとなる電源と電子負荷の一括連動ですが、我々は入力2系統出力3系統を一括コントロールできるコントローラとソフトウェアを専用に開発しました。具体的には入力と出力の状態変化を一つのタイムテーブル上で設定し、制御のタイミングを同期させます。これによって入力と出力も特定のタイミングで変動した場合のシミュレーションをも可能にしました。

<吉川>お客様は基本的に実車におけるDC-DCコンバータの動作を検証確認したいわけで、例えば、「入力がストンと低下するのと同時に負荷が急に重くなったらどうか過渡的な応答を知る」ですとか「入力電圧の上昇中に特定の負荷が外れたらどんなことが起こるのか検証する」といったことができるわけです
本システムではアナログで電源と負荷に制御信号を送りますが、データは10ms毎に設定更新されます。さらに制御信号のズレは4ms以内を保証していますので同期性は十分に担保されます。

<新垣>少し話が逸れるかもしれませんが、本システムは500V近い高圧を扱う装置でもあるため、インターロックなどの安全機能も充実させています。

クルマの世界ではこれまで専ら12Vの低圧ラインが使われてきたため、お客様側に高圧の安全に対するノウハウの蓄積がありません。これに対して弊社は耐圧試験器を始め高圧回路の技術とノウハウの十分な蓄積があります。実際に、本システムでは出力端子回りの保護や配線などにもコストをかけています。こうした部分も含めたトータルなソリューションシステムだと自負しています。

システム

時間と労力を要する結線作業を皆無に。
電源室から複数の試験室に供給する電源の出力先や配電方式(単相/単相3線/三相)をワンタッチで切り換え。

測定サイトの電源事情 1

AC電源機器のEMC測定では供給電源にも細かな規定があります

<後藤>複数の電波暗室やシールドルームを保有するEMCテストサイトや試験所では、被試験機器に対して信頼性の高い電源供給が求められるため、系統(商用電源)からの電力を交流安定化電源でピュアな電力に変換して機器に供給しています。一方、試験対象となる機器は多様化しており消費電力が大きい大型機器への対応も必須となっていまして、近年では50kVAクラスの大容量電源を備える例が多く見られるようになりました。ちなみに多くの場合、電源は電波暗室の中ではなく地下などの外部に電源室を設けて設置され、そこから各暗室に配電・供給されます。

ところで、各暗室に供給する電源は、被試験体に供給するためのものですから、相形式(配電方式)や電力など必要な電源仕様は試験対象毎に異なることになります。暗室毎に要求電圧や相数が異なる場合もあれば、ひとつの部屋に複数の系統を引き込むこともあります。同じ部屋の系統でも、試験の度に電圧や相形式を変えなければならないこともあるんです。

<松田>サイトとしては利用するお客様の要求に合わせて供給電源を準備しなければなりませんから、安定化電源も部屋(系統)の数だけ想定される使用の数だけ用意したいところですが、全ての仕様を満たす数の電源を用意するのは現実的ではありません。

その一方で、サイト全体から見ると各部屋の電源を一斉に稼働させなければならないというチャンスはまれであるという事実があります。つまり、ある時点における電源の供給先は一箇所であることが多いんです。そこで、多くのサイトでは電源室には要求最大容量を満たす安定化電源を1システム設けて、各部屋(各系統)に切り替えて供給することで設備の利用効率を高めるようにしている例が多くなっています。

測定サイトの電源事情 2

電源の出力を切り替えて使うは良いアイデアですが他に何か問題があるのですか

<後藤>確かにひとつの電源で出力先を切り替えて使うのは良いアイデアです。ですが、実際には暗室が利用される度に相形式などの電源仕様も変わるわけですから、その都度大口径の硬くて重い電力ケーブルの引き回しを変更し、端子をつなぎ換えなければなりません。つなぎ換えた後の確認作業も必要です。これは時間的にも労力的にも大変なことでして、サイト様では大きな負担となっています。
なんとかして短時間でサクっと切り換えできないものか、実はお客様との会話の中でそんなお話しを伺ったのが、このシステムを思い立ったキッカケなんです。

作業効率のトータルな向上を目指す

電源側の設定変更も自動化するなどの工夫も盛り込まれています

<後藤>ご紹介システムは、当社の標準品でサイトへの納入実績も多い大容量交流安定化電源PCR-LEシリーズと、専用の切り換え機であるスマートセレクタ、それにそれらを制御するソフトウェアを組み合わせることで、電源室から複数の試験室に供給する電源の出力先や配電方式(単相/単相3線/三相)をソフトウェアからワンタッチで切り換え可能にしたものです。このシステムにすれば、もはや面倒な切り換え作業は要りません。

スマートパラタイプ使用時のシステム構成図

<松田>実は、私たちは、お客様のお話を伺ううちに結線を切り替えるだけでは十分ではないと思ったんです。というのは、私どもが供給する電源側にも作業効率改善の余地があったからです。PCR-LEを初めとする安定化電源は様々な用途でお使い頂けるよう考慮されており、複数台の電源を単相、単3、三相など様々に組み換えて使えます。ではあるのですが、用途はそれぞれのユーザ様毎に固定されているという考えに立っているため、EMCサイト様のように出力形式を頻繁に切り替えるところまでは想定されていない。

例えば三相で使うには三相ボード、単相には並列運転ボードなど専用のボードがそれぞれ必要で、変更する場合にはボードの差し替えと各電源本体の設定が必要です。EMC測定サイト様では、結線の変更の他にこの作業がその都度必要になるわけでして、出力結線切り換えの自動化だけではサイト様の作業効率を改善する具体的には電源側セットアップのめんどうを解消するソリューションとしては不十分だと判断しました。

専用アプリケーションソフト設定画面(イメージ)

<後藤>システムとしてまとめるにあたっては、機能や操作性だけでなく安全面等にも気を配りました。例えば、離れた場所からの電源切り換えになりますので、切り換え時は必ず出力オフとしたり動作時は、他の出力先からの出力制御要求を受け付けないようにしたり、といった具合です。

なお、まずは3系統の切り換えで相当たり5台までのシステムでご提案していますが、この辺りは柔軟に対応できます。出力端に置く出力端子BOXも用意したほか、複数のPCR-LEを既にお持ちのお客様にもそれらを使って切り換えシステムにグレードアップできるかたちでご提案しています。

EVやPHVの出現で新たに課せられた”充電状態にあるクルマのEMC(伝導エミッション/イミュニティ)テスト”をサポート

EV/PHVのEMC評価に新たな課題

EV/PHVが現れてクルマはエコで便利な乗り物になりました。

<市川>EVやPHVの実用化に伴って自動車業界に”クルマへの充電”という新たな技術が持ち込まれました。EV/PHVに充電は欠かせません。同時にそれは、クルマが電子機器と同じに扱われることを意味します。充電状態にあるクルマは系統(家庭のACコンセントや配電盤)につながっているわけですから、形態としては家電品など一般の電気電子機器と同じになるからです。EMCの測定・評価についても然りで、車にも(充電状態においては)家電製品などと同じEMC(電磁的調和)能力が求められることになり、国際的な規格も制定されました。充電という新たな技術を導入したことで、自動車業界にも一般の電気電子機器と同様のEMC測定と評価技術の導入が課せられたわけです。

EV/PHVでは全てのクリアが必要

別世界かつ未経験の測定

具体的にはどのような規格への対応と技術導入を迫られているのですか。

<市川>充電に関するEMC規格はECEのRegulation No.10*1で規定されています。具体的にはRegulation No.10は第5版(ECE R10.05)まで発行されていて、車両のRESS充電モード*2での試験がECE R10.04で規定され、ECE R10.05ではESA*3の REESS充電モードでの試験が追加されています。つまり、4版で充電機能を持った車本体のEMCが規定され、5版ではそれらに搭載される電装品類についても規定が及ぶことに なって各メーカでは対応に追われています。

<野尻>EV/PHV以前のカーエレ技術は一般の電気電子とは独立した技術世界を構成していました。EMCに限ってみても、例えば輻射ノイズについては一般の機器はCISPR22で規定されていますがクルマはCISPR25です。測定条件にしても導体のグラウンドか疑似大地で計るかという具合に違っていました。とはいえ、お互いに住む世界が違っていたわけで、言うなれば平和にやってきたわけです。

それが、EV/PHVの充電でクルマが系統に接続されることになったことで位置づけが変って、一般電気機器の世界とも歩調を合わせなければならなくなった。話が複雑というかクリアしなければならない規格、具体的には測定項目がぐんと増えてしまったのです。さらに具合が悪いことに、追加される測定項目がクルマにとっては別世界の未経験で、 技術やノウハウの蓄積がほとんど無いものばかりなのです。

例えば、”AC電源線への高調波エミッション、フリッカ、雷サージイミュニティ”などは家電などの機器ではお馴染みですが、クルマの技術者にとってはこれまで全く縁のなかった測定です。クルマの評価技術者にとっては降ってわいた災難というか、細かな部分になると何のことか意味が分からないとおっしゃる方もいるのが現状であり、悩ましい課題なんです。

ECE R10.04/R10.05とIEC61851-21のEMC規格要求比較

システムで提案できるアドバンテージ

キクスイは従来から一般電子機器用や自動車用のEMC試験装置を手掛けています。

<野尻>当社は直流電源、交流電源、高調波電流測定装置、自動車用の電源試験装置、さらに絶縁・耐圧試験機など、一般電子機器と自動車双方に対応した測定コンポーネントやシステムを提供してきました。EV向けには急速充電器なども手掛けています。それら長い経験の中で技術もノウハウも当社には十分な蓄積があります。

