マンガでわかる 耐電圧試験器・電子負荷・交流電源

第三話 耐電圧試験器(その3) 安全性の指標

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第三話 あとがき

第1話のコラムで触れた通り、耐電圧試験器は用途が非常に限定的な機器です。読者の方で実際に使ったことがある、または使うところを見たことがあるという人は、実は少ないでしょう。かくいう私も、かつてその一人でした。今でこそ社内研修は実機実習等も多く充実していますが、その昔の当社は、いわゆる座学(お勉強)中心でした。形通りの研修をしただけの新人営業マンに、実機操作はおろか見たこともない計測器を「カタログだけで売ってこい!」と。いま思い返せば、よくそれで仕事できていたなと感じるのですが、その理由のひとつとして、当時は顧客のほうが計測器のことをよく知っていたという点はあります。アホな営業マン(私ですね)の下手で足らない製品説明でも、うまく自己補完しながら相手をしてくれていたのでしょう。時には現場に招き入れて、実機を操作しながら商談したりと(「はじめて動くの見たわ・・・」と心の中でつぶやく私)、顧客は単にお客さまではなく、当時の私にとっては「師匠」、「先輩」のような存在だったと思います。

上地課長は、そんな記憶の中の「師匠」、「先輩」のような顧客と、第2話コラムで触れた怖い品証部長を掛け合わせたキャラクターです。昭和生まれの頑固オヤジなので、時々話が古い印象もありますが(「そうは問屋が卸さない」・・・意味伝わりますかね?)、安全試験の鬼として現役活躍している設定にしました。それは取りも直さず、電気製品において技術革新やデジタル化がどんなに進んでも、電気の危険性は変わることなく存在し、その知見(安全性確保の知識や経験)は色褪せないということです。プログラミングなどデジタルの知識は陳腐化が早く、知識不足で業務上困ることはあっても、一瞬のミスで命を失うことにつながる危険性は少ないでしょう。それに対して、安全性に関する回路技術は、知らないことが命の危険に直結します。宇都木はハード設計の経験からその切迫性を知ったので、上地課長にみなみの指導をお願いしました。

第3話は、専門的な話を簡潔に噛み砕いて表現するよう心掛けましたが、それでもわかりにくかったかもしれません。特に専門用語を何かに置き換えるのが難しく、また概念(試験器のしくみや理論)説明中心では、それこそ「表層的」になってしまいそうです。なので、実際の試験シーンを中心に描くことで、試験を擬似体験できる(=記憶に残る)ようにしてみました。試験シーンでは具体的な手順を描いていますが、実は説明を割愛した操作もあって、マンガの通りやっただけでは試験実行はできません。耐電圧試験器は他の計測器と違い、取説を読まずに「なんとなく操作」では動作しないように作られています。マンガの真似して、なんとなくイジったら出力して怪我をするような事故が起きたら・・・最悪です。当社のサポート窓口に寄せられる、耐電圧試験器についての質問として「購入したばかりなのに動かない。新品不良ではないか?」というものが少なくありません。しかし、話をよく伺うと「取説を読んでいない」というケースが多いのも事実です。取説を読めば、安全機構の説明があり、機器使用にあたってはその解除が必要であることがわかります。また、問い合わせの多い質問の代表格が、合否判定を決める「上限電流設定値」です。その答えはマンガの中にありますが、この問いは、試験の本質の理解不足から起きるものです。理解があれば、試験器メーカーでは回答できない質問であることに気づいていただけるはずですが・・・現実はなかなか厳しい。

最後にひとつトピックを。このマンガの作画資料のために試験シーンをあらためて実機撮影したのですが、実は「安全柵」を使いませんでした。しかし撮影中、私は高圧出力中の耐電圧試験器の傍に置いた機材を取ろうと、うっかり近付こうとして、こっぴどく注意されることが起きました。「安全柵」は個人的に大袈裟かもと思っていた機材ですが、人は「わかってるつもり」でも咄嗟に動いてしまうもので、それを防ぐために「安全柵」は必要だと、あらためて認識しました。絶縁マットや手袋とともに「安全柵」も大事ですよ。

 

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