マンガでわかる 耐電圧試験器・電子負荷・交流電源

第七話 交流電源(その1) コンセントの電気は汚れている?

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第七話 あとがき

後編7〜10話のテーマは、交流安定化電源(以下、交流電源と略します)です。交流電源は電源装置の一種ではありますが、直流安定化電源と比べると、その使用機会は圧倒的に少ない装置ではないかと思います。前作でも触れましたが、電気製品の内部回路のほとんどは直流で動くように設計されています。そしてその直流は、電源回路(製品内部または外部アダプター)が、コンセントの交流を変換して作り出しています。なので多くのエンジニアにとって、交流は直接扱う(回路に直結する)ものではなく、電気製品を動かすインフラ(基盤設備)でしかないことが多いのです。とりわけ日本では、商用電源(交流)が24時間365日安定的に供給されており、空気や水の如く使えることが「当たり前」になっていますので、(交流電源という存在や必要性が)意識されることが稀であるのはもっともなことでしょう。

交流は、周期的に向きと大きさが変化する電流ですが、やはり身近なものは一般家庭のコンセントです。電気は発電所で生まれたときは、数千V〜2万Vですが、これを併設の変電所で27.5万V〜50万Vといった超高電圧に変電(変換)されて送電されます。送電された超高電圧の電力は、各地で変電を繰り返し徐々に電圧を下げて需要家(皆さんの家庭や職場)へ送られています。交流電源は、(需要家への配電と同様の)100Vや200Vなどの交流を出力できる電源装置です。さらに世界各国において、特に日本では東西で周波数が異なりますが、交流電源は出力周波数の変更(50Hz/60Hz)も可能です。しかし、ここで疑問が湧きます。コンセントがあれば手軽に交流を利用できるのに、なぜわざわざ交流電源というものがあるのでしょうか?

その理由は大きく3つあります。(1)電圧や周波数の可変、(2)供給の安定化、(3)電源環境シミュレーションです。(1)は、世界は国や地域によって電圧や周波数が異なっています。電気製品を世界どこでも使えるように設計し(ワールドワイド対応電源)、それを検証する際、各国にいちいち持ち込んでの試験は非効率なので、試験環境(電圧や周波数)が手元の装置で再現できると便利だということです。また三相交流という特殊な送電方式を構築することもできます。(2)は、コンセントの交流の供給品質を補うということです。先ほど「日本では安定的に供給されている」と述べましたが、実際は様々な要因による、ノイズや電圧・周波数の変動といった不安定性があり、それは完全に排除できるものではありません。そこで交流電源を介することで、その不安定性を最小化することができます。

(3)は、交流電源の応用としては比較的新しい概念です。近年はデジタル制御技術やインバーター技術を利用した電気製品が普及したこともあり、それらの入力電流波形に起因する商用電源への影響(歪みやノイズ)が、社会的に無視できないレベルになっています。その放置は、送電設備の破損や、最悪大規模な停電の原因になりうるものであり、電気製品のメーカーにはその対策(設計)が求められています。そういった背景から、商用電源の異常状態(歪みやノイズ)を再現できる検証用装置として、交流電源を活用する例が増えているのです。これは(2)の供給品質とも関連する事項ですが、コンセントの電源は常にきれいな100Vの交流波形(正弦波)が出ているわけではありません。私たちの想像以上に過酷な実情があり、実環境を模した電気製品の動作検証(シミュレーション)は、必須になりつつあるといえるでしょう。

7話では、かの有名な電子工作系イベントをモデルにした展示会を舞台設定にし、みなみが商用電源の課題(異常状態)に気づくきっかけとしてみました。私自身、出展者として参加した経験から、どこかでこのイベントを描ければと思っていたので、今回それが実現でき、まさに感無量です。最後に、展示会シーンの作画のための取材にご協力いただけました、タカハ機工株式会社様、女子美術大学・ロボット研究プロジェクト様、小山高専加速器製作チーム・アテーナ様、ねくある・河島様、tofunology・新井様、皆様に感謝申し上げます。おかげさまでイベントシーンをよりリアルに描くことができたかと思います。本当にありがとうございました。

 

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