<市川>充電状態での測定が求められるわけですが、充電には外部の充電器を介して大電流の直流で行う急速充電とラインからのACによる充電の二通りがあります。まず、急速充電の場合、既成の実際に使われる充電器を使えばいいように思えるかもしれませんが、測定には信頼性の高い測定専用の充電器を特別に用意する必要があります。既成のものを使ったのでは測定値に充電器固有の特性が紛れ込んで不確かさが大きく なってしまうからです。例えば充電器からノイズが発生したら、充電器のノイズも含めて測定されてしまいます。同様にAC充電でも理想的なACの供給、つまり測定用交流電源の使用が望まれ、我々はその何れも供給できます。

<野尻>急速充電の場合はCHAdeMOやCOMBO(CCS)など方式に則った充電器でなければなりません。これらを個別に用意してその都度交換するとなると大変な負担で、できれば簡単に切り換え対応できる柔軟性が求められます。当然ながらシステム全体を制御したり機器の設定と測定を行うソフトウェアなども必要です。そんなことがあって、実は「キクスイさん何とかならないか」とご要望いただいたのがソリューション提案の出発点なんです。

幸いなことに我々は充電器(直流電源)や交流電源、関連するEMC測定の技術とノウハウを保有しています。クルマも一般電子機器も国内だけではなく欧米や中国などでも機器設計や測定現場のお客様の声を数多伺い、ご提案を重ねてきました。

ノウハウの一例を挙げれば、ECE R10のANEX16/22で規定される雷サージ試験は高電圧を扱う測定であって危険性を伴うため測定に際しては機器の配置や接続手順など作業の安全に十分な配慮が必要なのですが、クルマの世界ではこうした高電圧を扱ってこなかった。そのため、機器の配置や接続、測定の手順などが(我々から見れば)ラフに行われている例などもあったりします。

個々のお客様に相応しい測定環境を実現するには、こうした部分や電波暗室などの設備そしてオペレータを含めて全体を最適化しなければなりません。システムとしてもお仕着せの固定化されたものではなく、コンサルティングと個別の提案が必要だと考えています。

  1. ECE Regulation No. 10 (ECE R10)  路上での使用が意図された車両やそのような車両への取り付けが意図されたデバイスのEMC(電磁的両立性)に関する規則 ECE:国際連合欧州経済委員会
  2. REchargeable Energy Storage System  再充電可能エネルギー貯蔵システム ECE R10.04 ではRESSと呼称
  3. Electronic Sub-Assembly  電気/電子サブアセンブ

肥大化する電源変動のテストパターン、続々と持ち込まれる試験体に困惑する現場。
テストを効率化し評価試験の自動化を目指す。

ハイブリッド車 vs スマートメータ

同じリップル重畳で二つの異なるソリューション提案ですね

<土畑>ご承知の通り、リップルというのは電源ラインの細かな脈動のことです。本来、電源は直流でも交流でも細かな変動の無いピュアなものであるべきですが、実際には様々な理由によってわずかにリップルを伴い、電源につながれた機器や回路がその影響を受けて誤動作や特性の劣化を引き起こすことがあります。このため、リップルを含んだ電源を故意に作り出して機器に接続し、誤動作や特性劣化が起こらないことをチェックする、というのがリップル重畳試験です。 ちなみに、リップルの大半は電源の整流とスイッチングに起因するものが多数を占め、過去には商用周波数(50/60Hz)とその高調波が主成分でしたが、電源がスイッチング方式やインバータなどに代わったことに伴い近年はリップルの周波数が以前よりもずっと高くなっています。

ハイブリッド車とリップル

初めに、高電圧DC電源用システムの方から伺います。

<土畑>従来、自動車の電気系は12Vや24Vといった低電圧で統一され、電源のイミュニティ(耐性)テストも低電圧系に対するものだけでした。ところが、ハイブリッド車の開発を皮切りにHEV/PHEV,EVなどでの車両に500Vクラスの高電圧電源が持ち込まれました。

必然的に、これまでの低電圧系に加えて高電圧系に対しても電源変動や瞬停など、接続機器のイミュニティテストをするべき、という流れが起こりした。リップル重畳も然りで、500Vクラスの高電圧(DC)にパワートレインのインバータなどに起因するリップル重畳を模したテストのお問い合わせを頂くことが多くなっています。

<吉川>当社では従来から自動車の電源に関するテストをサポートする機器やシステムを多数供給し、現在もインテリジェント・バイポーラ電源<PBZシリーズ>を中心に据えた車載電装品用電源変動試験システムなどを提案しているところです。(別項参照)
ですが、これら従来システムは低圧系を対象としたものであるため、電圧が数10倍も高いハイブリッド車の高電圧系への流用は無理があるんです。

<土畑>一方で当社ではPCRやPATシリーズなど高電圧大出力の電源も取り揃えており、これらでの対応も考えられるのですが、先にご説明したように重畳するリップルの周波数が数キロから数百キロヘルツと高く、従来電源の出力帯域を大きく越えてしまうこともあって、リップル分を出力できません。そこで高電圧上へのリップル重畳を実現する新たな方法の開発に挑んで得た結果がこのシステムです。

DCリップル重畳試験

スマートメータへの技術展開

では、もうひとつのシステム AC電源用リップル重畳試験の提案に至った経緯は

<土畑>AC電源で動く機器のEMC(電磁的両立性)については以前からエミッションとイミュニティ、放射と伝導(高周波 or 低周波)それぞれの面で厳しい規制があります。さらに、規制は対象となる機器がそれぞれ想定されています。言い換えると、これまでに無かった機能を持った機器が普及すると、それを対象とした新たな規制が設けられることになります。

<吉川>その意味で、今回私どもが提案するシステムはスマートメータを主なターゲットにしています。エネルギーの有効利用を目指すスマートグリッドやスマートホームを実現するキーアイテムとしてスマートメータが急速に普及していることはご承知の通りです。

<土畑>で、規制の話に戻りますと、スマートメータを想定した新たな規制が設けられているんです。具体的には2014年にAC電源に対する伝導性イミュニティ試験IEC61000-4-19*1規格が制定されています。

一言で申し上げれば、提案システムはこのIEC61000-4-19規格に対応した試験ができるというものです。キクスイでは従来からACラインの伝導イミュニティ(耐性)の規格対応試験に関して多くの機器やシステムをサポートしています。今回の提案のシステムはその延長線上にあるとも言えるのですが、この規格が他の規格と大きく異なる点は、リップルの重畳試験それも周波数が2kHzから150kHzと周波数の高いリップルの重畳が規定されていることなんです。

そして先の直流システム同様、これまでご提供してきたシステム構成ではこれを実現できません。そこで、商用交流電源にも周波数が高いリップルの重畳を可能にする技術を開発しシステムに盛り込んだのが今回のご提案です。

リップル

<吉川>そういうわけで先に申し上げたハイブリッド車とスマートメータという何のつながりも無い分野のソリューションなんですが、ここで一緒にご紹介させて頂いたのは、それぞれの問題解決を図るうえで求められる技術が同じだったからなんです。

実は同じ技術課題だった

高電圧・大電力上への高速リップル重畳

<土畑>ここまでのお話しでおわかりかと思いますが、求められた技術とは高電圧かつ大電力の電源ライン上に周波数の高い高速リップルを重畳させる技術です。ハイブリッド車とスマートメータというアプリケーションでの違いは、基になる電源が直流か交流かという点だけなんです。周波数の高いリップルを数百ボルトクラスの高電圧上に乗せ、キロワットから10キロワットオーダのハイパワーを供給するのですが、実はこれは簡単ではありません。

電圧が低ければ、或いはゆっくりしたリップルでよければ簡単に実現できるのですが、高電圧かつ高速そしてハイパワーとなると直接的に作り出すことは極めて難しいんです。
難問を突きつけられたわけですが、付加的な方法による解決手段は幾つか考えられます。我々はベースとなる電圧とリップル即ち細かな変動分を別々に生成し、両者を足し合わせる方法を採ることにしました。

システム図

ベースとなる電源には高機能交流安定化電源のPCR-LEシリーズが使えます。PCR-LEはハイパワーでACはもちろん高圧のDCも出力でき、制御ソフトウェアなど周辺のリソースも充実しているからです。
そして、核となるリップル重畳用に新たに「リップル電圧重畳ユニット」とパターンを自在に設定できる専用のアプリケーションソフトウェアを開発しました。これによって、ハイブリッド車とスマートメータ、異なる二つの分野でお客様から求められていた課題を一挙に解決することが出来ました。

<吉川>形のうえではDC用とAC用それぞれ別のご提案なのですが、込められている技術はひとつであって、展開する方向が別というわけでして、技術的な資産を多方面へ展開できたことは良かったと思っています。

なお、リップルの周波数は現在は数キロから数百キロヘルツですが、今後はもっと高くなって行くと考えられます。我々は重畳ユニットの開発に当たってこれらを視野に入れており、一桁以上高い周波数までは既に技術的な見通しが立っています。

  1. IEC 61000-4-19
    初版:2014年 /電磁両立性(EMC)‐第4-19部:試験及び測定技術‐AC電力ポートでの周波数が2kHz〜150kHzにおける伝導性,差動モード妨害及び信号伝達に対するイミュニティ試験

注:差動モード(線間にかかる電圧)で規定される試験のため、試験信号は本来の交流供給電圧に重畳(直列加算)して試験体に印加する必要がある。

AC機器開発で最後のハードルとなるIEC61000の規格テストをワンストップでスムースに実行

難解かつ難儀

規格に従ったテストに、どんな問題があるのですか。

<松田>本システムはACラインを経由した低周波EMC、具体的にはIECの61000-3と-4で規定されたテストが誰にでも簡単に実行できる自動試験システムです。
IEC61000はAC電源で動くほとんどの機器にマストなコンプライアンステストです。電気電子の世界では比較的よく知られ簡単に行われているハズの測定試験なのですが現実はそうでもない、そこが本ソリューションつまり問題解決の本質というか”問題”部分です。

具体的に言うと、問題のひとつは規格が難解で機器のセッティングや結果の判定に多くの知識とノウハウを必要とすること、もうひとつは試験法自体が煩わしく手間がかかることです。

