マンガでわかる 耐電圧試験器・電子負荷・交流電源

第八話 交流電源(その2) 静かなる脅威

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第八話 あとがき

第8話は前話に続いて、日常的に使われる商用電源(コンセント)の異常状態に焦点を当てます。商用電源を普段意識することはあまりありませんが、海外旅行時に初めてその重要性を感じることが多いでしょう。ご存知のように国ごとに商用電源電圧が異なるため、電気製品を持参する際は、ワールドワイド仕様の製品を使うか、変圧器を使う必要があります。しかしそうであってもトラブルが少なくありません。漫画の中ではドライヤーが過電圧で故障した様子を描いていますが、電源トラブルとしてはこうした異常電圧や停電に加え、近年は「高調波障害」によるトラブルも増えています。高調波障害は耳慣れない用語かもしれませんが、実は社会的に大きな課題となっています。この障害は、電源ラインに異常な電流が流れることによって引き起こされますが、そのメカニズムの理解は専門知識が必要であることに加え、可視化も難しいため、多くの人にはあまり知られていません。

高調波障害の具体例として、名古屋市立科学館での変電設備爆発事故があります。また、サイクロン型掃除機(ブラシレスDCモーター)に搭載されたインバータのスイッチングノイズが、配電設備との間で共振を起こすことで発生した過電圧によって隣接家屋の機器が損傷したケースなども報告されています。高調波障害の主たる原因は、入力電圧とは異なる電流波形を持つスイッチング電源やインバーターなど、「非線形負荷」と呼ばれる製品の普及です。普及台数が少ないうちは、高調波電流による障害件数も少なく無視できるレベルでしたが、昨今は非線形負荷型製品の普及に伴い、高調波電流による障害件数が増加しています。これは自動車の排ガス公害と似ています。自動車台数の増加とともに大気への影響(汚染)が無視できなくなったように、非線形負荷型製品の普及がすなわち高調波電流による障害の増加ということです。一方、このような事案に対応するため、高調波抑制対策技術指針や高調波電流の発生限度値を定めた規格が既に制定されています。これにより、製品開発においては障害の原因とならない設計基準が示され、受電設備においては障害耐性を強化するための対策が示されています。

こうした対策はEMC(Electromagnetic Compatibility:電磁環境両立性)規制と呼ばれ、複数の電子機器が同じ電磁環境下で互いにノイズ障害を与えたり受けたりすることなく、正常に動作するための規制です。詳しくは次回9話で説明します。日本においては、このEMC規制が奏功しつつあり、高調波障害の低減効果が現れていますが、(電気製品輸出など)海外においても、異常電圧や停電、高調波障害を十分考慮したEMC対策は、当面必要不可欠です(法的義務にもなっている)。交流電源装置は、商用電源の電圧変動、周波数変動、高調波電流などの問題を擬似的に再現・検証し、EMC対策を講じるための不可欠な機器です。交流電源装置は、商用電源という社会インフラを模擬し、その異常状態の再現に有効なツールであり、EMC対策や電源品質改善など、安心して電力を利用できる環境を整備する様々な仕事への貢献がその役割といえます。

最後に、物語終盤にふれた「マイ電柱」について。オーディオファン(マニア)でない人にとっては、いったい何のことやらですが、音質追求の努力を惜しまない方々なら、電源環境整備のひとつとして検討したことが一度はあろうものです。文字通り、電柱を自宅専用化することで電源品位を改善しようとするものです。たしかにマイ電柱によって、(柱上トランスを共用する)近隣家屋からの高調波電流の影響は排除できますが、柱上トランスの前段(送電網)の高調波電流歪みについての効果は疑わしいです。実はその昔、オーディオアンプの電源に当社の交流電源(PCR-Lシリーズ)を使い、それによる音質改善を確認する実験をしたことがありました。結果は良好で、立ち会った音響専門家もその効果を認めました。そのため、個人的にはマイ電柱よりも交流電源の導入が有効だと考えます。しかし交流電源導入の場合、機器本体の費用に加えて電力容量によっては配電盤工事も必要で、場合によってはマイ電柱よりも高額になるようです・・・。余談ですが、電源に交流電源を使う手法はギターアンプにおいても改善効果があるようで、機材として当社の交流電源をご愛用のギタリスト(海外の超有名バンド!)もいらっしゃるようです・・・ありがたいですね。

 

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