<矢島>ご承知の通りIEC61000シリーズはレガシーな規格で、制定されてから長い年月が経っています。その間、様々な改訂や追加が行われていて、言うなれば建て増しを繰り返した日本旅館みたいに複雑に入り組んだ、分かりにくい構造をしています。全体は体系化された規格ではあるのですが、それが故に参照規格など関連して、理解しておかなければならない情報も膨大なものがあります。そんなものを製品の設計や製造技術者が個人で1から理解しろということ自体にムリがあると思うのですが、商品化にマストである以上は誰かがやらなければならないわけで、規格の解釈に悩んでいる技術者がたくさんおられます。

で、自分なりの解釈で試験をする段になるわけですが、これがまたけっこう難儀だったりする。具体的な例を挙げると、試験対象機器の電源スイッチを人が24回もオン・オフして確かめなければならなかったり、動作を2時間も監視していなければならなかったりといったテスト項目があるんです。機器のセットアップだけでも大変なのに、測定にもえらく手間がかかる。そうなると測定全体の信頼性も「?」なわけです。

<松田>こうしたIEC61000コンプライアンステストの難解かつ難儀な部分を私たちが引き受けましょう、システムの構想からデータの管理までワンストップでいけるようにしよう、というのが本システムのコンセプトです。具体的には一連のテスト設定や判定が自動化され、エビデンスまで含めてシステムに任せることができます。一例ですが、今お話しした”人がスイッチをオン・オフするテスト”で手順を誤ってしまった場合にも簡単にリトライできるなど、ノウハウに基づいた細かな工夫も随所に織り込みました。

システム

商品開発終盤で迎える必須ハードル

製品設計者としては出来れば避けて通りたいところです。

<矢島>61000シリーズのテストは多くの場合、規格認証に必要な手続きとして量産を目前にした実機を試験所や測定サイトに持ち込んでテストが行われます。実際に私共でもサイト様に多数のシステムを納入させていただいております。ただ、ここで心得ておかなければいけないのは、測定は持ち込んだメーカさん自身の責任で行うと言うことです。実はここにもちょっとした問題があって、持ち込む側としては試験所に持って行けば全部やってもらえると思い込んでいて、テストに際して試験設備の操作や設定が分からなかったり、設定を間違ったりしてしまうことがあります。ですが、対する試験所としてはテストする機器自体については分かりようがありません。その結果、接続や設定の際に相互の考えにすれ違いを生じることがあるからです。

<松田>予め自社でテストしてから持ち込むことも良く行われるのですが、お話ししたように難解難儀な試験ですし、テスト設備も簡易的なもので行わざるを得ないということも多く、本番で問題が発覚ということもありがちです。

規模の大きなメーカさんなどではテスト専任のセクションがあって、設備も揃っていますし規格の知識を持った方もおられるのですが、基本的にそういうセクションは機器の設計には係わらないので、テストの方法や結果が旨くなかった場合のフィードバックなど、設計者と測定者間の理解や思惑が一致せず処理がスムースに進まないといった悩みを抱えていたりします。

これらIEC61000の測定シーンで起こる問題の原因は各々の立場や理解の差による行き違いなわけで、もし、試験作業が誰にでも分かりやすくワンストップで行え、自動的に結果が得られるシステムであれば、齟齬を生じる事は無いはずですよね。

難儀なのは操作だけではない

システムを自分で構築することはできないのでしょうか

<矢島>現状はメーカも試験所もお客様がそれぞれのスタイルでシステムを構築されています。ですが、何れの場合もハイパワーな機器と計測器が混在するシステムになりますので、セットアップも簡単とは言えません。配線の引き回しだけ考えてもノウハウが必要です。例えば、LIN(ライン・インピーダンス・ネットワーク)は入出力の配線によってフリッカや高調波の測定値に差が出ることがあり注意が必要です。
制御ソフトも、多数のコンポーネントを組み合わせとなることから相互の動作タイミングや異常時の振る舞いなどを熟知した上で組む必要があります。

システムアップのやりかたとして、構成機器を複数のメーカ、例えば電源は電源メーカ、測定器は測定器メーカから調達し、ソフトも自分で組むことが考えられますが、それぞれが持つ特有の設定方式ですとか応答のクセなどを把握しないといけません。特に問題になるのが何らかのトラブルに遭遇した場合です。例えば測定値がおかしいと言う場合に、測定器メーカに相談したとしましょう。測定器単体に問題があればメーカは対応できますが、システムが絡んだトラブルですと測定器メーカも対応に限界があります。

<松田>システムアップをどこか一社がまとめることもあるでしょう。実際のところ当社にも他社製の機器と組み合わせたシステムはたくさんあります。この場合はシステム全体について当社が責任を持ってサポートさせていただくわけです。けれども、例えば他社製機器にトラブルが起きたときに当社は窓口となりますが、リペアは当該社さんにお願いするので、対応としてはどうしてもワンテンポ遅くなります。

<矢島>その点、本システムで使われる主要コンポーネントは全て当社自前で揃えました。当社既存品だけでなく制御ソフトや切り換えに要する部分等、本システムのために新たに開発したものも全て自前です。
さらに、システム構想から設置まで一貫しての対応をいたしますので、何か問題が起きても全体がすぐ把握できます。お客様にもトータルで責任が持て、ワンストップの即対応ができることは本システムの大きなアドバンテージだと思っています。

エネルギー有効利用のキーアイテム、パワコンに課せられた系統連系試験の重荷を取り払う自動試験システム

根強いパワコン需要

自家発電や蓄電が家庭にも浸透してきました。

<渡邊>太陽光、風力、燃料電池、コジェネ、小水力などに加えて最近ではEVやPHEVなど自家発電、蓄電、そして買電が普及してきました。
とりわけ、発電・蓄電装置、電力消費機器、そして電力会社からの系統という三者の電力の流れを制御するパワコン(PCS:パワーコンディショナ)には根強い需要があります。

パワコンは系統と並列する(系統連系する)ことからやや複雑な面をはらんでいます。電力系統は常に安定で安全であることが絶対条件なわけで、パワコンがつながることによって逆潮流(系統への電力注入)で系統の電圧や周波数の過不足が生じたり、解列(系統からの切り離し)時に単独運転による危険が生じたりすることがあってはならず、これらを事前に回避しなければいけないからです。

<小林>自家発電や分散型発電が系統と連系することによって起こる様々な問題は、当初から研究・検討が進められてきました。当社も電力中央研究所様に系統模擬用の交流電源をお納めする等してお手伝いをさせて頂いた等の経緯があります。結果として、現在では国や業界からガイドラインですとか試験方法などの技術要件が示され、市場にあるパワコンはこれらの要件を満たすように設計そして評価されています。

 参考:
・電力品質確保に係る系統連系技術要件ガイドライン 資源エネルギー庁
・系統連系規程 JEAG 9701-2006 日本電気協会
・小出力太陽光発電用パワーコンディショナの試験方法 JIS C 8962
・系統連系形太陽光発電システム用パワーコンディショナの単独運転検出機能の試験方法 JIS C 8963
・小型分散型発電システム用系統連系保護装置等の試験方法通則
JETGR0002-1-6.1(2015) 平成27年10月 一般財団法人電気安全環境研究所 (JET)
・太陽光発電システム用系統連系保護装置等の個別試験方法
JETGR0003-1-5.0(2015) 平成27年10月 一般財団法人電気安全環境研究所 (JET)

設定を変えては測定を繰り返す面倒なテスト

負荷装置の設定を165通り変えなければならないことも

<渡邊>例えば公的な機関であるJETが試験方法という形で具体的な手順と判定法を定めています。
系統につながるうえで十分な安全と信頼が確保されることを確認するためには必要なテストであり、パワコンを世に出すために半ば義務づけられた関門です。メーカさんとしてはできるだけ短時間でしかも簡単にクリアしたいわけです。ところが、この試験方法に問題というか、かなりやっかいな作業手順要求をしている部分があるんです。
実際にやろうとすると人手では到底引き合わない作業が含まれています。

試験の種類と規格

<小林>象徴的な試験項目のひとつに単独運転防止試験というのがあります。
これは、発電設備から電力供給が行われている状態にありながら、事故などで系統から切り離されたときのシミュレーションテストです。発電装置に負荷がつながった状態で系統から切り離すのですが、現実の負荷は抵抗(R負荷)とリアクタンス(L負荷、C負荷)の組み合わせですのでルールでは負荷装置に設定するL,C,Rの値の組み合わせを165通りの場合について行うよう求めています。

<渡邊>考えてみてください。負荷装置の大きなツマミやハンドルとスイッチを操作し設定しては測定、という作業を165回も繰り返すんですよ。系統連係の実験や研究というのであればやるかもしれませんが、商品化のための作業だとしたら到底やっていられません。

実際に手動でやっているお客様もおられるのですが、それに要する時間そして労力たるや大変なもので、実際のところ、作業者が2週間も張り付くハメになったと嘆くお客様もおられました。作業者にとってもメーカにとっても悩みの種、ぜったいに何とかしたいと思いますよね。私たちも試験装置の供給メーカとして何とかしたいと思ったのは同じなんです。

<小林>そういったことがあって、このシステムでは負荷装置にも遠隔設定機能を持たせ、ソフトウエアから自動的に設定できるようにしました。これによりお客様は165回に及ぶ設定と測定の繰り返し作業から解放されます。
作業時間も大幅に短縮されますし、繰り返しに伴う人為的な設定ミス等も無くなり、信頼性が向上します。

他の試験項目も自動化により、作業の効率が大幅にアップします。
例えば周波数フィードバックですとかステップ注入の試験では1サイクルの期間のデータを取り込んで有効・無効それぞれの電力を算出する処理を複数回繰り返す必要があるのですが、これも自動化によって短時間で終えることができるようになりました。
ちなみに、全ての項目において結果がロギングされますので、全体の管理作業も極めて楽になります。

システム図

LAN制御でカスタマイズも容易

発電の種類やパワーなど、お客様にも様々な事情があります。

<渡邊>当然のことながら供給電力はどのくらいか蓄電も含む装置か否か等で細かなシステム構成は異なってきますが、提案システムは系統模擬用の交流安定化電源、系統のインピーダンスを模擬するLIN、発電部模擬用の直流電源、負荷装置、電圧電流の測定器、信号や電力線の切り換えユニット、専用のソフトの組み合わせです。核となる交流安定化電源は30%までの逆潮流を受け容れられる能力を持ったPCR-LE/LE2シリーズを使います。試験の多くは解列に要する動作時間を計測するのですが、それには系統模擬電源とパワコンとの同期が不可欠で、こうした部分も十分に考慮されています。

<小林>本システムではそれらをLANで結びソフトウエアで制御していますので、お客様の都合に合わせたカスタマイズが容易であることが大きなメリットです。例えば、電源とアプリケーションソフトをお求めいただき、計測部分はお客様がこれまでお持ちのものを使って、後にフルシステムに移行して自動化を実現する、といったプランも考えられます。が、何れにしてもハイパワーな設備になりますので設置場所のほか予算的にもまとまったものとなり、お客様にとっては大きな投資となることも確かです。そのため、このシステムには十分な柔軟性を持たせお客様毎に最適なシステム構成をご提案できることが重要だと考えたわけです。

<渡邊>どの場合も作業の効率化と生産性・信頼性の向上を考えれば、投資に十分に見合うソリューションになったと確信しています。自動化による作業効率の良さを実際に体感して頂くためにデモルームを開設しシステムを常備しておりますので、気軽にお声がけ・ご相談いただければ幸いです。

航空機特有の電源系統における電圧変動試験で
信頼と安全確保に一役

自律完結

航空機電源の概要を教えてください

<渡邊>航空機というのはエンジンの推力や油圧で制御される機械的構造物ですが、同時に多数の電気・電子機器が積まれた巨大な電子装置でもあります。さらに、飛んでいる間は外から電気をもらうわけにはゆきませんので一機の中で発電から消費までが賄われる自律完結型の独自の電気世界を構成しており、系統も何種類もあってそれらが混在しています。
具体的な系統構成は機種によって異なりますが、メインエンジンに連結した発電機を源とするACラインと通信機器や機内のエンターテイメントシステム用に変換されたDCラインとが骨格を成しています。
ACはフラップの出し入れや車輪の格納などに使われたりし、周波数は400Hzが主で380〜800Hzなど可変周波数のものもあります。DCの電圧は14V系などもありますが28Vが主です。近年では機器の軽量化を図るために270Vといった高圧のDCラインを持った航空機もあります。当然ながらDCはバッテリーバックアップされると同時に非常用にDC発電機を持つことも一般的です。
いっぽうで、駐機時には地上から電源を得たり、万一に備えて系統の相互変換や保護協調機能を持たせたりなど全体として冗長性を持ったシステムを構成しています。

航空機の電流系統

<茂戸藤>航空機の電源は特殊と言えば特殊、複雑と言えば複雑な世界なのですが、実は私共電源メーカからすると電圧的にも周波数的にも特別変わったものではなく、実は通常の守備範囲なんです。
例えば、搭載機器のメーカが機器を開発・製造・評価する際には飛行機から電源をもらうわけにはゆきませんので、ローカルに航空機用の電源を得なければなりませんよね。ラボや工場内に航空機模擬の電源設備を必要とするわけです。実際、これまでにも航空機関連機器の開発や製造時用の電源として当社のACやDC電源をお使い頂いています。

飛行機も電子化が顕著

航空機の電源環境を規定する規格がいろいろあるのですね

<茂戸藤>航空機は安全性と信頼性が第一ですので、搭載される機器についても振動や衝撃、温度や気圧それに電磁ノイズなど動作環境に対して様々な”しばり”が設けられています。各電源系統それぞれについて言うと、電源そのものの品質規定がまずあり、相対して電源を使用する機器についても電圧の瞬時低下など電源異常などに対して動作を担保するイミュニティの規定があって、両者を合わせることで両立性が保たれています。
因みに航空機は複数の電源系統が連動しているうえ平時でも供給系統の切り換えや変換が行われます。機器(負荷)側からすれば電源の瞬時低下や周波数変動などが起こり易い電源から電気供給される訳ですから、搭載機器の電源イミュニティは一般の電子機器よりも高いレベルが要求されています。搭載される電子機器の数が増えていることや回路の動作電圧が小さくなっていることもEMC的にはキツイ方向に向かっていると言えます。

<渡邊>具体的には軍事用にMILの704、民間用ではRTCAのDO160、同じく民間用はJISのW0812などの中に電源環境の試験規定があり、ノーマル、エマージェンシーなどのテストモードでの試験を要求しています。また、各航空機メーカでも独自に規格を設けていて、搭載する電子機器メーカに対してその規格もクリアしたうえでの納入を必須としています。
いずれにしてもテストに際してはローカルに電源異常を故意に作り出す設備を必要とするわけで、本システムはそのためのソリューションなわけです。

():MIL-STD-704, RTCA DO-160, JIS W0812
RTCA:Radio Technical Commission for Aeronautics

信頼が信頼を裏付ける

PCR-LEをベースにしたのには訳があるのですか

<茂戸藤>本システムはリニアアンプ方式の高機能電源PCR-LEをベースにして航空機搭載機器メーカさん向けのアプリケーションソフト(Avionics Test Software SD012-PCR-LE)を組み合わせたものです。その意味ではPCR-LEの数あるアプリケーションソフトのひとつと位置づけることができますが、我々としては新たなシステムソリューションのひとつという考えでプランを進め、お客様にご提案しています。PCR-LEをベースにした理由を一言で述べるなら、PCR-LEは航空機搭載機器テストに対応する高い能力が元々備わっているからです。

<渡邊>試験器は信頼性が重要です。例えば試験信号が信頼できなければ試験結果も信用できませんし、試験で問題が発覚した場合に原因の切り分けが難しくなります。さらに試験器自体が壊れたりたまに動作が怪しかったりでは話になりませんし、万一故障した際に修理や点検に長い日数を要するようでは機器の生産そのものに大きなダメージとなってしまいます。
航空機というものの性格上、より確かな信頼のおける測定が求められていて、規格の中にも「変動パターンや波形が規定と違わないことを確認してからテストを始めなさい」と言う旨のことが書かれていたりします。規格に合致した正しい試験器を使いなさいということなわけです。
PCR-LEはACもDCも出力できますし、周波数自在でローノイズ・低ひずみなうえに応答性にも優れているので、再現性に優れた試験信号を出力できます。一般電子機器の電源変動試験用電源として積み上げてきた膨大な実績の裏付けもあります。本システムでは必要があればインテリジェントバイポーラ電源のPBZシリーズも併用できるようにしてありますが、これも同様な理由に因ります。

電源瞬断/変動試験システム(例)

<茂戸藤>実は、安価なスイッチング方式の電源をベースとすることも考えられ、実際にそのようなシステムも無いわけではないのですが、私共では何よりも測定の信頼性確保と設定の自由度さらに拡張性を重視し敢えてリニアアンプ方式の高機能電源をベースにしたシステムを提案させて頂いています。テストの前というか機器選定に際して高機能電源PCR-LEをベースにしたシステムの波形を実際に見て確かめて頂ければ、そのクオリティの高さがお分かり頂けるはずです。

1画面3ステップで完結

使い勝手の面ではどんな気配りをされましたか

<渡邊>本システムでは、”お客様が高信頼の測定をシンプルに完結できること”をコンセプトに制御ソフトウェアを開発しました。PCR-LEは出力を自在に制御できるので、パソコンから詳細なパラメータをその都度細かく設定して実行するタイプのソフトもアリというか作ることができます。ですが、実際に試験を行う機器メーカさんや航空機メーカさんの立場に立って考えると、規格試験の作業はコストや納期に直接跳ね返るものなので、できるだけ簡単・確実に行いたいんですよね。被試験機器をつないだら後はボタン一発で自動実行みたいなシンプルなものが望まれるわけです。
そうしたことから本システムでは試験パターンをライブラリとして揃えておき、それを選択して実行するスタイルにしました。こうすることでシンプルな操作と様々な規格要求に対する柔軟性を両立できます。実際、本システムではひとつの画面上で、規格を選択する、試験項目を選択する、実行ボタンを押す、という3ステップで規格試験を完結できます。
シンプルに、短時間で、高信頼のテストを実行するシステムをお届けできた、と思っています。

<茂戸藤>同時に、お客様固有の試験波形やシーケンスあるいは新たな規格条件の追加などがあっても、ソフトウェア上で簡単な変更を加えるだけで即時に対応できる柔軟性も持たせてあります。具体的にはシーケンスのステップリスト画面を編集するだけですので、お客様サイドでも簡単に追加・変更可能です。
また、お客様の中にはACとDCを別系統で同時に使ったテストをしたいという方もおられます。そうしたご要求に際しては当社のDC電源などと同期して動かすソフトが用意されていて、それらとの併用も可能です。

アビオニクステストソフトウェア

再現性の確保が難しい過渡サージ試験。
規格に忠実な波形作りで信頼性向上に挑む。

誤動作は事故に直結

サージのテストは一般の電子機器でも行われています。

<新垣>元々、クルマは一般の電子機器に比べてEMC的に厳しい環境にあると言われています。伝導ノイズ、さらに過渡的なサージに限って考えても、クルマにはモータや電磁アクチュエータ、大電流が通るワイヤハーネスなどサージ発生源が多数存在します。同時にそれらはECUなどの電子機器と混在・隣接して置かれていて、サージに起因する電子回路の誤動作が発生しやすい環境です。さらに、近年ではクルマの電子化に伴ってサージトラブルの対象アイテムが増えました。クルマはサージを出す面でも受ける面でも極めて厳しい環境であると言えます。いっぽうで搭載機器の誤動作は即事故、人の命に関わりますから、サージに対する強力なイミュニティが求められます。

<後藤>測定・評価という立場から見た場合、ひとつ厄介なのは、クルマが多数の機能が複合的かつ独立分散して動く機能体であるという点です。一般の電子機器であれば、機器の設置場所ですとか動作のモードや順序がほぼ決まっているのでサージが起きる状態を予め想定、つまりシミュレーションテストしやすいんです。これに対してクルマは例えば、アクセルを踏み込んでいるときにワイパーがオンされるとか、エアコンが回り始めた直後にヘッドライトが点く、といった具合に動作の組み合わせが限りなく考えられるので、シミュレーションのパターンを絞り込むのが難しく、現実に適した試験や再現性に優れた測定が困難といった問題があります。

ISO7637+オリジナル

規格の動向はどうなっていますか

<新垣>サージ試験は、想定されるサージの波形を定義してこれを試験器によって作り出し、被試験機の電源や信号ラインに印加して耐性を確認する、という手順を踏みます。したがって想定される状況毎に定義される波形が異なります。クルマの場合は誘導性負荷の遮断ですとか、電流の断続によってハーネスが発するサージなどです。したがって過渡サージの試験規格には幾種類もの波形が定義されていて各波形それぞれに対しての試験が必要です。

試験規格の種類

<後藤>自動車の過渡サージを規定した規格の技術仕様は何れもISO7637が基になっています。例えばオルタネータが動作中にバッテリラインが断線した時を想定したロードダンプテストの現行規格はISO16750ですが、これはISO7637から移行したものです。ちなみに現行のISO7637は第三版(ISO7637-2.2011 Ed3)です。

欧州では自動車EMC指令適合の「eマーク」からECE Regulation統合によるEマーク(ECE-R10)など制度上の変遷はありましたが、技術的な内容は依然としてISO7637が参照されており、対応が必須であることは変わりありません。国内ではJASO D001という規格が以前から存在していますが、過渡サージ試験の内容はやはりISO7637と同様なものになっています。

<新垣>実際には各自動車メーカさんが自らの経験に基づいて独自の波形をプラスした自社オリジナルの規格で運用というのが実情です。先にお話ししたようにクルマではシミュレーションのパターンを絞り込むのが難しいことがその背景にあるわけです。国際規格や業界規格のクリアを前提とし、さらに独自のテストで慎重を期すというスタンスですね。

JASO:Japanese Automotive Standards Organization 日本自動車技術会規格

KES7700

商品の位置づけと方向性はどうお考えですか

<後藤>弊社では車載電子機器用EMC試験システムKESシリーズを展開しています。過渡サージ試験については、その中でKES7700としてシリーズ化し各種の規格試験に対応する体勢を採っています。
ただ、前述のように自動車メーカが独自な波形を定義することなどお客様毎に要求内容が異なることも多いので、カタログ品というよりカスタムソリューションとして対応させていただいています。

<新垣>原理的にサージテストの大半は予めコンデンサに蓄えておいたエネルギーをスイッチで一気に放出させるという単純なものです。パルスの時定数も公に定められています。そういう意味では技術的にさほど難しいアイテムではありません。ですが、計測器メーカとして波形の細部まで拘って再現性を、さらに操作性に拘って作業効率を追求するということになると一筋縄では行きません。

例えば何種類もの波形を用意して簡単に切り換えできるような工夫も必要になります。これに対してKES7700ではユニットの差し替えで簡単に切り換えできるようになっています。そうすれば波形が新たに定義された場合もその波形用のユニット追加・換装だけで済みます。

KES7700

正しい設備を正しく使う

キクスイのどんな技術が注ぎ込まれていますか

<新垣>規格に基づく商品の品質保証試験ですので信頼性が第一であり、テストの再現性という意味ではひとつひとつの波形品位に十分気を配りました。何にも増して”定義された波形に忠実であること”はすごく重要だと思っています。例えば、先にお話ししたロードダンプを想定したパルス立ち上がりがサプレスされたパルス5bという波形の印加テストがあります。ロードダンプ時には大きな過渡電圧が発生しますので実車には保護用のクランプダイオードが組み込まれています。パルス5bはこの状態模擬として定義された波形なのですが、これを簡単な電源とインダクタンス、抵抗、それにダイオードなどの受動部品で構成すると、実際に測定する際に定義された波形にはならないことが分かっています。ダイオードがクランプ領域に入ると負荷となってパルスが尾を引く部分の時定数が短くなってしまうからです。そこで我々はパルス5bの生成に際し、まずアンプ方式の高圧電源で非サプレスの波形を生成した後にロードダンプサプレッサーでサプレスレベルを超えた部分を吸い取ることにしました。

<後藤>この方式は受動部品方式よりコストがかかってしまうのですが、パルステールの時定数に影響を及ぼしません。どう考えてもこちらの方がまっとうなやり方だと思いますし、”規格で定義された波形に忠実”という我々のコンセプトに合致することからも、敢えてこの方法をご提案しています。

波形

私が取り説

ハード面以外での拘りは?

<新垣>正しい計器を正しく使うというのは計測の基本というか大原則ですよね。そういう意味では、計測器メーカは正しいハードを作っているだけではダメで、正しく使って頂いて初めて測定に価値が生まれるわけです。きれい事の様ですが我々はそこまでサポートするべきなんだと思います。

なので、弊社のソリューションシステムは設計者が自ら納入先に出向いて取扱説明をしたりお客様の生のご要望を直接承って製品に反映したりするようにしています。このシステムでは私が取り説というわけです。

<後藤>これは一例に過ぎないのですが、お客様の中にはノイズの試験をするのにパソコンを含むデジタル製品を持ち込むことにアレルギーというか不安を抱く方がおられました。その時にも設計者が直接出向いて、互いに技術者同士フェイス・トゥ・フェイスでお話をすることでご納得頂けたことがあります。そんなことからも、計測は正しい計器を正しく使うという測定器メーカとお客様との相互信頼で成り立っているんだなぁと感じています。

クルマを電力源として使う
Vehicle to Homeの実車を模擬
パワコンの短期開発をサポート

EV普及はグローバルトレンド

EVの普及に併せてV2Hが注目されていますね。

<渡邊>EVの普及が加速しています。さらにここへ来てクルマを電力源として使うV2Hの導入も進んでいます。
ご承知の通りV2H、Vehicle to Homeは、電気自動車(EV)やプラグインハイブリッド自動車(PHV)、燃料電池車(FCV)などが蓄電池に蓄えた電力を災害時等の家庭用電力として利用することであり、クルマが暮らしを豊かにする技術手段のひとつとされているわけです。
一方で、EVのV2H利用というのは我々電気機器の側から見ると大きな転換です。

<市川>元々のEVに対しては充電ステーションなどEV用の充電設備、具体的にはAC/DCコンバータを考えれば良かったわけですが、V2Hではパワーの向きが逆になりますから、AC/DCではなくクルマを電源とするDC/ACインバータにしないといけない。さらに家庭内の電力ラインともつながるとなると、太陽光発電や系統電力などとの交通整理が必要になります。これは機器で言えばパワーコンディショナですとか系統連系装置ですよね。

そうした要因からも電力エネルギー関連、具体的にはパワーコンディショナを手掛けているメーカさんはV2H/EVの普及に対して大きな関心と期待を寄せています。実際のところ、太陽光パネルや蓄電システム向けのパワーコンディショナメーカさんの多くがV2H/EV向けのパワコン/充電器の開発と市場参入に注力されておられます。

パワコン開発の難題

V2Hのパワコンを開発するうえで問題点はありますか。

<渡邊>V2Hのパワーコンディショナはクルマ、もっと具体的にはクルマに搭載されたバッテリが電源入力ですから、クルマとつながらなければ動作しません。したがって動作テストには実際に市販されているEVが必要になります。ですが、開発時の動作テストやデータ取得、生産時の検査など作業の現場に実車を持ち込むのは現実には難しいことです。開発や生産の現場が本物のクルマを持ち込める環境にあることはむしろ希ですし、実車でテストしようとしたら各自動車メーカの各車種を揃えなければならないわけですが、それも無理な話です。最終的にはいくつかの実車による確認は必要ですが、パワコンメーカさんは現場用に各種のEVを代替えする手段に苦慮されています。

<市川>本システムはこの問題に対するソリューション提案で、具体的には当社のDC電源PAT-Tシリーズと電子負荷PLZ-4WHシリーズ、それと通信用のパネルを専用アプリケーションから制御することでEVのバッテリを模擬します。

EVのバッテリは車種毎に容量が違うので、それぞれに合わせたシミュレーションができるようになっているのはもちろんですが、実は違うのは容量だけではなく、電圧電流カーブ、つまりその時々の電圧に対する電流の値が違ったりします。本システムではこの電圧電流カーブも織り込んで、より実際に近いシミュレーションが出来るように考慮しました。
また、狙った充電状態を実車で実現するのも簡単ではない。例えば電池の残量が残り少ない状態をテストしようと思ったらクルマを運転して走り回ってこなければなりませんよね、シミュレータならこれを即時に再現できます。

システム図<渡邊>反対に、実際にはあり得るはずのない状態、例えば電圧が極端に下がった場合に電流を吐き出し続けるとか、バッテリの最大電流を上回って出力するとか、そういう常用域を越えた異常状態みたいなことも作り出すことができます。車は安全第一です。さらにV2Hで系統とつながるとなるとこれも安全が最優先事項ですから、お客様も異常に対する配慮には神経を使います。本システムは安全確認のための異常シミュレータにもなる、というわけです。

クルマの個性やクセも再現

電源と電子負荷があればテストできそうな気がします。

<市川>ご承知の通り、バッテリということでは充放電テストのシステムですとかテスタですとか、当社の得意分野なので技術もノウハウもたっぷり蓄積があって、人材も揃っています。本システムにおいても電池としての充放電特性を模擬するという意味ではPAT-TシリーズとPLZ-4WHシリーズの持つ優れた能力を組み合わせて制御するノウハウが詰め込まれています。

ですが、V2Hではそれに加え充放電に際してCHAdeMOなどの通信を伴います。電気自動車の急速充電に関する技術や標準規格はまだ新しく、個々のEVとステーションの組み合わせによっては、制御信号の通信不具合により動作が異常中断するなど、思わぬトラブルが発生することがあったりもします。そういったことまで考えると、通信も合わせないとEVのシミュレーションにはならないんです。

<渡邊>これに関しても当社は例えばCHAdeMO協議会の正会員でありますし、充電器をつないだ状態でのEMCテストシステムもやっていて、ノウハウや情報も濃いものを持ち合わせています。例えば、CHAdeMOでもバージョンはいくつもあって進化しているわけで、本システムはCHAdeMO/V2H ガイドライン最新版に準拠していますが、実は各バージョンには例えば応答のタイミングなどに細かなクセみたいなものがあります。

また、充電時の通信でエラーが発生した場合や予期しない割り込みに対する反応など、通信の応答などは個々のクルマによってそれぞれ違います。その一方で、充電器に接続されるのは新型車だけではありません。パワコンサイドでは新旧様々なバージョンのクルマとうまく通信できなくてはならないわけで、その確認もしておきたい。EVシミュレータはそういう時のためのものでもあるわけで、本システムでは通信のプロトコルやパラメータについても細かな設定ができるようにしてあります。

多面的EVサポート

EV関連では他にも様々な電気テストが求められています。

<市川>今回はEVシミュレータのご紹介でして、これはEVのメーカさんでは無くパワコンメーカさんのためのソリューションです。当社は太陽光発電や蓄電システムなどに関するテストソリューションも初期の頃から手掛けていますので、エネルギー関連のお客様との交流も厚く、様々なお話を伺ってきた中から生まれたものなんです。

対向するEVに関しても当社では急速充電器ですとかもあり、いろいろ経験を積んでいるわけです。先にお話ししたEVのEMCテストシステムなどの他にも、EV内の高圧部分のテストシステム等EVに関する様々な問題解決に間口を拡げて多面的にお応えしています。

<渡邊>実はお客様の中には充放電に際しての通信のやり取りだけをテストしたいという方もいます。そういうご要求に対しては、電源も電子負荷も無しで通信部分だけのEVシミュレータとしてご提案していくことなども考えています。EVから見たパワコン側・充電器側のシミュレータもソリューションとしてご用意していますのでこちらも機会をみてお話しさせて頂ければと思います。

EVへのシフトは、エネルギーと環境問題から考えても要素技術の開発状況をみても、もはや誰もが疑う余地のない確実なトレンドです。そうしたトレンドに係わっていけるのは技術者として幸せなことです。

CHAdeMO

電子負荷のオプションとして、
インピーダンス計測機能を追加。
大型バッテリの生産やメインテナンスに寄与。

ニーズの変遷

バッテリの能力向上が顕著です

<大塚>一口にバッテリの向上と言っても、その内容は様々です。評価は充放電テストにおける端子電圧測定などが基本になりますが、能力の評価という観点では、旧くは負荷をオンオフして端子電圧の差から内部抵抗を算出していました。理想電池と直列抵抗という単純な評価です。
その後、電池の容量や性能が上がると内部抵抗はどんどん小さくなって、直流抵抗での判別や測定自体も難しくなったこともあって、1kHz程度の交流に対するインピーダンスで評価することが一般化し、標準化もされています。

一方、新型電池の開発や研究では内部の電極や電解質などの要素解析手段として、全体を抵抗一本では無くコンデンサや抵抗などが組み合わさったものとしてとらえ、外部からそれぞれの値を知るためにインピーダンスの周波数特性を求める交流インピーダンス測定なども行われてきました。複素インピーダンス(ベクトル)の軌跡を直交座標上に描いたのがコールコールプロットです。

<加々見>近年ではその応用として、インピーダンス特性測定で得られた知見を基に、いくつか特定の周波数ポイントでのインピーダンスを測定して製品の良し悪しや、内部状態などを判定するといったことも試みられるようになってきました。

実際のところ、バッテリの出荷に際しての個々の製品検査や設備されたバッテリのメンテナンス、さらにバッテリリユース時の良品選別などの現場で、手軽にかつできるだけ短時間で答えが出せる方法は無いか、という声も聞かれます。

ニーズへの対応

バッテリテスタを使えば済むのではありませんか

<加々見>スマホに載るような小型の電池向けには、交流インピーダンス測定も可能なバッテリテスタもあります。ただ、電池が大型になると対応が難しくなってくる。インピーダンスがミリオームオーダとすごく小さくなって測定信号の検出が難しいといったこともありますが、試験条件もフル充電時や放電終了時といったスタティックかつ独立した状態ではなく、特定の負荷を接続し電流が流れ出している状態でのインピーダンスを知りたくなったりするんですね。特に燃料電池などは負荷に電流を供給することで機能するわけですから、負荷状態での測定は必須です。

ところが、その場合はバッテリテスタだけでは対応できない。対応策として電子負荷と交流信号源、それにバッテリ電流と端子電圧を同期して測定できる複数のマルチメータ等を組み合わせてシステムを組むことになります。この方法は電子負荷の典型的アプリケーションのひとつではあるのですが、使用する機器の数も多いため、”手軽に”というわけにはいきません。

システム構成図

<大塚>システム化によるソリューションとは別に、私共では燃料電池用インピーダンス測定システム[KFM2150 SYSTEM]を提供しています。同システムは広範囲なパワーレンジに対応し10mHzから20kHzの範囲で詳細なインピーダンス測定とプロット、さらにI-V測定もできスタック用のスキャナなども用意されているので、電池の研究開発や生産技術などを担当なさっているお客様に重宝されています。

ただ、お話ししたように電池の世界では研究・開発目的とは別に電池の生産やメインテナンス現場でもインピーダンス測定のニーズがあるわけです。その場合、先の組み合わせシステムやKFM2150ではちょっとオーバースペックというか現場用としては敷居が高いきらいがあり、導入をためらっているといった声があることも確かです。ソリューションとしては完全とは言えなかったわけです。

KFM2150 SYSTEM
KFM2150 SYSTEM

コロンブスが落ちてきた

開発のきっかけは?

<大塚>実はある時ふっと閃いたんです。それは昼休みに当社の電子負荷PLZシリーズの設計者と話をしていたときなんです。PLZはこれまでに様々な進化や拡張を遂げてきたシリーズでして、汎用目的ではそれまでのPLZ-4Wに最新のPLZ-5Wシリーズがラインアップに加わっています。この4Wから5Wシリーズへの進化の話をしていときです。

私としてはインピーダンス測定のことが頭にあったわけなんですけれども、実はPLZ-5Wシリーズがインピーダンス測定に必要な技術要件の多くを潜在的に持っている、と言うことに気がついたんです。簡単に言うとPLZ-5Wは高速電流シーケンス機能が備わっており、高速で任意な電流の引き込みが出来る。高分解能A/Dコンバータを積んでいて、高精度な電圧や電流測定能力があることなどです。インピーダンスを測るには、電池の負荷電流に交流分を重畳させてその時の電圧と(電圧に変換した)電流を同時に測定します。交流信号源としてファンクションジェネレータを、電圧を測るのに高精度なマルチメータなどを必要としたわけですが、PLZ-5Wにはそれらを肩代わりできる機能というか性能が備わっていたのです。

だとすれば、PLZ-5Wに少し手を入れれば単体で電池のインピーダンス測定に対応できるのではないか、我々もお客様も少ない負担でこれまでのソリューションに欠けていた部分を補うことができるぞ、というコロンブスの卵というかニュートンのリンゴみたいな、ふとした思いつきが開発の出発点でした。

<加々見>そこで、実際にPLZ-5Wに手を加えてテストしてみたところ、これなら出来そうだということがわかりました。大容量の電池では複数のセルをスタック(積み重ね)して、途中のセルのインピーダンスを測りたいと言うこともあるのですが、その場合に必要な同相除去能力などもクリアできる見通しが立ちました。
PLZ-5Wは大電流までのモデルがありますので、より大型の電池にも対応できることも魅力でした。

電池というのは満充電時と放電の終期とではインピーダンスが変化します。ですので、メーカさんとしては電池を定められた量放電させた状態でのデータも欲しいわけで、このために電子負荷が使われたりもします。そもそも、電池の基本とも言える充放電テストには電子負荷が不可欠ですので、電子負荷は電池メーカさんにとってマストなアイテムなんです。インピーダンス測定に電子負荷が必要だとしても、メーカさんの新たな負担にはなりません。

インピーダンス

それぞれの最適解へ

製品の機能拡大はユーザにとってはうれしいことです

<大塚>逡巡が無かったわけではありません。ある意味、燃料電池インピーダンスシステム(KFM2150)は社内競合しますし、PLZ-5Wに少し手を入れると言ってもファームウェアレベルまで踏み込んだ変更が必要でした。が、競合という面ではKFM2150は研究・開発向け、本機能は生産やメインテナンスなどの現場向けとして棲み分けが可能であって、現行ソリューションでカバーできなかった部分を補うものです。もうひとつのファームウェアに手を入れることは、社内の技術的な問題ですので私が頑張ればいい話でした。

実際のところ当面は工場オプションの形で供給することになります。いずれにしてもアプリケーションソフトとセットでご提供しますので、お客様は気にかけることはありません。具体的に言うと、お客様はアプリ上で測定する周波数点を指定するだけでインピーダンス対周波数の特性グラフが得られます。

<加々見>測定する値がミリΩオーダと低いこともあって、バッテリの端子部分や電流検出部分などの影響が結果を左右します。特にスタックされた大型電池などでは真の測定端と実際の測定端を太く短く結ぶのは現実として不可能なこともあります。そうしたことで困っておられるお客様もおられるので、検出の配線をスキャンして切り替えるマルチプレクサ/スイッチャなどの対応も考えています。

<大塚>お客様の中には今以上に高い周波数での測定等をご要望される方もいらっしゃいます。こうしたニーズを汲み取って、バッテリのインピーダンス測定に関する問題解決をトータルに考え、各種のソリューションをご提案していければと思っています。

独自のシステム構成により
テストニーズの進化と変様に柔軟対応

バッテリの進化に迫られた対応

充電と放電を繰り返す二次電池のテストですね

<大塚>当社が二次電池の充放電テストを手掛けた当初、対象は携帯電話用の小型バッテリでした。その後、ノートパソコンやビデオカメラなど、それまでより電池容量の大きなアプリケーションも出てきましたが、それぞれのテスト要求にはPFX20XXシリーズでお応えできました。このシリーズはプラグインユニット方式で一筐体にまとまっており、機能や対応パワーの柔軟性が特長ですが、想定した最大パワーは200W程度です。

<宮野>ところが近年になって、それを越えるパワーを持つ電池アプリケーションが急拡大します。例えば電動アシスト自転車、さらにクルマなどのハイパワーの電池アプリケーションです。数百A超の電池テストができないか、というお話しを複数頂くようになってきて我々も対応を迫られました。

システム構成の妙

充放電パワーの自由度が大きいですね

<大塚>同じスタイルで、もっとハイパワーに対応するシステムを考えなければならなかったわけなんですが、当時私は「それはちょっとどうかな?」みたいに思ったんです。

例えば新たに500Aクラスのシリーズを開発したとしますよね。でも、それまでの電池の発展状況から考えると、たぶん新シリーズができた途端にもっと大きな電流の要求が出てくるんじゃないか、それではニーズとのイタチごっこになってしまうぞって。

で、充放電のパワーに対して将来的にももっと柔軟性のあるシステムの様式というか構成を考えようということになりまして、論議の末に出てきたのが標準品の直流電源と電子負荷、それに充放電制御と電圧・電流の測定機能を持ったコントローラとを組合わせたシステム構成でした。

<宮野>具体的には直流電源のPWRまたはPAT-Tシリーズと電子負荷PLZ-4Wシリーズのブースタを使います。各シリーズ共にパワーレンジ面でのラインアップは充実していますし、並列運転等による増力も可能なので充放電テストシステムとしても幅広く柔軟に対応できるからです。そしてこの方式を実現するために充放電システムコントローラPFX25XXシリーズが開発されました。当初コントローラは300Wクラス対応でしたがその後1.2kWで複数台使用も可能なものを作りました。おかげでパワーの守備範囲もぐっと拡がりまして、レドックスフローの電力貯蔵テストで1000Aシステムを納入などのほか、1000A超級のシステムにも対応できる様になりました。

<大塚>もうひとつ、近年のアプリケーションでの電池の使われ方を観ますと、充電と放電の比率がけっこう違う、ゆっくり充電して一気に放電というものが多いんですね。ラップトップパソコンや電動アシスト自転車、それにアイドリングストップのクルマや太陽光蓄電などもそうです。その場合、テスト装置も例えば充電は数百ワットで良いけども放電はキロ単位のものが要ります。本システムのように充電用電源と放電用電子負荷を自由に組み合わせできれば最適化が図れますし、初めは小さめのシステムを導入してその後に電源や電子負荷を適宜増設していくこともできるので投資に無駄がありません。
そう言う意味ではコントローラ方式としたのは正解だったと思っています。

シームレス充放電と高ピーク耐量

この方式を実現できた技術ポイントは

<宮野>第一のポイントはシームレスな充放電です。充電と放電がパパッと切り替わって使われる電池では、切り替わりの応答性を含めて試験します。そのため、装置側には充放電の切り換えをシームレスにかつ素早いレスポンスが求められるわけなのですが、本システムのように電源と電子負荷の組み合わせにした場合は、両者をスムースに切り換えるための何らかの工夫が必要になります。我々はコントローラに切り替わり時のアイドリングを制御する独自の機能を盛り込むことでこれを解決しました。

<大塚>もうひとつのポイントは電子負荷に高ピーク耐量と瞬発力を持たせたことです。
例えばアイドリングストップ車用の鉛蓄電池では頻繁な充放電に対する評価試験規格があります(SBA0101等)。規格では、充電は最大で100Aであるのに対して放電は約1秒と時間は短いものの充電の3倍となる300Aが要求されます。これに対して私共の現行単体標準品のマックスは200Aなものですから、普通に考えれば2ユニットの並列運転ということになります。

<宮野>ですが、実際には連続定格を越えるワッテージを瞬時的に許容し得る瞬発力は潜在的に持っています。なんかもったいないですよね。そこで電子負荷の保護特性などもコントローラから制御することにしてデューティの大きな充放電に対応しました。さじ加減が難しい部分もありましたが、この規格用のシステムでは200Aの電子負荷1ユニットで300A放電の試験ができます。

<大塚>規格ではこれを3600回繰り返した後に、温度を変えてまた測ったりします。取得データ量も膨大になるのでやり直しは許されません。装置にも高い信頼性が求められるわけで、システム化に当たり我々が気を遣った部分でもあります。

セットアップ例

対応にも俊敏さ

更なる展開への意気込みを聞かせてください

<大塚>テストニーズのトレンドという意味では、セットメーカさんなど電池を使う側の方からお声がけをいただく機会が増えました。具体的には、電池の劣化診断や良否判定法を模索されているお客様が多くなっています。理由として考えられるのはセットの寿命保証や電池のリサイクルとかリユースニーズです。今後はリユースのためのバッテリ選別、廃棄時の電気抜き(完全放電)といったニーズも出てくるでしょう。

更なる高電圧大電流化対応システムの開発はひとつの方向ですが、電子負荷にインピーダンス測定機能が加わったりしていますので、充放電テストとインピーダンス測定を同時に行うシステムですとかいろいろ考えています。

<宮野>世の中の動きには俊敏に対応したい。次世代電池の研究開発も盛んです。先端的な研究などでは電池容量はごく小さいものの、新たな知見も多く我々としては将来的な計測ニーズや対応技術の源でもあり、重点を置いているお客様でもあります。

ちなみに、電池メーカさんなどの場合、お客様の多くは電気化学のプロの方々です。我々とは違う切り口で電池を見ておられ、私共には電気屋としての知見や意見を求められたりします。対してセットメーカさんなどの場合は回路や品質管理のお客様に電池の上手い使い方や新技術の情報を聞かれたりします。それぞれの橋渡し役と言いますかコンサル的なお話しをさせていただくことが多くなりましたが、私自身が勉強になる部分も非常に大きいですし、アイデアの源にもなっています。

精度と応答性に優れた交流の大電流ソースを実現。
電力用のセンサ製造やブレーカ検査のタクトタイム問題を解消。

交流の大電流センサ較正

定電流出力の交流電源は珍しいですね

ご承知のとおり、一般に言う交流安定化電源というのは負荷の大小に係わらず出力電圧が一定となる定電圧源です。これに対して本システムは同じ交流出力ですが、負荷に係わらず出力の電流量が一定の(設定した)値となるように動作、しかも500Aを越える大電流、パワー的には10kW超も出力可能な交流のハイパワー定電流源です。

システムのターゲットは電力関連で、ブレーカやカレントトランスなど電流感応機器の動作検証や感度較正ソリューションです。設定した大きさの電流を素早く正確に出力しますので、交流大電流の標準器や較正器としてお使い頂くことを想定しています。

電力機器の大電流・高精度化

システムが必要とされるようになった背景は

背景として言えるもののひとつは、ビルや工場などにおけるエネルギー利用のスマート化です。一般家庭以外でもビルや工場など各所でエネルギーのスマート化というか、電力管理が高度化していますよね。それを受けて電流センサやブレーカの需要が拡大しメーカさんは生産を急いでいる、というのが具体的背景です。

もう少し詳しくお話ししますと、最近の電力需要設備ではスマート化を進めるうえで測定精度アップと信頼性強化が求められている。ことに近年では数百アンペアクラスの大電流の部分まで要求が及んできているようなんですね。

この場合、カギとなるのは電流センサやブレーカなど電流検出アイテムの精度ですから、ブレーカや電流センサメーカさんは大電流で高精度な製品の大量供給を迫られている。それで、生産に際して動作試験や感度較正のための設備が必要なわけですが、お話ししたような事情で、新たなトレンドに対応したキャリブレータというか交流の定電流源が必要になってきたわけです。

ところが、市場には交流の大電流を精度良く出せる電流源が無いんです。小電流なら無くも無いのですが、数百アンペアとかは出せない。反対に大電流を出せても設定した電流を正確に出せない。仕方が無いので別途較正された電流計でモニタしながら電源を調整しなければならなかったりで生産効率が上がらない。ということでお客様は困っておられました。実際、ブレーカメーカさんからご相談をいただいたのが本システム開発のきっかけなんです。

ポンポン変えてもスパッと応答

電流検出機器特有の要求事項はありましたか

実はお客様とお話をさせて頂いた中で見えてきた要求事項がもうひとつありました。それは応答性というか電流を設定してから出力が落ち着くまでのセトリング(settling)ですね、整定時間の短縮です。

実際の校正作業では幾つもの電流値を段階的に与えていって、直線性などを含めたトータルな電流検出特性を測定します。したがって効率の良い校正作業には、電流値をポンポンと変えていったときに電流が短時間でスパッと設定値に落ち着くことが不可欠なんです。これが悪いと1個当たりの試験時間、作業効率というか生産のタクトタイムに大きく響いてしまうからです。お客様からすると既存の電流源では応答性・整定性が悪く、切り換えの都度、出力が落ち着くまで暫く待たなければならないという問題も抱えていたんです。

電流パターンイメージ
電流パターンイメージ

定電圧を定電流に変える魔法

どのような仕組みで定電流を実現しているのですか

本システムは、既存の定電圧型交流電源にトランスを付加して出力範囲を大電流定電圧のエリアに変換したうえで、トランスの出力電流を検出して元の電源にフィードバック(負帰還)することで定電流を実現しています。
基本的にはアンプ方式ですのでアンプと信号源で全体のパワーや精度が決まります。そこで、ベースとなる交流電源には当社の主力交流電源PCR-LEを採用し、一部を改造するかたちで開発を進めました。

開発は10kWで800A、2レンジのシステムから着手しましたが、ベースがPCR-LEですので、容量はいろいろ選べます。そのままでも600A、30V、18kVAまでいけますし、もっと大きな電流も可能です。

PCR-LEシリーズ

最適化への道程

機能実現のために苦労した点は

本システムは当社としてもこれまで手掛けたことのない方式でしたので、例えば応答性に優れ安定したフィードバックを実現するための回路設計には時間と労力を要しました。トランスの特性や電流センサの感度など不確定性を持つ複数のパラメータが系の安定度に大きく影響するんです。出力線の引き回し長などお客様側・負荷側の条件による違いも吸収できなければいけませんし難しい部分でした。性能を確認するために長い時間試作機と付きっきり、条件を変えてまた検証を繰り返すといった苦労もありましたが、最終的には様々な条件に対して最適な定数を決定する技術をマスターできました。

システムイメージ
システムイメージ

精度と使いやすさへの配慮

技術を形にするうえでの苦労はありましたか

レンジ内でのダイナミックレンジの確保なんかも意外と難問でした。先にもお話ししたように、お客様は電流の大きさを様々に切り替えて使うことが予想されます。これに対しては電流レンジを複数にして対処すればいいのかもしれませんが、お客様は電流を段階的に与えて測定することが多いでしょうから、ひとつのレンジ内においてできるだけ幅広く精度を確保することが望まれます。ですが、レンジの下の方では相対的にノイズの影響等を大きく受けますから、較正器精度のピュアな出力を得るのは意外と難しいんです。

あと、細かい話になりますが、電流の設定をどのように行うかということも悩んだ部分でした。本システムはPCR-LEをベースにしましたので、PCRの出力電圧設定が出力の電流値に反映されます。そこで、設定電圧を設定電流に読み替える変換係数をどうするか、逆に言えばどうすれば使い易さと精度を同時に満たせるかといった部分でPCR側の電圧レンジや電流センサの感度や確度も含めて試行錯誤しました。

新技術の開拓

開発を終えて今後をどう見通していますか

実は、原理としてはトランスを外付けしたCV(定電圧)電源を使ってCC(定電流)電源を作るというところまでなら誰にも考えつくことなんです。ですが、実際に行われる例は少なく、当社にとっても未開拓の技術でした。キクスイとしては定電流の交流電源という製品ジャンルがひとつ増え、お客様に対しても新しい風を吹き込めたことになり、少しは貢献できたのではないかと思っています。開発中はどうしても特性が出ず煮詰まってしまったこともありました。そうしたときは一から出直すつもりで問題をチェックしてひとつひとつ潰して解決の糸口を掴んでゆきました。

今後の見通しとしては、もっと大電流の要求も出てくると思います。既に2000Aを超えるお話しもいただいたりしています。

ソーラシステムの高電圧化や
次世代パワーデバイスGaN,SiCの車載応用に合わせ、
モジュール模擬用電源の最高電圧を拡張。
1000V/1500Vを達成し標準品化にも目途。

ソーラシステムの技術トレンド

高電圧電源が必要とされるようになった背景は

高電圧の直流電源はキクスイがソーラシステムなどのエネルギー・ソリューションに注力してきた中で見えてきたニーズです。
太陽光を中心とする自家発電や蓄電は当社ソリューションビジネスのひとつの柱です。ソーラシステムやパワコンそれらに使われる部品類の開発や製造向けに、キクスイでは各種のテストシステムさらにシステムのキーとなる電源や電子負荷などの機器類を供給してきました。その中にあって、直流電源はソーラパネルやモジュールを模擬するアイテムとして欠かせません。

一方で、ソーラシステムでは発電量と共にシステムの低損失化は永遠の課題です。で、様々な角度から低損失化が図られているわけですが、近年の技術トレンドとしてDCラインの高電圧化が挙げられます。モジュール自体も以前よりは高い電圧のものが増えましたし、蓄電する場合の電池スタック電圧なんかも上がってきています。結果、パワーコンディショナへのバス電圧も上昇し1000Vから1200Vクラスへと移行してきています。

そのため、パワーコンディショナやそれに使用するコンデンサなど関連機器や部品メーカさんなどでは従来よりも高い電圧でオフラインでの動作テストをする機会が生じ、パネルを模擬するための直流電源に1000V以上を出力可能なものが必要になってきたという事情があります。

パワーコンディショナー簡易評価システムに

私共としてはトレンドに沿った対応を求められるわけですが、パネル電圧が1000Vを超えることは当初予想しておらず、対応する直流電源はラインナップしていませんでした。

翻って世の中を見渡してみると、1000V超を出力できる高電圧電源はあることはあります。ただ、パワーや応答性などの面でソーラパネルを模擬できるグレードのものは見当たらないんですよね。それで、お客様も困っておられた。弊社ソリューション担当にご相談をいただく機会も増え、私にお鉢が回ってきたというのが正直なところです。

ソリューションの幅を拡げる

既存の標準製品とはどのような関係になるのですか

お話ししたように、高電圧大電力直流電源開発の背景というか狙いとしては、ソーラシステムテストソリューション対応能力拡大の一環なんですが、狭い意味では直流電源の単体標準製品、具体的にはPAT-Tシリーズの新機種追加によるカバーレンジの拡張と捉えていただいて結構です。

直流電源 は私共キクスイの主力商品でもあり、現在では14におよぶシリーズを揃えています。そうした中にあってPAT-Tシリーズは高効率大容量をコンセプトにした電源シリーズで、ベンチトップで4kWと8kW、これらを組み合わせたスマートラックタイプでは、16kWから40kWまで揃えています。出力電圧は20Vから850Vまでをカバーしており、太陽光発電などのエネルギー関連や自動車の電装品関連などのテストシステムに用いられてきた実績のあるシリーズです。実際のところ、これまで提供してきたパワコン評価などのソリューションシステムは、基本的に交流や直流の電源、それに電子負荷などの標準品の組み合わせを基本として構成されており、直流電源にはPAT-Tシリーズを採用しています。

直流電源セレクトチャート

今回開発した電源は1000V/1500Vというソーラパネルの先進的お客様ニーズにお応えするべく、システムソリューションの構成機器のひとつとして開発したカスタムメイド品です。ですが、開発に際してはPAT-Tシリーズの電圧のカバーレンジを高電圧側に拡張するモデルとしてシリーズに加えることも念頭に置かれました。また、ソーラパネル以外でも、最近ではEVやHEVの普及により、充電器、各種モータやDC-DCコンバータ等電力変換に使用されるパワーデバイス(GaN,SiC)の高電圧・大電流対応ニーズにもお応えできると思います。

したがって外形などを含め出力電圧を除く諸々の仕様はPAT-Tシリーズに合わせてあります。そうすることで、既得のソリューション技術やノウハウをそのまま活かすことができ、お客様の新たな要求にも素早くお応えできるからです。
標準品としてシリーズに加える目途もたっていますので、詳しいスペックなども近いうちにお話しできると思います。

継承と挑戦

シリーズの持つ特長を活かす開発ですね

設計としての立場から申し上げれば、PAT-Tシリーズの資産を流用できたことは非常に大きいですね。現行のPAT-Tシリーズの最高電圧は850Vです。普通に考えれば既にかなりな高電圧なわけで、高圧に対しての吟味は成されていました。今回、その電圧を約二倍まで引き上げたわけですが、850Vモデルがあったおかげで回路的には比較的スムースに開発が進みました。これがもし1からの開発だったらそうはいかなかったと思います。

ソーラパネルの模擬ではオーバシュートやリンギングの無いキレイな応答が求められるんですが、PAT-Tシリーズは応答性に優れ、設定急変などの際も素早くキレイに立ち上がってくれるのも助かった点です。
とはいえ、検討課題は幾つもありました。

例えば安全性や規格への適合性などは気を揉んだ部分です。具体的に言うと実装の空間距離や沿面距離など、絶縁や耐圧に関する部分が1000V辺りで大きく変わります。部品や配線間の距離を大きくとらなければならなかったり基盤の各所に切り欠きを設けなければならなかったりするんです。

いっぽうで、筐体サイズパネル配置なんかはPAT-Tとして決まっていたわけで、限られたスペースの中で耐圧をどう確保するかはけっこうな問題でした。実際には機構に係わる部分でもあるので、機構設計や品質保証セクションの力も借りてまとめ上げました。

PAT-Tシリーズモデル分布図

高電圧技術と設計資産

耐圧試験器で高電圧のノウハウもお持ちです

ちょっと大げさかもしれませんが、1000V超の直流電源というのは新たな挑戦というかひとつの壁でした。ですが、高電圧ということではキクスイは耐圧試験器等を従来から手掛けており、確固とした技術を持ち合わせています。実際手掛けてみなければ分からないような、安全にお使い頂くためのノウハウなんかも多くの蓄積があります。そうした先輩達の技術を土台にして開発できたこともラッキーだったと思っています。

太陽光発電のテストシステムソリューション拡充を意図して始めた開発ですが、標準品即ち汎用的に多用途で使われる電源として仕上げることができました。
私としては1kVというひとつの壁を越えることで、太陽光パネル以外の新たなアプリケーションなどビジネスの拡がりを期待しています。

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